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イーロン・マスクのTwitter運営はシェイクスピアも真っ青の悲劇であり大惨事に近いものだという指摘

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テスラなどを創業した実業家のイーロン・マスク氏は2022年10月末に大手SNSのTwitterを買収してCEOに就任しましたが、買収直後に前CEOやCFOを解雇し、加えて従業員の約半数を解雇するなど、強権とも取れる統治を行いTwitterの大規模な改革を進めています。Twitterの買収から今日に至るまでのマスク氏の振る舞いについて、数々の従業員がBloombergのインタビューに答えています。

Elon Musk Twitter Ownership Full of Firings, Ad Cuts, Chaos - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2022-12-14/elon-musk-twitter-ownership-full-of-firings-ad-cuts-chaos

Twitterはマスク氏が管理する新体制に突入して2カ月が経過しましたが、完全にマスク氏の気まぐれで運営され続けているとBloombergは指摘します。7カ月にも及ぶ法廷闘争の結果、マスク氏は440億ドル(約5兆9600億円)という高値でTwitterを買収することになりますが、従業員の大量解雇、ポリシーやサービスの変更などを行い、Twitterを大きく改革しようとしています。

さらには「言論の自由」を掲げてかつて差別発言などで凍結されていたTwitterアカウントを復活させたほか、かつてのTwitterが実施していたとされる政治家との癒着の証拠を記した「Twitterファイル」を公開し、「これは文明の未来を賭けた戦いだ」とツイートしてTwitterの過去の闇を暴こうと躍起になっています。Bloombergはこうしたマスク氏の行動について「これほどシェイクスピア的な物語があったでしょうか」と評価。「象徴的な破壊者でありながら、時折リアのような狂気の発作に襲われています。帝国を拡大する唯一の障害はマスク氏自身の際立った性格です。テスラやSpaceXの創設者である彼は、低排出ガス輸送や宇宙開発への貢献に感謝し、社会から喝采を浴びているはずです。しかし、彼は自分の会社や訴訟費用、個人的な評判に影響があろうとも、ツイートから得られる世間からの注目にはあらがえないのです」とBloombergは指摘しました。

マスク氏によるTwitter買収以降、なりすましアカウントが増加し、Appleのフィル・シラー氏など著名人がプラットフォームを離れ、広告主向けツールへのアクセスが激減するなどTwitterの状況は大惨事に近いものとなっています。Bloombergがこうした状況について数十人の元Twitter社員にインタビューを行ったところ、さまざまな回答が得られたといいます。


従業員の中にはマスク氏のTwitterが抱える問題を把握しようとする真面目な姿勢に感銘を受けた者もいた一方で、公の振る舞いに反感を覚えた者もいたそうです。そもそもマスク氏のCEO就任は、マスク氏が便所のシンクを持ってTwitter本社に登場するというジョークから始まっていたのです。

明らかにマスク氏のフォロワー向けに画策された登場シーンでしたが、レイオフの訪れを予期していた従業員は笑うこともできませんでした。マスク氏のジョークから間もなく買収は完了し、Twitterの首脳陣を次々と解雇していきます。


買収から2日目、マスク氏はTwitterのエンジニアを対象にコードレビューを実施し、同時にテスラから呼び寄せた数十人のエンジニアに大規模なダウンサイジングの下地作りを行わせました。コードレビューの評価は実施から数時間後に発表されたとのことですが、その評価が実際に解雇にどのようにつながるのかは従業員には分かりませんでした。

買収から6日目には、マスク氏の人員削減計画の深刻さが明らかになり始めます。Twitterの経営陣の中で最後に残ったメンバーであり、従業員に優しい企業文化に最も深く関わっているレスリー・バーランド最高マーケティング責任者が解雇されたのです。すぐに、レイオフは管理職が当初予想していたよりもはるかに大規模になることが伝わり始め、マスク氏はその週のうちにTwitterにいた約7500人以上の従業員のうち50%を解雇する予定であることが明らかになります。8日目の夜遅くから9日目の早朝にかけて、何百人もの従業員がソーシャルネットワークのライブオーディオ放送ツールであるSpacesに集まり、交代で会社でのエピソードや次に来るかもしれないことを悲しんでいたそうです。

しかしながら、マスク氏にとってTwitter従業員の半分を削減することは避けられないビジネス上の決定でした。実際マスク氏は「Twitterの人員削減については、残念ながら1日400万ドル(約5億4200万円)以上の損失を出している以上、選択の余地はありません」とツイートしています。多くの社員にとって、レイオフはTwitterの終わりを意味し、良くも悪くもTwitterという製品のアイデンティティの一部となっていた企業文化の死を意味しました。最終的に従業員は2700人にまで激減したといわれていますが、それでも変わらずTwitterのサービスは稼働し続けています。大規模な人員削減があったにもかかわらずTwitterが稼働し続ける理由については、元システムエンジニアが詳しく解説しています。

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買収から14日目にはTwitterのリモートワークポリシーを廃止し、18日目にはTwitterや社内Slackでマスク氏を批判した従業員を解雇し始めます。辞職する幹部級職員も相次ぎ、一部はマスク氏に悪態をつき、一部はむしろTwitterを離れられることを喜んだといいます。しかしながら、マスク氏が求める野心的な働き方「ハードコア」に同意したにもかかわらず解雇されてしまったうえに同意しなかった人よりも退職金が低かったと報告する従業員も現れ、その政治体制の曖昧さが非難されています。

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従業員への求心力が低下するのと並行して、マスク氏は売上の90%を占める広告主への求心機会も逃していきます。特にアメリカ合衆国下院議長を務めるナンシー・ペロシ氏の自宅にハンマーを持った男が押し入った事件についてマスク氏が根拠のない陰謀説を共有したことや、ヘイトスピーチが急増したという見方をされていることが原因だとBloombergは指摘し、これらの事案を受けて広告大手各社が一斉に広告の出稿を止めるなどの事態となっています。

買収から23日目にはドナルド・トランプ元アメリカ大統領のTwitterアカウントを復活させるかどうかについてフォロワーを対象に投票を行い翌日に復活させました。35日目には、「テスラ株を買えばヘイトスピーチを信じていることになると考える活動家がいる」という報道に対し「キャンセルカルチャーはキャンセルされるべきだ」とツイートします。

37日目には第46代アメリカ大統領のジョー・バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏の汚職疑惑を報じた記事をかつてのTwitterが隠していたという疑いについて、マスク氏は約10万人の聴衆を前にTwitter Spacesで暴露し始めました。さらに、一部のユーザーをひそかに非表示にする「シャドウバン」をかつてTwitterが実行していたとして、それら情報についてまとめたTwitterファイル第2弾も公開するに至っています。


これまで、マスク氏はTwitterの未来について多くのドラマを生み出してきたため、Twitterの信奉者たちは次に何が起こるかを見るために釘付けになっているとBloombergは指摘。マスク氏本人は「ヘイトスピーチやボット・荒らし活動を約3分の1に減らし、一方で日々の利用者を大幅に増やしているので、Twitterは実際にうまくいっています」と述べていますが、マスク氏が買収のために過剰に支払った借入金や減少した広告収入が今後の課題となると見られます。

マスク氏は「不況下で広告収入の減少を補うには購読料が重要です」とし、改革を加えたサブスクリプションサービス「Twitter Blue」や、企業向けの「Blue for Buisiness」を発表しています。こうした購読サービスで巻き返しを図ろうとしているマスク氏ですが、一部の従業員は「計画は首尾一貫したものではなく、マスク氏は手探りでやっているよう見えます」と述べ、パフォーマンスのようなものだとも指摘しました。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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