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Qualcommが約472億円で自動車の衝突事故防止や交通状況改善のためにチップメーカーのAutotalksを買収


車両とそのドライバーが死角にある対向車や歩行者などの道路上の危険を検出して、自動車の衝突事故防止や運行状況改善に貢献するVehicle-to-everything(V2X)チップセットの開発を行うイスラエルのチップメーカー「Autotalks」をQuallcommが3億5000万ドル(約472億円)以上で買収することを発表しました。Qualcommは今回の買収によって、AutotalksのV2X通信技術を自動車用のSnapdragonに統合して、自動車の輸送効率と安全性の向上を図ることができると説明しています。

Qualcomm to Acquire Autotalks | Qualcomm
https://www.qualcomm.com/news/releases/2023/05/qualcomm-to-acquire-autotalks


Qualcomm acquires Autotalks to boost Snapdragon’s automotive safety technology, reportedly for $350-400M | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/05/08/qualcomm-autotalks-safety/


Qualcomm buys vehicle chip startup AutoTalks in reported $350M+ deal - SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2023/05/08/qualcomm-buys-vehicle-chip-startup-autotalks-reported-350m-deal/

Vehicle-to-everything(V2X)とは、自動車と自動車や歩行者、インフラなどを含めたあらゆるものを接続する無線通信技術の総称です。V2X技術は交通安全だけでなく、交通渋滞の解消や環境負荷の低減、快適な移動など、多くの分野での活躍が期待されています。

イスラエルに拠点を置くAutotalksは2008年に設立されたファブレス半導体メーカーで 、V2Xチップセットに関する研究や開発を行うだけでなく、自動車メーカーが簡単にV2X機能を車両に組み込むための技術も提供しています。Autotalksが提供するV2X機能には、「C-V2X」と「DSRC」の2種類の技術規格があります。

C-V2Xは、スマートフォンがキャリアネットワークに接続するために使用するLTEテクノロジーに基づいており、車両はキャリアネットワークや無線信号を介してデータを交換し合うことで、車両の現在位置に関するデータを相互に共有することができます。


DSRCも車両の現在位置に関するデータを相互共有することが可能ですが、C-V2XがLTE技術を使っているのに対してDSRCはWi-Fiを使っているのが特徴で、DSRCを用いた場合、車両は現在位置や方向、速度を付近の車両に毎秒最大10回共有します。

C-V2XやDSRCといった技術を用いることで、角を曲がった先にある障害物を車両が検出することができます。Autotalksによると将来的には付近の車両と現在位置を共有するだけでなく、車両が検出した障害物に関するデータを他の車両と共有することが可能になるとのこと。


さらに、Autotalksは自転車のハンドルに取り付けてV2X駆動の安全機能を提供する「ZooZ」と呼ばれるモジュールを提供しています。ZooZは、自転車のドライバーに対して潜在的な障害物を警告し、付近の自動車に自身の位置情報などを通知します。

そんなAutotalksを、Quallcommの子会社であるQualcomm Technologiesが買収する合意に至ったと発表しました。買収額は3億5000万ドル(約472億円)から4億ドル(約540億円)とみられています。QualcommはAutotalksのV2X技術を自社の自動車向けSoC「Snapdragon Digital Chassis」に統合する計画を打ち出しています。QualcommはAutotalksの技術を用いて交通効率を向上させ、ドライバーと歩行者などの道路利用者の安全を支援するV2Xソリューションの開発と採用を加速することを目的としています。


Qualcommの自動車担当シニアバイスプレジデントであるナクル・ドゥグガル氏は「Qualcommは2017年からV2X技術の研究や開発、展開に対して投資を行っており、自動車市場が成熟するにつれて、道路利用者の安全性とスマートな輸送システムを強化するために、スタンドアロンのV2Xによる安全なアーキテクチャが必要になると考えています」と述べています。

また、ドゥグガル氏は「私たちは、道路上の安全上の問題を解決することに焦点を当ててV2Xテクノロジーを研究してきたAutotalksの数十年にわたる経験を取り入れることで、現代社会で重要な安全技術を可能にするグローバルなV2Xソリューションを提供できることを楽しみにしています」と語っています。

Autotalksのハガイ・ジスCEOは「V2Xソリューションを通じて自動車での輸送および自動車業界の安全性に革命を起こすことが私たちAutotalksの使命でした。AutotalksとQualcommの技術と専門知識を組み合わせることで、道路利用者の輸送効率と安全性を向上させる強力なV2X製品を提供するだけでなく、V2Xの普及を加速できると私たちは確信しています。Qualcommとともに自動車業界にV2Xサービスを提供し、最高の技術を市場に投入できることを楽しみにしています」と述べています。

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in ハードウェア,   乗り物, Posted by log1r_ut

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