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8000万円超の罰金を「ネット中立性」規則撤廃を阻止するためにパブリックコメントを偽造した企業が支払うことに


ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官が、2017年に連邦通信委員会(FCC)が行ったネットワーク中立性規則の撤廃手続きに影響を与えるために作成された「数百万件分の偽のパブリックコメント」に携わったとして、LCX、Lead ID、Ifficientの3社に対して61万5000ドル(約8350万円)の罰金支払いを命じました。

Attorney General James Secures $615,000 from Companies that Supplied Fake Comments to Influence FCC’s Repeal of Net Neutrality Rules
https://ag.ny.gov/press-release/2023/attorney-general-james-secures-615000-companies-supplied-fake-comments-influence


ネットワーク中立性とは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)がインターネット上の特定のコンテンツを優先するために、アクセスをブロックしたり通信速度を落としたりすることを禁止するというルールです。このルールが撤廃されることになれば、割増料金を支払った企業にコンテンツを高速配信できる「高速レーン」の利用を許したり、特定企業のコンテンツの配信速度を大幅に遅らせたりといった優遇措置が可能になるとして、一部からは撤廃に対する反対の声が上がっていました。

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このネットワーク中立性規則撤廃の動きに反対するために、LCX、Lead ID、Ifficientの3社は数百万人の消費者の個人情報を本人の同意なしに勝手に利用し、パブリックコメントを偽造していたことが司法長官事務所の調査によリ明らかになっています。なお、3社は合計61万5000ドルの違約金支払いに合意しています。

ジェームズ司法長官は、「パブリックコメントはアメリカ人にとって政府の重要な政策について意見を述べる機会であるのに対して、企業は利己的な目的のためにこれを悪用しました。誰も自分のアイデンティティを企業に操作され、私的な議題を偽って推進されることがあってはいけません。今回の合意により、我々はさらに3社がアメリカ人の知識や同意なしになりすましを行ったことに対する責任を追及することになります。我々は、消費者のアイデンティティが保護され、企業による詐欺的行為が阻止されることを保証するために常に戦っていきます」と言及しました。

LCX、Lead ID、Ifficientの3社はパブリックコメントを偽造するために、広告やギフトカードや懸賞の応募といった賞品を利用して、消費者にキャンペーンへの参加を促すリードジェネレーター(リードジェネレーションを行う人物)と提携していました。キャンペーンに消費者を登録するために雇われたほぼすべてのリードジェネレーターは、消費者からのコメントを偽造しています。その結果、850万件以上のパブリックコメントが偽造され、これがFCCに提出されることとなりました。なお、提出された偽造パブリックコメントのうち、50万件以上が議会にも提出されています。


LCXとLead IDの2社は、それぞれ消費者をキャンペーンに登録することに取り組んでいた企業で、それぞれが独立して150万人分のパブリックコメントを偽造。Ifficientは仲介業者として機能しており、他の見込み客獲得業者を巻き込みながら消費者をキャンペーンに登録させました。Ifficientは雇用したリードジェネレーターから受け取った84万件を超える偽造パブリックコメントをクライアント企業に提出しています。

さらに、司法長官事務所の調査により、ネット中立性規制撤廃を阻止するために企業が行っていた妨害工作が、政府の他の取り組みにも影響を及ぼしていたことが明らかになりました。ブロードバンド業界のネットワーク中立性に関するコメントキャンペーンに参加しているリードジェネレーション企業のいくつかは、規制当局や公務員に影響を与えるために、無関係な他のキャンペーンにも取り組んでいたことが明らかになっています。また、権利擁護キャンペーンのほぼすべてで、リードジェネレーション企業は詐欺的行為に関与していたと司法長官事務所は指摘。さらに、他の規則制定手続きに関しても100万件以上のパブリックコメントが偽造されており、連邦議会・州議会議員・政府職員向けの書簡や、嘆願書に対するデジタル署名も350万件以上偽造されていたことが明らかになっています。

LCXおよびLead IDは、上記の偽造パブリックコメントや書簡、嘆願書の署名などの多くに関与しています。LCXは2017年から2018年にかけて4回行われた権利擁護キャンペーンを通じ、環境保護庁とアメリカ内務省海洋エネルギー管理局に提出された約90万件のパブリックコメントを偽造。2017年から2019年にかけて行われた権利擁護キャンペーンでは、Lead IDが50万件を超えるパブリックコメントを捏造しています。


なお、今回発表された合意により、LCX、Lead ID、Ifficientの3社とその経営者は違約金の支払いおよび不正利益の返却(デゴルジメント)を義務付けられています。LCXはニューヨークに40万ドル(約5400万円)、サンディエゴ地方検事局に10万ドル(約1400万円)の違約金およびデゴルジメントを支払うことに合意。Lead IDはニューヨークに3万ドル(約400万円)の違約金およびデゴルジメントを支払うことに合意しています。Ifficientはニューヨークに6万3750ドル(約870万円)、コロラド州に2万1250ドル(約290万円)の違約金およびデゴルジメントを支払うことに合意しました。

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in メモ, Posted by logu_ii

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