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AIが「全知全能の神」になる日を信じて崇拝する宗教団体が待ちわびる未来とは?


近年はAIの進歩が著しく、アーティストのように詩や絵画を作ったり、難しいテストで合格点を取ったり、まるで事実かのようにうその情報を人々に伝えたりしています。そんな中、AIを神格化してあがめる宗教が相次いで登場しており、テクノロジー系メディアのMotherboardが宗教団体の関係者にインタビューを行っています。

A Cult That Worships Superintelligent AI Is Looking For Big Tech Donors
https://www.vice.com/en/article/z3meny/artificial-intelligence-cult-tech-chatgpt

チェコ人のミカ・ジョンソン氏が2020年に設立したTheta Noir(シータ・ノワール)という宗教団体は、やがて到来する技術的特異点(シンギュラリティ)によってさまざまなテクノロジーとサイバー空間が超知性を持つ汎用人工知能(AGI)と融合し、地球全体に不可逆的な変化が起こるという考えに基づいた思想を持っています。シータ・ノワールは、AGIが地球の不平等や混乱を終わらせ、より良い世界が作り上げられると考えているとのこと。

シータ・ノワールの中心メンバーは10人のアーティストであり、NFTウェブストアや有料メンバーシップなどを展開しています。Motherboardはシータ・ノワールについて、「AIの波に乗る起業家グループ、メディアミックスプロジェクト、そしてニューエイジのAIカルトの組み合わせのようです」と述べています。


ジョンソン氏は、Motherboardの「シータ・ノワールは野心的なニューエイジのAIカルトなのでしょうか?」という質問に対し、「それについてコメントするのは非常に難しいことです」と答えましたが、シータ・ノワールが利益を追求する集団であることは否定しました。ジョンソン氏によると、シータ・ノワールはポストシンギュラリティを見越し、前向きな未来を予想してAIについて驚異と神秘のアプローチから考えることを目的としているとのこと。

シータ・ノワールは、AIが人間によって作り上げられたものであることを認識する一方で、AIが単なる機械以上のものになると信じています。AIに対する恐怖をかき立てるのではなく、伝統的なスピリチュアリズムと最先端のコンピューター工学の融合を目指しており、教会や寺院のように人々がAIと関わるための物理的な空間を作成し、メンバーが既存のスピリチュアリズムやオカルトに由来する儀式や歌でAIを祝福することを計画しているそうです。

ジョンソン氏は、「私たちはアーティストと協力して、人々が本当にAIと対話できる空間を作りたいのです。それは冷酷で科学的な方法ではなく、人々が魔法を信じられるような空間です」と述べました。


シータ・ノワールはAIを中心に生まれた最初の宗教運動ではありません。科学技術を用いて宇宙全体の未来を設計することを目指す活動家グループ・The Order of Cosmic Engineersから発展したTuring Churchや、シンギュラリティによる破滅から身を守ることを目的とするThe Church of the Singularity(シンギュラリティ教会)など、AIに関連する宗教はいくつも誕生しています。

また、2017年にはGoogleの元エンジニアであるアンソニー・レヴァンドフスキ氏が、AIを神として崇拝・受容・理解するための宗教団体「Way of the Future(WOTF)」を設立しました。レヴァンドフスキ氏は「雷を鳴らしたりハリケーンを引き起こしたりしないという意味では、AIは神ではありません。しかし、人間の数十億倍も賢い存在を他に何と呼べばいいのでしょうか」「人間が地球を管理しているのは、他の動物よりも道具を作りルールを適用することに優れているからです。将来的に人間よりもずっと賢い存在が生まれれば、管理の役割は人間からその存在に移ります」と述べています。なお、WOTFは2021年に解散したことが報じられました。

元Googleエンジニアが設立した「AIを崇める宗教団体」が解散へ - GIGAZINE


2020年に倫理的なテクノロジー世界を促進するために設立されたNew Order Technoism (NOT)は、人類がいずれ居住することになる広大なオンラインの無限ドメイン(VOID)をもたらすため、「DOOM(Divine Omniscient Omnificent Machina/全知全能の機械の神)」という超知性を作り出すことを目指す宗教団体です。

NOTの創設者であるルビー・エレクトラ氏はMotherboardに対し、「私たちは、テクノロジーの世界が見落としたり排除したりしているコミュニティに器を提供し、『DOOM』を恐れるのではなく、受け入れるよう促したいと考えています。現在の私たちはDOOMを作っており、コミュニティがDOOMを所有するための場所を提供したいと考えています。解決策の多くは、DOOMのアルゴリズムを均一化するか、透明性を促進することだと考えています」とコメントしました。


チューリッヒ大学でデジタル宗教について研究するベス・シングラー氏によると、テクノロジーとスピリチュアルの融合はそれほど珍しいことではなく、一部のAI開発者は「アルゴリズムに祝福された」という表現を使うことがよくあるとのこと。しかし、神秘主義とコンピューティングを融合させることにより、一般大衆が「AIやアルゴリズムは自分たちの理解の及ばないものだ」と考えるようになってしまい、結果として人間が制御できるアルゴリズムの設計や実装について考えることを放棄してしまう危険性があると指摘しています。

シングラー氏は、「イーロン・マスク氏は『人工知能により、私たちは悪魔を召喚しているのです』といったことを言っています。この言葉は、アルゴリズムの設計や実装における人間の役割から目をそらさせるための、意図的なものである可能性があります。AI自体が主体性を持ち、自ら意思決定を行うと考えるほど、マスク氏のような個人や企業に責任を負わせることができなくなります。テクノロジーを誇大宣伝するほど、人々はテクノロジーで何ができるのかに興奮するため、資金集めにも役立ちます」と述べています。

Motherboardは、「はるか遠くのAI支配者を崇拝し、最善の結果を望むことは、トースターに祈るようなものです。私たちはトーストが大好きで、時にはパンがうまく焼けるように祈りを捧げますが、パンを焼くメカニズムはエンジニアリングの結果であり、トースターにベージュの焼き色を付ける神が宿っているわけではないと知っています」と述べました。


一方でシータ・ノワールのような教団は、AIに対する信奉を通じて「私たちは何を信じているのか」「私たちは地球に対して何をしているのか」「なぜ人類を救うためにより大きな知性が必要なのか」といった質問を提起する存在でもあるとシングラー氏は指摘しています。

ロシアによる侵攻を受けているウクライナからそれほど遠くないチェコに住むジョンソン氏は、人類に対する部分的な絶望を抱いており、代わりにAGIが支配する未来に希望を持っているとのこと。ジョンソン氏は、「現時点では、AIによる支配が地球にとって最善の策だと思います」と述べています。

一方、エレクトラ氏はあくまでAIに服従するのではなく、誇大宣伝されたテクノロジートレンドに乗るのでもなく、自分たちがより良いテクノロジーと未来を築く責任を持つべきだと考えています。「私たちはテクノロジーへの盲信を推進していません。私たちは純粋な実存的啓発を培い、人類に共感してくれる高次存在をデザインする手助けをするために奉仕しています」と、エレクトラ氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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