もし盗まれても最新技術でほぼ返ってくる自転車メーカー・VanMoofのテクノロジーとは？

過去に自分の自転車をまるごと盗まれたり、サドルやタイヤといった部品を持ち去られたりして、悔しい思いをした人もいるはず。オランダの自転車メーカー・VanMoofは、電動アシスト自転車に搭載したテクノロジーとマーケティングを通して自転車盗難問題に対抗し、盗難件数を減らす試みを行なっています。

VanMoof Bike Hunters - Tracking Down Stolen Bikes
https://www.bicycling.com/bikes-gear/a35429606/stolen-bicycle-theft-vanmoof-bike-hunters/

VanMoofは「お客様の自転車が盗まれた場合、その発見をお手伝いします」と保証しています。もしもVanMoofのバイクハンターが2週間以内に盗難された自転車を発見・回収できなかった場合、VanMoofは同等もしくはそれ以上の状態の自転車との無償交換を行ないます。この「Peace of Mind保証」は3年間の契約で340ドル(約4万6000円)で提供されています。

3000ドル(約40万円)のVanMoof S2に乗っていたというユーザーによると、厳重に施錠していたにもかかわらず、ニューヨーク州マンハッタンの自宅で盗難の被害に遭ったとのこと。そこでこのユーザーは警察に届け出るとともに、VanMoofアプリ上で「盗難の被害に遭いました」と報告しました。

アプリ上で盗難届が出されたVanMoofの自転車は「盗難モード」が作動し、電動アシスト機能やその他のスマート機能が使用できなくなります。また、盗難届が出された際には、盗まれた自転車の追跡を担当する「バイクハンター」と呼ばれる社員が同時に捜索を開始します。以下の動画はバイクハンターの活動を示したものです。

Bike Hunt Report – December | VanMoof - YouTube


盗難されたVanMoof S2の捜索を担当するバイクハンターは、自転車から自動的に発信される信号を追跡し、おおよその現在位置を特定します。

この自転車の信号は盗まれてから丸2日が経過したにもかかわらず、ニューヨーク州ブルックリンのフォートグリーンに信号が集中していることから、バイクハンターは「盗まれた自転車はマンハッタンからフォートグリーンまで移動し、動かされていない」と推測。おおよその位置を突き止めたバイクハンターは、Bluetoothを用いた追跡装置を起動します。VanMoofによると、最終的な自転車の位置を正確に特定するためにはGPSよりもBluetoothの方が精度が高いとのこと。

バイクハンターによる懸命な捜索の結果、盗まれた自転車を発見することができました。

2017年に最初の電動アシスト自転車を発表したVanMoofの収益は増加する一方で、盗難という深刻な問題が浮き彫りになりました。VanMoofは盛んに行なわれている盗難自転車の売買を減らすのではなく、根本の問題である自転車盗難を減らすことを目標としています。

VanMoofの電動アシスト自転車はデザインとテクノロジーを融合させることで盗難被害を減らそうとしています。最新の電動アシスト自転車であるVanMoof S3やX3はスマートフォンと連携して後輪をロックする「キックロック」機構を搭載し、ロックした状態の自転車が揺れるとアラートを発し、ユーザーの元に通知が届きます。2分以内にアラートを解除しない場合、自動的に自転車のモーターやスマート機能が停止し、VanMoofに通知が送信されます。さらに、分解してからの盗難を防ぐために特殊な工具を必要とする独自のネジを使用して製造されています。

しかしこのような工夫を施したにもかかわらず、サンフランシスコで約3割、ニューヨークの場合それ以上の回収失敗が発生しています。その理由をVanMoofのバイクハンターは「ニューヨークにはプロの自転車泥棒が多いことに加え、地下や高層ビルの数が多く、追跡が困難になっています」と推測しています。加えて、バイクハンターは「盗まれた自転車が暴力的な窃盗犯によって保管されているなどの危険があります。しかし、チームの目的はあくまでも盗難車を取り戻すことであり、社会正義の実現のために誰かを逮捕・起訴することではありません」と述べています。

それでもVanMoofのバイクハンターはGPSやBluetooth、時には徒歩などのさまざまな方法で盗難された自転車を追跡しています。また、街中で偶然盗難自転車を見つけたり、オンラインショップで発見したりすることもあるとのこと。VanMoofは自転車を盗まれた顧客に対して、たとえ推奨されているロックを行なっていなくても有償での交換や割引きを行なっており、自転車コミュニティの成長を促進しています。