映画

最近の映画が暗い理由とは?


近年の映画を鑑賞していると、「昔の映画と比べて画面が暗すぎる」と感じる人も多いはず。現代の映画において「画面暗すぎ問題」が発生している理由について、映像作家のA.B. Allen氏が解説しています。

Why movies today look so dark today, in theaters and at home - Polygon
https://www.polygon.com/23661749/why-movies-look-dark-cinematography


「最近の映画は画面が暗すぎる」という印象は多くの人々が抱いており、「どうして最近の映画はこんなに暗いのですか?」と問いかける以下のツイートは30万件以上の「いいね」を集めています。

Why the hell are movies so dark now? What’s going on with the lighting? All these shadows makes it difficult to watch. https://t.co/6Ir7t1xH0Z

— AshleyStevens (@The_Acumen)


また、2023年4月28日に配信開始予定の実写映画「ピーター・パン&ウェンディ」の予告編を鑑賞したユーザーからも「暗いシーンが多すぎる」という指摘が寄せられています。

Seriously need a formal investigation into why all these movies look like this pic.twitter.com/2AYOqpT1m8

— Jeff Zhang 张佶润 (@strangeharbors)


近年の映画の画面が暗い理由については「アナログカメラとデジタルカメラでは撮影手法が変化するから」といった撮影技術に関する議論が活発に行われていますが、Allen氏は「道具はあくまで道具です」と述べ、撮影技術に関係なく監督や映画の色彩調整を担当するカラリストが表現技法の一環として暗い画面を作り出していると指摘しています。

1990年代頃の映画では、暗い夜のシーンでも明るく描写されることがよくありました。例えば、1996年に公開されたホラー映画「スクリーム」の1シーンでは、「ライトが点灯していない夜中の室内」が明るく描写されています。当該シーンをよく観察すると窓の外から光が入っているように見えますが、月明かりにしては明るすぎるため、現実的な描写とは言えません。しかし、この明るさによって登場人物の顔を映し出し、観客に心情を読み取らせることに成功しています。つまり、この不自然な明るさは監督やカラリストの意図したものだということです。


2000年代に入ると、シーン全体を明るく照らすのではなく、指向性のあるライトを使って影を描写する技法が広く用いられるようになりました。そして、2010年代には「自然な照明」が重視される傾向が強まりました。例えば、2010年に公開された「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1」の1シーンを確認すると、画面全体が非常に暗いことが分かります。


また、2016年に公開された「レヴェナント: 蘇えりし者」では現実的な光源にこだわるために照明器具がほとんど使われず、太陽や炎の明かりを利用して全編が撮影されたとのこと。「レヴェナント: 蘇えりし者」などの成功によって多くの映画制作者が同様の手法を志したとAllen氏は指摘しています。

Allen氏によると、多くの映画制作者は観客の共感を呼び起こすことを目的として「自然な照明」を採用しているとのこと。しかし、夜間のシーンなどでは「自然な照明」へのこだわりが裏目に出て暗すぎる状態になっているというわけです。

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in 映画, Posted by log1o_hf

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