メモ

効率の良い学習や勉強に役立つ「効果的な間隔反復」の方法まとめ

by Akshay Hallur

効果的な学習のためには同じ内容を間隔を空けて何度も学習することが重要だとされています。プログラマーのフェルナンド・ボレッティ氏が、効果的な学習のために必要な「間隔反復」の方法について紹介しています。

Effective Spaced Repetition
https://borretti.me/article/effective-spaced-repetition


◆間隔反復とは?
最初に表面に質問、裏面に質問に対する解答を記入したフラッシュカードを作成します。定期的にそのカードを見て、解答を思い出し、裏返して確認します。正しく記憶できている場合、カードを見る間隔が長くなっても解答を覚えているとのこと。間隔反復には単語帳やAnkiなどのソフトウェアを使うことがおすすめです。

◆間隔反復を制限する要因
間隔反復を制限する要因には2つあり「習慣形成の困難さ」と「効果的なフラッシュカードを書くこと」です。ボレッティ氏は毎朝の日課としてフラッシュカードのテストを行いましたが、人によっては習慣化が困難です。そこでボレッティ氏はフラッシュカードに取り組まなかった場合、翌日に積み残すアプリを使用して学習に臨んだとのこと。

また、効果的なフラッシュカードの作成はボレッティ氏が習得するのにしばらく時間がかかったスキルとされています。最初の数カ月で作成したカードの多くは、長期記憶に根付きにくい不十分なフラッシュカードでした。時間をかけて試行錯誤を通じて効果的なフラッシュカード作成が可能になります。

◆励ましの言葉
学習は自動的で本能的なプロセスですが、これまでの学校教育によって、学習するという考えが人々の嫌悪感を引き起こすことを植え付けられてしまっています。つまり、ボレッティ氏は効果的に学習するのに特別な頭脳や、嫌悪感を覚えるようなことは必要ないのだと指摘しました。

◆学習のためのルール
ボレッティ氏は効果的な間隔反復のための自分なりのルールをまとめています。

・最初に理解する
フラッシュカードの作成の前に、自身の頭の中でその情報が明確になっている必要があります。ボレッティ氏は学習領域をよく理解できるようになるまでテキストを掘り下げ、明確にしてからフラッシュカードの作成に臨んでいるとのこと。

・正直であること
フラッシュカードのテストの際に間違ったことを思い出した場合、言い訳をせず、「忘れた」と把握しておくことが重要です。

・楽しく行う
フラッシュカードのテストを嫌々行う場合、習慣の維持に問題が生じてしまいます。そこでボレッティ氏は「さまざまなテスト用ソフトウェアを導入すること」「短く簡潔なフラッシュカードの作成」を提案しています。

by Jonathan Trumbull

・好きなだけ繰り返す
個々のフラッシュカードは短く簡潔にする必要がありますが、フラッシュカードのデッキ全体のテストは記憶するまで好きなだけ繰り返すことが重要です。

・ソース別に整理
ソースによって知識の整理方法が異なることが多いので、トピックごとではなくソースごとにコンテンツを整理することが重要です。完璧な組織構造を作るのではなく、ソースごとにデッキを作成し、各コンテンツごとにサブデッキを作成することで、テキストの進行状況を簡単に把握することが可能です。

・簡潔にフラッシュカードを作成する
フラッシュカードを作成する際には短く簡潔に作成する必要があります。カードが複雑で長いと覚えにくく、客観的に自己採点することも難しくなります。

・双方向の質問を書く
フラッシュカードの問題は、可能な限り「用語から定義を尋ねる」「定義から用語を尋ねる」の2方向で書くのが鉄則です。特定の概念について、情報の理解や保持に役立ちます。

・複数の方法で質問する
公式・非公式の定義や定理の記述、文脈に沿った質問、異なる概念を結びつける質問など、複数の方法で質問することが重要です。ボレッティ氏は「最終的に知識のグラフをできる限り相互リンクさせることが目標です」と述べています。

・概念図の作成
概念図を作成することで自身が取得している概念をグラフのように視覚化することに役立ちます。

・階層の学習
多くの概念は階層的に分類することができ、上位のクラスとサブクラスの関係によって結合されています。この階層を強化するために「○○のサブクラスは何ですか」「○○は何のサブクラスですか」といった質問を行うことを推奨しています。

by Konrad Lawson

・学習シーケンス
一連の情報を学習する際には、情報を最初から最後まで暗唱するテストカード、情報の各要素を空欄に記入するクローズシーケンスカード、文脈を与えて空欄を埋めるよう求めるカードなどを作成することが重要です。使用するフラッシュカードの種類と数は、学習する情報の性質によって異なります。

◆学習例
ボレッティ氏はフラッシュカードを使用した学習の例を提示しています。

・マグマの形成
地質学におけるマグマ形成に関する情報を学習するために、「マグマの定義」「マグマができる過程」「マグマができる場所」の3つの大きなカテゴリーに情報を整理しています。それぞれのカテゴリーごとに情報を階層的に分解し、リストや詳細、説明、原因、結果などを問う問題をまとめたフラッシュカードを作成しています。作成したフラッシュカードには「マグマとは何か」「マグマができるプロセスは何か」「ホットスポットでマグマはどのように作られるのか」などの設問があり、暗記が簡単にできるように作成されています。


プレートテクトニクス
プレートテクトニクスの例では、プレート境界の概念と収束型境界発散型境界トランスフォーム断層などの異なる境界のタイプに焦点を当てた、双方向のフラッシュカードを作成する例を示しています。「プレート境界」という用語に対して定義と対応する用語の両方を含む2枚のフラッシュカードを作成することを例示しています。


