ハードウェア

チップレットに進化した第4世代「Xeon SP」がIntelの未来にとって大きな重要な役割を担うとの指摘


現地時間の2023年1月10日、Intelが「Sapphire Rapids」というコードネームで開発を続けてきたデータセンター向けCPUを第4世代Xeon スケーラブル・プロセッサー(Xeon SP)として提供開始したと発表しました。この第4世代Xeon SPは長年にわたり開発が遅れてきたことでも有名です。そんな第4世代Xeon SPは、Intelの将来を担う重要なチップであるとThe New York Timesが指摘しています。

Inside Intel’s Delays in Delivering a Crucial New Microprocessor - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/01/10/technology/intel-sapphire-rapids-microprocessor.html

Intel Launches Sapphire Rapids Fourth-Gen Xeon CPUs and Ponte Vecchio Max GPU Series | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/intel-launches-sapphire-rapids-fourth-gen-xeon-cpus-and-ponte-vecchio-max-gpu-series

第4世代Xeon SPは新しくチップレット技術を採用しており、XCC(eXtreme Core Count)とMCC(Medium Core Count)という2つのパッケージが用意されています。XCCは15コアCPUのダイを4つまとめたチップレットとなっており、1パッケージで最大60コアを実現可能。一方で、MCCは最大32コアのモノリシックダイです。


XCCでは4つのCPUダイがIntel独自開発のEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)と呼ばれるブリッジチップで接続されており、これにより複数チップを1パッケージ上に混載することが可能になっています。各CPUダイには15コアCPU、メモリコントローラ、UPIコントローラ、PCI Expressコントローラ、QAT(QuickAssist Technology)、DLB(Dynamic Load Balancer)、DSA(Data Streaming Accelerator)、IAA(In-Memory Analytics Accelerator)という4つのハードウェアアクセラレータを搭載しているため、1パッケージでそれぞれが4つずつ実装されることとなります。

これにより、第4世代Xeon SPは第3世代Xeon SPと比べて汎用演算の電力効率が2.9倍に、AMXを利用したAI推論を演算する際には約10倍の性能を実現することが可能になっているとのことです。


2022年5月、Intelのエンジニアチームはデータセンター向けの高い演算処理能力を持った強力な新型マイクロプロセッサーとして5年以上開発を続けてきた「Sapphire Rapids」の製品版がようやく完成したと確信していました。しかし、「Sapphire Rapids」について話し合う定例会議の中で、重大な技術的欠陥が存在することが明らかになります。この問題は非常に厄介であったため、「Sapphire Rapids」のリリース時期を延期せざるを得なくなったそうです。

IntelのデータセンターおよびAIグループのゼネラルマネージャーを務めるサンドラ・リベラ氏は当時を振り返り、「我々はかなり落ち込みました」「苦渋の決断でした」とコメントしています。なお、Sapphire Rapidsは2015年に少人数のエンジニアチーム内での議論から開発がスタートしたもの。AMDなどの競合他社は複数のチップをひとつのパッケージにまとめるチップレット技術を導入していましたが、Intelにとってはチップ設計にチップレット要素を盛り込むことはSapphire Rapidsが初でした。Intelでチップアーキテクトに携わるシュロミット・ワイス氏は、Sapphire Rapidsの開発について「多くの要素の相互作用が存在するために非常に複雑です。そして複雑であればあるほど、問題が発生しやすくなります」とコメントしています。

IntelがXeon CPU「Sapphire Rapids」の生産を2022年第1四半期に延期 - GIGAZINE

by Michael Wyszomierski

1970年代以降、Intelはほとんどの電子機器の心臓部となる小さなシリコンチップの製造・開発でトップに立ち続けてきました。しかし、「近年のIntelはチップの演算速度を決める製造技術において長年築き上げてきたリードを失いつつある」とThe New York Timesは指摘しています。

2021年にIntelのCEOに就任したパトリック・ゲルシンガー氏は、Intelが長年有していた製造上の優位を回復するために同社のCEOに就任した人物。同氏はアメリカに新しい半導体製造工場を建設すると宣言し、アメリカで可決された「台湾への半導体製造依存度を下げるための法案」を成立させるために尽力した人物でもあります。

そのため、The New York Timesは「Sapphire Rapids(第4世代Xeon SP)の生産は、Intelが将来リリースするチップを予定通りに提供できるかどうかを証明する絶好の機会となります。それだけにとどまらず、Intelの技術を利用したオンラインサービスを利用する何百万人ものユーザーはもちろんのこと、コンピューターメーカーやクラウドサービスプロバイダーにまで影響を与える可能性があります」と指摘しています。

実際、レノボのサーバー販売担当ヴァイスプレジデントを務めるカーク・スカウゲン氏は、「我々が欲しいのは、予測可能な安定した動きです」「Sapphire RapidsはIntelの新たな旅の始まりです」とコメントし、安定したチップの供給がメーカー側にとっていかに重要かを証言しています。なお、レノボは第4世代Xeon SPをベースに25もの新システムを計画しているとのことで、記事作成時点ではIntelの新しい第4世代Xeon SPに大きな期待を抱いている模様。

The New York Timesは「Intelへのプレッシャーは大きいです。パソコンに使用されるチップの需要は明らかに減っており、Intelの最も収益性の高い事業であるサーバー用チップ市場においても、他社との厳しい競争にさらされています。そしてこれらの問題により、ゲルシンガー氏のCEO就任以降、Intelの市場価値は1200億ドル(約15兆9000億円)以上も急落しています」と指摘。一方、IntelのゲルシンガーCEOは第4世代Xeon SPについて「Sapphire Rapidsはリリースが遅れたものの、ヒットの素質があります」とコメントしています。

ゲルシンガーCEOが2021年にSapphire Rapids開発部門のトップに抜擢したリベラ氏は、Sapphire Rapidsの開発の遅れについて「IntelはSapphire Rapidsの開発にイノベーションを詰め込み過ぎた」と考えているそうで、「より野心的でない製品をいち早くリリースすべきだった」とコメントしています。また、コンピューターシミュレーションを用いた「設計」と「テスト」により多くの時間を割くべきだったともコメント。そうすることで、サンプルチップを製造する前に設計上のバグを発見することが可能となり、コスト削減にもつながったはずだと反省しています。

なお、リベラ氏は以前は上記のような教訓を踏まえたチップ開発が上手く行えていたはずであるとコメント。Sapphire Rapidsの開発では遅れが生じたものの、今回の教訓を生かすことで、今後のチップ開発ではよりスムーズな開発が行えるようになるはずだと述べました。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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