サイエンス

「失業」は夫婦やパートナー間の出産を阻害するがその影響は男女で異なるとの研究結果


失業などによって雇用や収入が不安定になると、生活費の支払いや借金の返済、そして子育てや家の購入といった長期的な計画に影響が及びます。2005年~2017年のノルウェーにおける失業と出生率の関係を調べた研究では、失業は夫婦や同居するパートナーの出産に影響するものの、その影響は失業したのが男性なのか女性なのかで異なることが明らかになりました。

Job loss and births. A couple-level study of Norwegian plant closures - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0049089X26000517

New study reveals how male and female job loss disrupts family planning differently
https://www.psypost.org/new-study-reveals-how-male-and-female-job-loss-disrupts-family-planning-differently/

業績不振によるリストラや工場の閉鎖などによって仕事を失うことは経済的打撃となるだけでなく、不安感や無力感を増加させ、人生をコントロールできるという自信の低下を招きます。失業期間がどれほど続くかわからないという不安は、住居・教育・結婚・子育てといった将来の計画を立てることを妨げ、特に大きなストレスになるとのこと。

特に仕事が「男性が家族を経済的に支えるべき」といった社会的な期待が結びついている場合、より深刻なダメージになり得ます。また、経済的・心理的に不安定な状態が続くとパートナー間の対立が激化し、子作りに向けた同意が得られなかったり、別居の可能性が高まったりすることも考えられます。


新たな論文で、ドイツのマックス・プランク人口統計研究所とノルウェー公衆衛生研究所の共同博士課程学生であるリシャブ・ティヤギ氏らの研究チームは、2005年~2017年のノルウェーにおける失業と出生率の関連性を調査しました。この期間には2008年のリーマン・ショックとそれに伴う世界金融危機が含まれています。

ノルウェーは石油収入が潤沢であり財政も健全で、失業による短期的な収入源を補塡(ほてん)する福祉制度も充実していたため、他の多くの国々と比べれば世界金融危機の影響は少なかったとのこと。しかし、それでもノルウェー企業の倒産やそれに伴う失業、経済成長の鈍化、将来の雇用や収入に対する不安の高まりなどが生じたそうです。


研究チームは、特定の年に就業して賃金を受け取っている人々を記録したノルウェーの雇用者登録簿と、婚姻状況や出産記録などが含まれる人口登録簿を照合して分析しました。今回の研究では、ノルウェーに居住している15~50歳の同棲パートナーまたは夫婦に焦点を当てたとのこと。

分析の結果、一般に失業はパートナーや夫婦間の出産率の低下に関連しているものの、その影響は失業したのが男性なのか女性なのかで異なることがわかりました。具体的には、失業したのが女性の場合はパートナーや夫婦が第1子を授かる可能性が1.82パーセントポイント低下し、この影響は失業時の世帯収入を考慮してもなお維持されました。

一方で、失業したのが男性だった場合は第1子を授かる可能性は低下しませんでしたが、パートナーや夫婦が第2子を出産する可能性が2.01パーセントポイント低下しました。一方、失業したのが女性だった場合、第2子を出産する可能性に影響はありませんでした。


研究チームは今回の結果について、「失業に対する出生率の反応は、短期的な経済的制約だけで説明できるものではありません。これはむしろ、雇用がいかに人生計画を形作り、安定性の認識を左右し、カップルが親になる準備態勢を左右するのかを反映しています」と述べました。

なお、ノルウェーは福祉制度が手厚いため失業による経済的ダメージは比較的小さく、そもそも金融危機による影響も小さかった点に注意が必要です。すでに経済状況が悪く、福祉制度が不十分な国々においては、不景気や失業による出生率への影響がより大きい可能性があります。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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