サイエンス

不眠症に対する科学者の見方は2000年代初頭からどう変わったのか?


なかなか眠れない状態が続く「不眠症」は、かつて他の病気や精神的な問題の結果として扱われることが多く、不眠症そのものは治療対象にされにくい時期がありました。ラフバラー大学で心理学を教えるユリアナ・ハルテスク氏が、不眠症をめぐる科学者の見方が2000年代初頭からどのように変わったのかを解説しています。

How scientists changed their view of insomnia
https://theconversation.com/how-scientists-changed-their-view-of-insomnia-279585


ハルテスク氏は、不眠症は古くから人間を悩ませてきた症状であり、慢性的な睡眠不足や不眠症状への科学的な理解は2000年代初頭に大きく進んだと説明しています。

ハルテスク氏によると、不眠症をめぐる科学者の見方で大きく変わったのは「不眠症が他の心身の不調と一緒に起きやすいこと」が重視されるようになったという点です。不眠症状がある人の多くは、糖尿病や高血圧、慢性疼痛、甲状腺疾患、胃腸の問題、不安、うつ病など他の身体や心の問題も抱えています。


他の病気や障害と一緒に起きる不眠症はかつて「二次性不眠症」と呼ばれていました。これは不眠症を「別の病気によって起きた症状」とみなす呼び方です。2000年代初頭ごろまで、臨床医は二次性不眠症そのものを治療しようとしないことが多かったとのことです。

しかし2000年代初頭になると、研究結果や臨床現場の証拠をもとに不眠症の扱いは見直されるようになりました。不眠症は別の病気よりも先に起きることがあり、元の病気が改善した後も不眠症だけが長く残ることがあります。そのため睡眠医学の分野では、「不眠症だけで起きるもの」と「別の病気に伴うもの」を分けて考えるのではなく、不眠症を独立した障害として扱い、不眠症そのものにも治療が必要だと考えられるようになりました。ハルテスク氏は、これが大きな前進だったと説明しています。

さらに、睡眠の問題に対処すると、一緒に起きている症状や病気の状態が改善するという可能性も示されています。慢性疼痛や慢性心不全、うつ病、精神病、アルコール依存症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などは、睡眠の問題に対処することで改善する可能性があるとのことです。


不眠症は多くの人に起こりうるものですが、特に影響を受けやすい人もいます。ハルテスク氏によると、女性や高齢者、社会経済的に不利な立場にある人は体の変化や心理的な負担、生活環境などが重なって睡眠の乱れが長引きがちで、不眠症の影響を受けやすいとのこと。たとえば女性の場合、急激なホルモン変動や妊娠・出産、授乳、更年期などが睡眠に影響することがあり、さらに家庭内暴力や介護の負担、うつ病や不安の多さなども睡眠障害を長引かせる要因になりうるそうです。

ハルテスク氏によると不眠症にはまだ分かっていないこともあり、たとえば「寝つきにくい」という症状は「夜中に目が覚める」「朝早く目が覚める」といった症状とは別に、うつ病リスクの上昇と関連する証拠があるとのこと。不眠症の時に脳の活動や心拍数、ストレスホルモンがどのように変化するのかについても研究が続いています。

ハルテスク氏は、不眠症を「別の病気によって起きる症状」として片づけるのではなく、不眠症そのものにも治療が必要だと見なされるようになったことは、睡眠医学の大きな前進だったと説明しています。その上で、この変化を実際の医療につなげるには不眠症に苦しむ人が適切な治療や支援を受けられるようにする必要があると述べています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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