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インドの教科書から進化論や元素周期表が突然削除される、4500人以上の科学者や教師が反対を表明

by DFID - UK Department for International Development

「生物は不変なものではなく、長い時間をかけて少しずつ進化してきた」という進化論は多くの研究や証拠と共に定説として受け入れられ、今では教科書にも記載されていますが、宗教や思想によっては進化論を受け入れない地域も存在します。インドでは、中学・高校のカリキュラムから進化論が削除されると報じられており、さらに元素周期表や公害・気候変動などのトピックも取り扱われなくなるとのことです。

Scientists in India protest move to drop Darwinian evolution from textbooks | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/scientists-india-protest-move-drop-darwinian-evolution-textbooks


India cuts periodic table and evolution from school textbooks — experts are baffled
https://doi.org/10.1038/d41586-023-01770-y


学術雑誌のScienceによると、インドの9年生(日本の中学3年生)と10年生(日本の高校1年生)が使う教科書から、チャールズ・ダーウィンの唱えた進化論に関する項目が削除されることが決定しているとのこと。


さらに、元素周期表に関するトピックや、エネルギー源と天然資源の管理についてのトピック、さらに電磁気学の父ともいえるマイケル・ファラデーの功績や産業革命に関する内容、民主主義と多様性に関するトピックも教科書から削除されました。これらの変更について、NCERTは「他の場所で扱われている同様の内容と重複していないか、内容の難易度はどうか、内容が無関係かどうかを考慮した」と述べています。

このカリキュラムの変更は、インドの学校に通う11歳~18歳の約1億3400万人に影響を与えるとのこと。インドで生徒のカリキュラムを設定して教科書を発行する自治政府組織・国家教育研究訓練評議会(NCERT)は、「進化論のトピックを削除したのはコンテンツの合理化プロセスの一環である」と述べ、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で「現在の文脈において無関係なコンテンツを避けるべきだ」として削除を決めたと述べています。

コルカタにあるインド科学教育研究所のアニンディタ・バドラ氏は「トピックを削除したのは生徒に質問をさせるためとのことですが、基本的な概念を取り除くことは好奇心を刺激するどころか、むしろ抑制してしまう可能性があります。トピックの削除は『内容を減らして教える量を減らす』ようなもので、好奇心を刺激するのはこういうやり方ではありません」と述べています。

by DFID - UK Department for International Development

インドの教育者や科学者の間で特に懸念されているのが、進化論が削除されたということ。進化論は生物の多様性に深く関わるトピックであり、さらにはもっと上の学年で習う遺伝にも関連します。ジャワハルラール・ネルー先端科学研究センターの進化生物学者であるアミターブ・ジョシ氏は、「インドの宗教団体が反進化論の立場を取り始めており、その影響がカリキュラムに現れています」と指摘しています。

ジャワハルラール・ネルー大学の歴史学者であるアディティヤ・ムケルジー氏によると、今回のカリキュラムの変更は、インドの与党であるインド人民党と密接な関係をもつ極右ヒンドゥー教組織・民族義勇団によって推進されているとのこと。RSSはヒンドゥー教がインドのほかの宗教や文化から脅かされていると考えているそうで、ヒンドゥー教の教えと相性が悪い進化論を削除するように圧力がかかったのではないかとムケルジー氏は推測しています。

by Stanley Zimny (Thank You for 66 Million views)

スタンフォード大学の科学教育研究者であるジョナサン・オズボーン氏は、「進化論を扱わずに生物学を教えようとする人は、我々が理解しているような生物学を教えているとは言えません。進化論は生物学の基本中の基本なのです。また、周期表は、生命の構成要素がどのように組み合わさって大きく異なる性質を持つのかを説明するものであり、化学者の偉大な知的成果の1つです」と述べました。

なお、インドの科学者や教師など4500人以上がカリキュラムを元に戻す訴えに署名していますが、NCERTは一切応えておらず、科学雑誌・Natureのコメント要請にも応じていません。

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in メモ,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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