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駅の発車標型オブジェクトで3000万稼いだスタートアップはなぜ経営破綻してしまったのか


鉄道駅などに掲げられた電光掲示板「発車標」の模型を作り上げ、実際の発車時刻やカスタムテキストを表示できるようにして販売したスタートアップ「NYCTrainSign」は、製品の公開からほどなく倒産していまいました。マーケティングには成功し、ある時点で25万ドル(約3300万円)の売上を達成したにもかかわらず消えていった原因について、ブロガーのケビン・チャン氏が解説しました。

Taking over a Dead IoT Company
https://blog.kchung.co/taking-over-a-dead-iot-company/

2017年当時、NYCTrainSignはスタートアップとして発車標のレプリカを製造・販売していました。「文字を表示する置物」としてカフェやピザ屋に売り込まれていましたが、2018年に経営破綻し、一部の購入者に製品が届かないなどの問題が発生しました。


会社がなぜ倒産したのかを調査していたチャン氏は、2021年に偶然にもネット上でNYCTrainSignの発車標を売っている人を見つけ、実物を手に入れることに成功します。チャン氏はその発車標を調べ上げ、理由を探ることにしました。

発車標の内部にはLEDパネルやRaspberry Pi、microSDカードなどが詰め込まれていましたが、一部の部品はネジ止めが緩く、動かしすぎると外れるなどの問題がありました。


使われた部品の価格も相当高く、すべてをまとめると150ドル(約2万円)になるそうです。一般的に製品の小売価格は部品の4倍の価格になることを考えると、販売価格は600ドル(約8万円)が妥当。実際、公式サイトでは599ドルで販売されていたようですが、ある記事では半分の価格で売られていることが報じられ、実際に手にした人の中にはもっと低い価格しか支払っていない人もいました。値下げがあったのか割引きがあったのかは不明ですが、チャン氏は「それにしても、ただのサインに600ドルは高すぎます」とコメントしました。

部品ひとつとっても、例えば「HAT」と呼ばれる部品は25ドル(約3300円)する物が選ばれていましたが、2.1ドル(約300円)の部品で代用可能でした。また、いい物を使っているはずなのになぜかライトがちらつくという問題もあったそうです。


サーバーと通信して情報を取得するために書かれたコードを調べたチャン氏は、さまざまな品質の問題があることに気づきました。コードエディタの設定ミスによるタブとスペースの混在が頻発し、gitの履歴がまるごとmicroSDカードに保存されており、コードの再利用がほとんどないなど、素人同然の出来だったとのこと。

チャン氏はNYCTrainSignが抱えた問題について、「部品のコストが高いことと、多くの製品を割り引いて販売したことにあると思います。ベータ版とはいえ、ベンチャーキャピタルの支援もなく、150ドルで作った製品を117ドルで売るというのは本当に無理だと思うんです。300ドルでも安すぎるのです。この看板は、おそらく最初から600ドルで売るべきだったのです」と指摘しました。

また、在庫管理については「マーケティングが成功して製品への需要はかなりあったようですが、製品はすべて手作業で作られていたため、低価格で販売することは不可能でした。在庫は十分に確保できていたとは思えず、部品の調達にかかるリードタイムも影響していたと思われます。そのような状況でも注文を受け続けたのは、おそらく自転車操業のように、値引きされた注文をこなすための資金を得ようとしたからでしょう」と推測しています。

それでは、結局NYCTrainSignはどうすればいいのかについてチャン氏は「私の意見では、最初から部品コストを下げるか、何らかの定期的な収益を得るためのより良い戦略がなければこの会社はすぐに維持できなくなったでしょうし、実際にそうなっていました。結局のところ、NYCTrainSignのチームは自分たちの製品で何をするかについて明確な計画を持っておらず、すべてのステップで何をするかについて慎重に考えることなく、会社作りに飛び込んだ人々のように思われるのです。これでは、ソフトウェア会社ならまだしもハードウェアの世界ではなかなかうまくはいきません」と結論しました。

なお、発車標と通信するドメインが購入可能な状態であったため、チャン氏はそれを購入し、好きな発車標に好きな文字を表示できるようにシステムを書き換えたそうです。チャン氏は「私はNYCTrainSignの基盤となる署名コードとエクスプロイトコードを含む再構築したAPIサーバをオープンソース化する予定です。ホスティングコストが安く抑えられる限りサーバーを維持するつもりなので、NYCTrainSignの発車標をお持ちの方は、私が作ったサイトで看板をリモートで動かしてみてください」と話しました。

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in ハードウェア, Posted by log1p_kr

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