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「メタバース」という言葉を生み出しChatGPT出現の30年近く前にAI革命すら予見したSF作家ニール・スティーブンスンがAIについて語る

by Christopher Michel

小説「スノウ・クラッシュ」にてメタバースという言葉を生み出し、「ダイヤモンド・エイジ」では少女の学習スタイルに合わせて家庭教師を行うChatGPTのような存在を描いたSF作家のニール・スティーブンスン氏が、言語生成AIやメタバースが広く利用されるようになった時代に生きる心境を語りました。

Neal Stephenson's Most Stunning Prediction - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/technology/archive/2024/02/chatbots-ai-neal-stephenson-diamond-age/677364/

教育系ニュースメディア・The Atlanticのマッテオ・ウォン記者によると、スティーブンスン氏は近年のAIについては悲観的で、「チャットボットは万能ではなく、正確に見える文章を作成する統計エンジンにすぎない」という考えを抱いているそうです。そんなスティーブンスン氏にウォン氏がいくつかの質問をぶつけました。

◆ウォン:
「ダイヤモンド・エイジ」は、登場人物の女の子に合わせた教育が行われるという内容が盛り込まれていましたが、これは多くの企業が思い描くAIチャットボットやアシスタントのビジョンと一致しているようです。このアイデアはどのように創造したのですか?

◆スティーブンスン:
このアイデアは、私に子どもが生まれた時にさかのぼり、ベビーベッドにつり下げるおもちゃからインスピレーションを受けたと記憶しています。赤ちゃんは細かい形状まで理解できないからか、おもちゃはとても単純な形をしていて、時間の経過に伴い年齢に応じた別のセットをつり下げる形式になっていたのです。そこで私は考えました。このアイデアを他のあらゆる知的成長にも応用したらどうだろう、と。


◆ウォン:
現在、多くの企業が各ユーザーに適応するAIアシスタントを作りたいと考えています。現在の生成AIモデルの中に、ダイヤモンド・エイジのようなもの、あるいはいずれ似たようなものになると思うものはありますか?

◆スティーブンスン:
1年ほど前、私はビデオゲームのAIキャラクターを作るスタートアップと仕事をしたことがあります。やりがいがありましたし、幻覚のようで魅力的でした。AIに与えた情報からどんな新しいパターンが生まれるかをこの目で見ることができたのです。

ただ、私の考えでは、ほとんどのアプリケーションではバグを抱えていると思います。ChatGPTを使って法律文書を作成した弁護士の例を知っていますが、AIはもっともらしく見える過去の事例や判例をねつ造しただけでしたよね?このようなモデルを教育に活用する場合を考えると、これも同様になると思います。AIがやっているのは正しく見える文章を生成することであって、その文章が正しいかどうかを実際に判別できる根本的な脳は存在しないのです。

例えばピタゴラスの定理をAIが子どもに教えるという例を考えてみます。ピタゴラスの定理に関する説明はネット上にごまんとありますが、私たちが必要としているのはただピタゴラスの定理を教えるものではなく、子どもたち一人ひとりの学習スタイルを理解する存在であり、何千もの中からその子の学習方法に最も適したものを即座に導き出すことにあるのです。これはDALL-Eやその他の大規模言語モデルとは異なる種類のAIアプリケーションであると考えます。


◆ウォン:
以前、あなたはFinancial Times紙のインタビューで生成AIの成果物について「空虚で面白くない」と言いました。その理由と、あなたの評価があれから変わったのかどうかを教えてください。

◆スティーブンスン:
私があの発言をしたときに念頭に置いていたのは画像生成技術の現状だったのではないかと思います。大規模言語モデルには何千人もの「人間のアーティスト」の成果がクレジットなしで使われているということですね。少し大げさに言うと、こうした新技術の応用はアーティストの状況を悪いものにしているように思えます。音楽でも同じです。これらの生成システムは想像を絶する規模で機械化され、武器のように使われていると思えたのです。

もうひとつ、早い段階でAIに熱中した多くの人々が膨大な量のコンテンツを作り出し、それをインターネット上で気ままに公開していたことに驚いたというのもあります。もしあなたが苦労してキャンバスと絵の具を使いながら絵を描いたのだとしたら、結果が悪かろうが良かろうが、その絵はあなたがアーティストとして下したたくさんの微細な決断の成果物だと言えるでしょう。一方でプログラムの出力にはそれがありません。


◆ウォン:
ダイヤモンド・エイジのもう一つのテーマは、異なる社会経済的地位にある子どもたちがどのように教育を受けられるかというものでした。あなたの小説では、中流階級や労働者階級の少女たちが生成AIのような存在と交流する物語も描かれています。現在、多くの生成AIは無料で利用できますが、その技術は非常に高価です。生成AIへのアクセスはどうなると思いますか?

◆スティーブンスン:
この小説は90年代半ばのインターネットが普及し始めた時代に書いたので、ちょっとした初期のインターネット・ユートピア主義を含んでいました。「世界中の知識がオンライン化されれば、誰もがそれに群がるだろう」という考えですね。しかし、現実はせいぜいTikTokで動画を見るくらいです。ダイヤモンド・エイジは、知識というものが社会にどのような影響を与えるのかについて、当時私が他の多くの人々と共有していた素朴な考えを反映したに過ぎません。

◆ウォン:
生成AIの活用方法を検討している人たちにそのような素朴さが見られると思いますか?

◆スティーブンスン:
はい。私の感覚では生成AIの誕生はトランジスタが発明された時のような空気を伴っていると思います。トランジスタラジオのようにトランジスタを採用した製品は今でこそいくつか思いつきますが、トランジスタが社会をどのように変えるかは当時わかりませんでした。私たちは今、AIにおけるトランジスタラジオの段階にいるのです。あえて予測はしませんが、色んな製品が出てくると確信しています。何百万人もの人々の熱狂的な想像力は、一人の人間の想像力をはるかに上回る興味深いものを生み出すでしょう。

by Christopher Michel

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by log1p_kr

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