取材

日本で類例のない鼉⿓⽂(だりゅうもん)盾形銅鏡&日本最大の蛇行剣が出土した日本最大級の円墳・富雄丸山遺跡の現地公開に行ってきた


2023年1月25日、奈良県奈良市丸山にある富雄丸山遺跡の埋葬施設から、鼉龍文(だりゅうもん)盾形銅鏡1枚と蛇⾏剣1本が見つかりました。銅鏡は「類例のない品」、剣は鉄剣として日本最大かつ蛇行剣として最古の品ということで、国宝級の発見と報じられています。その遺跡の一般公開が、1月28日・29日に行われるということだったので、どんなところなのか見に行ってきました。

富雄丸山古墳の発掘調査(第6次)現地公開の開催について - 奈良市ホームページ
https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/135/164811.html

富雄丸山古墳から日本最大の蛇行剣・前例のない銅鏡が出⼟! - 奈良市ホームページ
https://www.city.nara.lg.jp/site/press-release/165641.html

大阪難波駅から近鉄奈良線の快速急行に乗車しました。


前日の夜から朝にかけて雪が降ったため、生駒に向けて山を登っていく車窓からは大阪平野がきれいに見えました。

近鉄奈良線瓢箪山駅~生駒トンネル間で見える大阪平野の展望 - YouTube


およそ30分で学園前駅に到着。


学園前駅は北口・南口ともにバスターミナルがありますが、目的地に向かうバスは南口3番乗り場に発着します。


最寄りは奈良交通・丸山橋バス停。ただし、この日は現地公開の受付が遺跡の西側にあるグラウンドに設けられていて、最寄りは若草台中央バス停となっていました。丸山橋と若草台中央を経由するバスは駅の南口3番乗り場から発車する28系統「奈良県総合医療センター」行き。日中は1時間に1本ですが、途中停車なしで若草台中央に直行する臨時便が出ていたのでこれに乗ることに。

富雄丸山古墳発掘現場へのアクセスについて|奈良交通
https://www.narakotsu.co.jp/news/news_1455.html

運賃は28系統も臨時便も350円で、交通系ICカードが使用可能です。


学園前駅南口ロータリー入口には美術館などへの案内が出ていましたが、富雄丸山遺跡の表記はありませんでした。


遺跡そのものに最も近い丸山橋バス停を通過。


若草台中央バス停に到着した臨時便。


現地にはこのような案内が出ているので迷うことはないはず。現地周辺は宅地化されており、駐車場の用意はないため、公共交通機関で訪れてください。


案内に従って移動。


グラウンドが富雄丸山古墳現地公開会場入口となっています。


出土した鼉⿓⽂盾形銅鏡と蛇行剣は保存作業中のため、現地での展示はありません。代わりに、文様がわかるような写真やサンプルが現地に置かれていました。


これは銅鏡の透過X線写真。


テントには実寸大サンプルが置かれていました。長さは約64cm、幅は約31cmで、木棺のふたの被覆粘土に合わせるように斜めに立てかけられていたとのこと。背面中央には鈕(ちゅう:突起のこと)があり、その上下には倭鏡でみられる鼉⿓⽂の文様があります。このほかに鋸歯文(きょしもん)を中心とした文様もあるのが、銅鏡として類例のないものだとのこと。


同じく、実寸大の蛇行剣サンプル。長さは約267cmで、長机2つ分。刃の幅は約6cm。鞘は部分的に残存していて、復元すると幅は9cm。このほか、柄頭・柄口・鞘口・鞘尻に有機質の装具痕跡が残存していたそうです。


埴輪はこの古墳で出土した実物です。


展示物を見たあと、グラウンドの奥からいよいよ現地に進みます。


階段を降りて、ぐるっと回り込むように移動。


この、回り込んで移動している小高い丘が古墳そのものです。


富雄丸山古墳の築造は4世紀後半(古墳時代前期後半)と推定されており、1972年の発掘調査では「直径86mの円墳」と報告されましたが、その後、1982年の追加調査で「北東部に造り出しが取りつく直径102m前後の円墳」の可能性が指摘され、2017年に行った航空レーザーを用いた三次元測量で直径110m前後の円墳だと判明。埼玉県の丸箸山古墳(直径105m)を上回る、国内最大の円墳であることがわかりました。


