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エンタープライズ向けLinuxの老舗「SUSE」がRHELをハードフォークして互換ディストリビューションを作成することを発表


Red Hatが開発する「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」のソースコードの公開が終了したことを受けて、企業向けにLinuxディストリビューションを開発している企業「SUSE」がRHEL互換ディストリビューションの開発に乗り出すことを発表しました。発表の中で、今後数年間にわたって1000万ドル(約14億円)以上を投資すると述べられています。

SUSE、1,000万ドル以上の投資でRHEL をフォークし、 エンタープライズLinuxにおける選択肢を確保 | SUSE
https://www.suse.com/ja-jp/news/SUSE-Preserves-Choice-in-Enterprise-Linux/


At SUSE We Make Choice Happen | SUSE Communities
https://www.suse.com/c/at-suse-we-make-choice-happen/


自由ソフトウェア」とは、ソフトウェアを入手したユーザーが、そのソフトウェアの改変・再配布・商用利用などを含めて全ての権利を確保できる性質をもつソフトウェアのことで、GNUやLinuxはその自由ソフトウェアとしてコミュニティによって開発・提供されています。

例えばRed HatはLinuxを元にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)というディストリビューションを開発し、企業向けにサポートを提供することで営利を得ていますが、一方でRHELの開発中に行ったバグ修正や機能追加などのコードを上流のLinuxに提供することで、お互いにWin-Winの関係を築いてきたというわけです。


Red Hatはかつて、RHELの無償版としてCentOSをコミュニティに提供しており、Red Hatのサポートは受けられないものの、無料で高品質なディストリビューションを利用できるという点で多くのユーザーに利用されていました。CentOSの中身はRHELということで、手間をかけずにRHELの動作を試せたり、CentOS向けに作成されたアプリケーションをRHELで動作させることが可能であったり、ユーザー数が多いことからトラブルに遭遇した際に参考になる資料が多数存在していたりするなど、お互いにメリットのある関係を築いていました。

しかし2020年12月にRed HatはCentOSの提供を終了すると発表。当時の様子については下記記事で詳しく述べられています。

CentOS終了にコミュニティからは非難の嵐、CentOSの設立者が新プロジェクトの発足を発表する事態に - GIGAZINE


CentOSの終了を受けて、すぐさまRHEL互換のディストリビューションとして「Rocky Linux」や「AlmaLinux」など新たな下流ディストリビューションが登場しました。これらのプロジェクトでは、公開されているRHELのソースコードを再ビルドしてディストリビューションを提供していました。

CentOSに代わる新しいRHELダウンストリーム「Rocky Linux」が正式に発足 - GIGAZINE


そうした状況のなかで、2023年6月にRed HatがRHELのソースコードの公開を取りやめることを発表。Red Hatと契約した顧客に対しては従来通りソースコードの提供を続けるものの、ソースコードを公開した場合にはサポートが打ち切られてしまう契約となっており、「ソフトウェアが自由であること」を重視するLinuxコミュニティから猛批判を受けました。

Red HatがRHELソースコードの一般公開をやめて顧客限定に、自由ソフトウェアの原則を軸にしてきたLinux関係者たちから猛批判を受ける - GIGAZINE


RHELの下流プロジェクトの一員であったRocky Linuxからは「オープンソースの精神と目的に違反している」という非難の声明が出た一方で、Red Hat側は「オープンソースを開発・保守するための費用を稼ぐことこそ真のオープンソース」「ただRHELを再ビルドして配布するだけでRHELに貢献しない下流プロジェクトのためにRed Hatが追加の作業をする必要性を感じない」と反論しています。

Rocky Linuxが公式ブログでRed Hatの行動を「オープンソースの精神と目的に違反している」と非難、一方Red Hatも「本当のオープンソースにとって脅威」と下流プロジェクトを猛批判 - GIGAZINE


別のRHEL互換ディストリビューションであるAlmaLinuxからは「RHEL互換のLinuxを使うユーザーのコミュニティを拡大してきた」ことや、「RHELへの直接の貢献でなくても、RHEL互換のライブラリやソフトウェアの開発・保守という形でRHEL周辺環境を整えている」というこれまでの貢献をアピールするブログ投稿が行われました。

「下流プロジェクトは無価値」とソースコードの一般公開を取りやめたRed Hatに対してAlmaLinuxの開発チームがこれまでの貢献を力説 - GIGAZINE


上記のように、Red Hatとコミュニティの間でさまざまな論争が活発になっているところに、30年以上企業向けLinuxディストリビューションを開発してきた実績を持つ企業「SUSE」が、RHELをハードフォークしてオープンで誰でも利用できるRHEL互換のディストリビューションの開発・保守を行うと発表しました。このプロジェクトに対してSUSEは数年にわたって1000万ドル(約14億円)以上の投資を行う予定とのこと。

SUSEはオープンソースコミュニティとの協力を重視しており、プロジェクトの成果をオープンソース財団へ寄贈してソースコードへの無償アクセスを継続的に提供すると述べています。RHELやCentOSを使用するユーザーが、OSを変更することなくSUSEへとサポート契約を切り替えられるようになるというわけで、この点についてSUSEは「ソフトウェア自体の価値で競うのではなく、サポートやセキュリティの維持を通して重要なソフトウェアを実行する能力で競争するべきだ」と述べました。

SUSEは2023年5月にダーク=ピーター・ファン・レーベン氏が新CEOに就任したばかり。かつてRed Hatに18年以上勤務して上級副社長やアジア・北アメリカの地域統括部長だったという経歴を持つレーベン氏が率いることで、SUSEがエンタープライズ向けLinux業界に大きな波紋を引き起こすことになりそうです。

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in ソフトウェア, Posted by log1d_ts

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