サイエンス

認知症が疑われる危険な物忘れの段階はどこからなのか?


「携帯や鍵をどこに置いたのか忘れた」「昨日の夕飯を忘れた」といった物忘れは誰にでも起こりうることです。しかし、私たちは時折「この物忘れは正常なのか」や「認知症の兆候なのか」と疑問に思うことがあります。こうした記憶に関する問題をボンド大学オリバー・バウマン氏とシンディ・ジョーンズ氏が解説しています。

How much memory loss is normal with ageing?
https://theconversation.com/how-much-memory-loss-is-normal-with-ageing-193217

人間の記憶に関するシステムは、基本的にある程度の物忘れをします。もしも記憶を保持し続けた場合、新陳代謝が悪くなるだけでなく、必要な記憶を思い出すことが遅くなったり、そもそも思い出せなくなったりするそうです。


しかし、どの記憶を保持するのかは人間の脳が自動的に判断するため、最新のニュースなどの社会的な情報は保持されやすい一方で、数字などの抽象的な情報は保持されにくいとされており、「多少の物忘れは正常な反応です」とバウマン氏らは述べています。

物忘れが問題となる段階は、物忘れが日常生活に影響を及ぼし始めた時とされています。バウマン氏らは例として、運転をする際に「自分が何故運転をしているのか」や「目的地はどこか」、もしくは運転の方法さえ忘れてしまった場合、早急に検査を行う必要があると指摘しています。


加齢に伴う物忘れの増加と認知症との間は「軽度認知障害」と呼ばれています。

軽度認知障害のある人は、認知症が発症するリスクが通常の約3~5倍に上昇することがこれまでの研究で報告されており、軽度認知障害のある人の約10~15%が認知症を発症すると調査されています。

また、軽度認知障害のある人は、記憶や言語、思考、意志決定能力が次第に低下すると考えられており、もしも軽度認知障害と診断された場合、治療による改善の可能性を探り、今後の計画を立てる必要があります。

道に迷う機会が明確に増加することは、認知症の一つであるアルツハイマー病の兆候であると考えられています。核磁気共鳴画像法(MRI)を用いた研究では、空間認知に関する記憶を支える領域がアルツハイマー病の影響を最初に受けるとされています。


バウマン氏らは認知症をできるだけ早期に発見するために、道順を見つける能力を直接計測する代わりに、提示して記憶した景色を判断する5分間のテストを考案しました。このテストは健康な若者において、道順を見つける能力の測定に有効でした。そのため、現在は高齢者におけるテストの有効性を検討しているとのこと。

日常的な物忘れのすべてが加齢や認知症に伴うものではなく、多くの場合は疲労や不安、注意力の散漫などが影響しており、過度に心配する必要はありません。しかし、物忘れが顕著になった場合には、医師の診察を受けることが推奨されています。

アルツハイマー病の治療法は現段階では確立していませんが、アルツハイマー病の早期の発見で将来に向けた計画を立て、患者個人に合った生活の検討を行うことができるとされています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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