古墳の北側は丸山第1号街区公園となっていて、ブランコなどが設置されています。


そこをさらに回り込んで、今度は登っていきます。


入口に到着しました。


富雄丸山遺跡全景。正面の雪をかぶっているあたりは古墳本体で、写真手前、ロープが何本も奥に向かって張られている坂になっているあたりが「造り出し」と呼ばれる張り出した部分です。


見学ルートはまず左手側の林の中の発掘区を経由して丘の頂上に登り、その後、下ってきて銅鏡と剣が見つかった埋葬施設を見るという流れ。


林の中にあるY発掘区では、古墳の外縁である墳丘裾が確認できます。これはおおむね想定通りの位置で見つかったものだとのこと。


Y発掘区の山側にあるX発掘区には埴輪列があり、均等に並べられた埴輪の姿を現地で見られました。これは1段目の埴輪列で、上方にちらっと見えているW発掘区のあたりに2段目の埴輪列があると考えられたものの、崩れて埴輪列は確認できなかったとのこと。


X発掘区から先に進んだところにあるU発掘区では「鰭(ひれ)付円筒埴輪」や「湧水施設型埴輪」が出土しました。


そして一気に登って、丘の頂上へ。


墳頂部はA発掘区。壇状の遺構があるかどうか確認するために発掘が行われましたが、遺構は確認されませんでした。


頂上から北東側を向いたところ。遠くを走る高架道路は第二阪奈道路です。


ここからは下っていきます。


下りきる前の目玉がF発掘区。長さ約7.4m・幅約3m・深さ約1mの墓坑内にあったのが長さ約6.4m・幅約1.2mの粘土槨(埋葬施設)。粘土槨の内部には割竹型木棺が残存しており、棺蓋を覆う被覆粘土内に銅鏡と剣が副葬されていたとのこと。


銅鏡と剣がどこから見つかったか、わかりやすく示されています。なお、木棺は再現物ではなく、出土したものがそのまま公開されています。


しっかりとした粘土槨。


墓坑に落ちないよう設置された単管バリケードは発掘現場用のものらしく、キャラクターも発掘仕様でした。


なお、富雄丸山古墳の北東側隣接地には富雄丸山2号墳・3号墳があります。


これが2号墳。


横穴式石室がはっきりと確認できます。時期としては6世紀後半のものだとのこと。


そこから、発掘痕が東へと延びています。


これが3号墳。ただ、3号墳には埋葬施設が見当たらず、また2号墳との間を分ける溝も見当たらないことから、2号墳・3号墳で1つの前方後円墳を形成している可能性があるそうです。


見学後は同じ道を戻ってもOKですが、丸山第1号街区公園の方から登ってきた道をそのまま古墳に入らず進んでいけば、階段を降りて、南側の道路に抜けられます。


若草台中央のバス停に戻ってきました。


帰りは、ちょうど富雄駅行きのバスが来たため、富雄駅に向かいました。


富雄駅までの運賃は370円でした。


なお、富雄丸山古墳についての詳しい情報はYouTube・奈良市動画チャンネルで公開されています。

日本最大の円墳 富雄丸山古墳【4K】 - YouTube


過去には、「親子考古学体験」として、発掘体験ができたそうです。

親子考古学体験―富雄丸山古墳の発掘―の参加者募集中!
調査が進む富雄丸山古墳で、現地学習と古墳の発掘を体験できます。
詳細は→https://t.co/pv9xQwrMl0 pic.twitter.com/qR1W5IrWoP

— 奈良市 埋蔵文化財調査センター (@naracity_maibun)

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in 取材,   乗り物,   動画, Posted by logc_nt

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