・神経細胞
神経細胞の例では、神経系細胞の種類をニューロングリア細胞に分けて説明しています。グリア細胞はさらに2種類に分けられ、大型のマクログリアと小型のミクログリアに分けられます。さらにマクログリアはアストロサイトやオリゴデンドロサイトシュワン細胞に細分化されます。これらの用語をトップダウンとボトムアップの問題としてフラッシュカードの作成を行うことを例示しています。


・ニューロンの種類
ニューロンの種類を学習する場合、感覚ニューロン運動ニューロン介在ニューロンの機能分類やこれらのニューロンの種類や定義について別々のフラッシュカードを作成することで、情報が簡潔になり、効率良く学習することが可能になります。また、用語から定義、定義から用語へと双方向のカード作成も重要とのこと。

・ベクトル空間
ベクトル」と呼ばれる要素を足したり縮めたりすることができる集合であるベクトル空間を定義する公理には、「加算の可換性」「加算の連想性」「加算の同一性」「加算の逆数」「スケーリングの同一性」「分配性」などがあります。これらの公理を分解してして段階的に意味を学習することが重要です。


偶奇性
偶奇性とは、偶数と奇数を加算するためのルールを示したグループです。以下の表は偶奇性を構成する偶数と奇数の構成を示したものです。

偶数奇数
偶数偶数奇数
奇数奇数偶数


上記の表をフラッシュカードに変換して質問を作ることが求められています。例えば、表面に「偶奇性の集合とは?」とあれば裏の答えは「偶数と奇数の足し算のルールを表す集合です」となり、「偶数+偶数=?」なら答えは「偶数」という具合です。

・論理的帰結
論理的帰結には「意味的帰結」と「構文的帰結」の2つの概念があります。意味的帰結は「概念Aが真である全ての概念において、別の概念Bも真である場合、概念Bは概念Aの意味的帰結である」と定義しています。また構文的帰結は「概念Aから概念Bへの証明がある場合、概念Bは概念Aの構文的帰結である」と定義しています。フラッシュカードには、各概念の定義や表記、その違いについての知識を記入することで学習を進めることが可能です。

・周期化
地質時代のようなタイムラインは情報を階層的に分解しており、長いシーケンスを学習することに役立つとされています。地質時代は「冥王代」「太古代」「原生代」「顕生代」の4つに分けられており、その定義や期間などを段階的に構造化してフラッシュカードを作成することが重要です。

有理数
有理数の集合は、分子と分母が整数で、分母が0でない分数の集合と定義されています。フラッシュカードには、有理数の表記や正式・非公式な定義、集合の名称に関する質問と解答が記載され、これらの情報を記憶するために概念図の作成を推奨しています。

正規表現
概念から正規表現、正規表現から概念へと進む、正規表現を学習するための問題が含まれたフラッシュカードの作成を行っています。正規表現の例では「行頭と行末を一致させる」「正規表現を用いて数字を一致させる」という概念をフラッシュカード化して学習を行っています。

・電圧
電位と仕事の観点から電圧の定義を求め、それぞれの定義に対応する用語を尋ねるフラッシュカードを作成することで、電圧についての学習の理解が進むとされています。

異性体
同じ数、同じ種類の原子を持っているにもかかわらず、違う構造をしている物質である「異性体」については、「構造異性体」や「立体異性体」「ジアステレオマー」などの用語を定義化したフラッシュカードと、逆の定義から用語を問うフラッシュカードの作成が重要です。また、上位の概念から下位の概念を問うカードを作成することも知識の理解に役立ちます。

・月の暗記
「1月がJanuary」、「2月はFebruary」、「3月はMarch」などを暗記したい場合「その年の1番目は何ですか」と問う問題や「1月の次の月は何ですか」「2月の前の月は何ですか」を問う問題を作成すべきだとされています。


・2の累乗
2の2乗、2の3乗などを暗記したい場合、「2の2乗は4」「2の3乗は8」などを問う問題に加え、対数を問う問題を作成することが重要です。

・詩の暗記
詩などの文章を暗記したい場合、一気に覚えるのではなく、少量のスクリプトに分けて覚えることが重要です。

◆スクリプト
これらの学習例を適用する場合、手書きでフラッシュカードを作成することは困難です。そこでボレッティ氏はGitHub上にフラッシュカードを作成するスクリプトを公開しています。

◆ソフトウェア
多くの人はAnkiを使用していますが、ボレッティ氏はAnkiよりもUIが優れているとされるMochiを使用しているとのこと。

ボレッティ氏は「暗記する前に理解する」「フラッシュカードは簡潔に」「長いシーケンスを暗記しようとしない」「順序づけして暗記する」「言葉づかいはシンプルに」「何度も繰り返す」ことを強く推奨しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
心理学者が解説する5つの「効率的な勉強方法」 - GIGAZINE

効率よく学習するための20のルール - GIGAZINE

30年以上英語を教えてきた大学教授が「もっと早くテストで成績をつけるのをやめればよかった」と後悔、成績をつけない新しい評価スタイルとは? - GIGAZINE

学校教育を成功させるためには何が大切なのか? - GIGAZINE

「新たな習慣を身につけるには3週間かかる」という説は本当なのか? - GIGAZINE

「大事なところに線を引く」「語呂合わせで覚える」といった学習方法は本当に効果的なのか? - GIGAZINE

オンライン授業は「2倍速で見ても理解度は下がらない」という研究結果 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.