サイエンス

データセンターの排熱で風下の住宅地が暑くなる実例を確認


データセンターはクラウドサービスやウェブサービスに加え、AIの利用拡大を支える重要なインフラですが、稼働に伴う排熱が周辺地域に与える影響も注目されています。アリゾナ州立大学の研究チームがフェニックス都市圏にある4つのデータセンター周辺で車載センサーを使って測定したところ、風下側の住宅地で風上側より気温が高くなる実例が確認されました。

Data Center Waste Heat as an Emerging Urban Thermal Hazard: First Field Measurements of Neighborhood-Scale Air Temperature Impacts | Journal of Engineering for Sustainable Buildings and Cities | ASME Digital Collection
https://asmedigitalcollection.asme.org/sustainablebuildings/article/7/2/024501/1233035/Data-Center-Waste-Heat-as-an-Emerging-Urban


Turning down the heat from data centers | ASU News
https://news.asu.edu/20260518-environment-and-sustainability-turning-down-heat-data-centers


自動車や工場、建物の冷暖房など、人間の活動によって環境中に放出される熱は「人工排熱」と呼ばれ、都市のヒートアイランド現象を強める要因になります。

アリゾナ州立大学で地理科学・都市計画を研究するデイビッド・J・セイラー氏らの研究チームは、データセンターも都市環境の中で急速に増えている集中的な人工排熱源だと位置づけています。データセンターの熱流束はピーク時の日射量の2~6倍に達することがありますが、近くの住宅地の気温に与える影響はこれまでの研究で直接測定されてこなかったとのこと。

そこで研究チームは、アメリカ・アリゾナ州のフェニックス都市圏にある4つのデータセンター周辺で、風上側と風下側の気温を車載センサーで測定しました。対象となったのはチャンドラー市にあるCyrusOneAlignedDigital Realtyのデータセンターと、メサ市にあるNTT PH1です。複数の車に高精度の温度センサーとGPSを取り付け、データセンター周辺の公道や近隣の住宅地を走行。温度センサーは地上1.6~2.2メートルの高さに設置され、2秒間隔で気温を記録しました。

CyrusOneのデータセンター周辺では2025年6月18日午後2時25分~2時45分に測定が行われました。この時は西南西から秒速2.1メートルの風が吹いており、データセンターから出た熱い空気はCyrusOneの敷地の東側や北東側にある住宅地へ流れていました。風上側の平均気温が42.7℃だったのに対しデータセンターの東側付近の風下側の住宅地では43.5℃に上がっており、この約0.8℃の差は風下側へ約500メートル続いていたとのことです。


さらにCyrusOneのデータセンター周辺では2025年8月8日の午前にも測定が行われました。この時は西北西から秒速1.5メートルの風が吹いており、風上側の平均気温が39.1℃だったのに対し南東側の風下住宅地では39.6℃で、気温差は0.5℃でした。一方、風下側の一部では周囲より涼しい地点もあり、研究チームが調べたところ、チュパロサ・パークの貯水池や灌水された運動場、樹木の近くだったとのことです。「この結果は緑地や水辺がデータセンターからの排熱の影響を和らげる手がかりになる」と研究チームは述べています。


Alignedのデータセンター周辺での測定でも風上側と風下側の気温差が確認されました。コンデンサーからの排気が出るデータセンター東側の平均気温は39.3℃、風上側である西側の平均気温は38.6℃で、その差は約0.7℃でした。


Digital Realtyのデータセンター周辺での測定では風上側の平均気温が24.2℃だったのに対して風下側では25.2℃となり、平均の気温差は1.0℃、最大差は約2℃に達しました。


NTT PH1では2025年10月25日午前10時30分~10時40分に測定が行われました。南南東から秒速1.5メートルの風が吹いており、住宅地がデータセンターの風下側に入っていたとのこと。データセンターの境界付近では場所によって25.5℃と25.0℃が記録され、北側の住宅地へ80~100メートル進むと24.8℃と24.6℃に下がりました。研究チームはこの結果について、「コンデンサーから出た熱い空気が風下で薄まり、上下方向に混ざっていく挙動と整合する」と説明しています。


4つのデータセンター全体の測定結果をまとめると、風下側の気温上昇は最大2.2℃でした。また、風下側の気温が、対応する風上側より平均して0.7~0.9℃高く、気温上昇はデータセンターの外周から100~500メートルの範囲で検出されたとのことです。研究チームは複数のデータセンターや複数の日付、異なる気象条件で、気温が高い領域と風向きが一貫して対応していた点を、今回の気温上昇がデータセンターの排熱によるものだと考える根拠として挙げています。

研究チームはこうした温度差が生じる背景として、フェニックス都市圏にあるデータセンターで空気による冷却が広く使われている点を挙げています。IT機器が消費した電力のほぼ全ては最終的に熱へ変わり、空冷コンデンサーからは周囲より8~14℃高い空気が秒速2~4メートルで吹き出します。夏のフェニックス都市圏では排気温度が50℃を超えることもあり、この熱い空気が風に乗って風下側へ移動していきます。

研究チームはデータセンターと住宅地の距離の近さにも注目しています。以下は住宅地に隣接するデータセンターの例で、今回測定対象となったNTT PH1やCyrusOneに加え、住宅地との近さを示す例としてAppleデータセンターやIron Mountainデータセンターも示されています。


排熱の規模はかなり大きく、NTT PH1は約4万世帯分に相当する熱を排出すると見積もられています。また、CyrusOneのチャンドラー市にあるデータセンター群は、18万世帯超に相当する熱を34ヘクタールの敷地から排出するとのこと。フェニックス都市圏では家庭の電力使用量の50%以上が冷房に使われているため、外気温が1~2℃上がるだけでも風下側の住宅で冷房需要が増える可能性があります。

今回の結果は4つのデータセンターと数回の測定に基づく初期観測であり、より広い時間帯や気象条件での測定が必要だと研究チームは述べています。研究論文の筆頭著者であるセイラー氏は、「データセンターは社会にとって本質的に重要な存在であり、今後さらに必要性が高まる」と述べ、その上でデータセンター事業者や政策担当者と協力し、住宅地に流れ込む排熱の影響を減らすための知見を作ることが重要だと説明しています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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