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夢のエネルギー「核融合発電」が実用化されるのは結局いつごろなのか?


「部屋の寒さに耐えきれずに暖房をつけたら翌月の電気代の高さに驚いた」という人は多いはず。さらに、2023年の春には電力各社が電気料金の値上げをすると報じられており、今後もエネルギー価格が家計を圧迫する状況が世界的に続くと見られています。そんな中、安価で安定した次世代エネルギーとして期待が集まる核融合発電が一般家庭に電気を供給するのはいつごろになるのかについて、科学メディアのNautilusが有識者に質問しました。

When Will Fusion Energy Light Our Homes? - Nautilus
https://nautil.us/when-will-fusion-energy-light-our-homes-259169/

アメリカのローレンス・リバモア国立研究所は2022年12月に、国立点火施設で行った核融合反応の実験で「投入したエネルギーより多くのエネルギーを得ることに成功した」と発表しました。核融合の実用化に必須となる「点火」が可能であると実証したこの成果について、ローレンス・リバモア国立研究所は「数十年来の重要な科学的ブレイクスルー」と位置づけています。

エネルギー省が正式に核融合実験でエネルギー投入を上回る出力を達成し「点火」を確認したと発表 - GIGAZINE


このニュースに対して、「核融合点火の目標が達成されたことを知ってうれしく思いましたが、世の中の反響は少しずれているように思えました」と話すのは、イギリス原子力公社のカルハム核融合エネルギーセンターで核融合の研究に携わった経歴を持つ気候学者のトーマス・ニコラス氏です。

ニコラス氏によると、国立点火施設は名前の通り点火を実証するために作られたもので、点火の目標達成も当初の予定より10年遅れているとのこと。そのため、「点火の実現により核融合への道筋が加速する」というような見出しがネットや紙面をにぎわせたのには、皮肉な感じを受けたそうです。

ニコラス氏は、特に「核融合で発電する施設が登場する時期」と「核融合発電が世界各地で大規模に普及する時期」とでは意味合いが違ってくるという点が、核融合の普及に関する話題の中では見逃されがちだと指摘しました。

by Técnico Lisboa

例えば、ソーラーパネルや風力発電機は短期間のうちに設置可能な代わりに寿命も短いので、壊れるそばからどんどん新しいものに交換されます。これをニコラス氏は「置換率が高い」と表現します。設備の寿命が短いことは、生産のために多くの工場を建設する理由となるため、スケールアップもしやすくなります。つまり、スケールアップの速さは置換率で決まると言えます。

再生可能エネルギーとは逆に、核融合発電は多額の建造コストが必要となる巨大インフラプロジェクトであり、採算が取れるようにするためには長期的な計画が必要になるので、置換率は低くなります。従って、核融合発電が世界的に普及するのもかなりのスローペースになると考えられます。


具体的には、最初の核融合発電所の登場と世界中にたくさん核融合発電所が作られるまでの時間差は、約50年と見積もられているそうです。つまり、最初の本格的な核融合発電の登場が2040年~2050年ごろだと仮定すれば、その後核融合発電が世界的に普及するのは2100年ごろになります。

こうした点からニコラス氏は「『1つの国の電力の10%や20%が核融合で賄われるようになるのはいつですか?』と問われれば、その答えは2100年です」と話しました。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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