イーロン・マスクのTwitter買収後に急成長した分散型SNSは伸び悩んでいるのか？

イーロン・マスク氏によるTwitter買収の後、マスク氏のTwitter改革に不安を示すユーザーが次々とMastodonやDiscordなどのオープンソースの分散型SNSに移行していることが報じられています。Mastodonは2022年12月にアクティブユーザー数が250万人に到達したことを発表しましたが、一部メディアからは、これらの分散型SNSが伸び悩んでいるという指摘が上がっています。

Lazy Reporters Claiming Fediverse Is ‘Slumping,’ Despite Massive Increase In Usage | Techdirt
https://www.techdirt.com/2023/02/08/lazy-reporters-claiming-fediverse-is-slumping-despite-massive-increase-in-usage/

ニュースサイト「The Guardian」のジョシュ・ニコラス氏は2023年1月7日に「2022年11月以降、Twitterから100万人以上のユーザーがマストドンに移行しましたが、その多くは定着せず、アクティブユーザー数はピーク時から30％以上減少しています」と述べています。

また、Wiredのアマンダ・フーパー氏は2023年2月7日に「イーロン・マスク氏によるTwitterの買収に伴ってMastodonなどの分散型SNSに移行したアクティブユーザーは、これまでに100万人以上減少しています。このことは分散型プラットフォームがTwitterの直接の代替品ではないことを示唆しています」と述べています。

テクノロジー系ニュースサイトのTechdirtのマイク・マスニック氏によると、これらの記事は「マスク氏がTwitterを買収した2022年11月以降、Mastodonのユーザーは増加しましたが、多くのユーザーはMastodonに定着しなかったため、Mastodonをはじめとする分散型SNSはスランプに陥っていることを証明している」とのこと。しかしマスニック氏は「これらの記事は多くの点で誤りがあります」と述べています。

Mastodonをはじめとする分散型SNSは「Fediverse」と呼ばれ、それぞれのプラットフォームは独立性を保ったまま相互運用することが可能です。マスニック氏によると、Twitterを離れたユーザーはMastodonだけでなく、PleromaやPixelfed、Misskeyなどに移行したとのこと。

Fediverseの実際の使用状況を追跡する「The Federation」によると、マスク氏によるTwitterの買収があった11月以降、アクティブユーザー数は急速に上昇し、ピーク時には約400万人に達しています。2023年1月以降アクティブユーザー数は減少しているものの、2022年11月以前のアクティブユーザー数である約60万人を上回っている状態なのが確認できます。

マスニック氏は「Twitterには約13億のアカウントが存在しますが、1カ月のアクティブユーザー数は3億6800万人にすぎません。約10億ものアカウントが非アクティブにもかかわらず、Twitterを『スランプ』と呼ぶ人は皆無です。そのため、わずか2カ月でアクティブユーザー数が60万人から200万人以上に増加したFediverseを『スランプ』とみなすことはできません」と述べています。

マスク氏のTwitter買収以降、多くの開発者がMastodonに移行しており、数多くの新しく使いやすいクライアントアプリがリリースされています。電子フロンティア財団のロス・シュルマン氏によると、「Fediverseは、Twitterのクローンという位置付けだけでなく、オープンソースプラットフォームという性質から、さまざまな有用なサービスを提供できます。そのため、単純なTwitterとの比較は誤解を招きます」とのこと。

マスニック氏は「ユーザーをTwitterからFediverseに移行させ、定着させることは、容易なことではありません。しかし、Fediverseでのここ数カ月の有用な製品やサービスが開発される速度には目を見張るものがあります」と述べています。