サイエンス

光の反射率約98%の「世界一白い塗料」をかつての半分以下の薄さで実現、飛行機や自動車の塗装へ利用可能なレベルに


パデュー大学機械工学部のシュウリン・ルァン教授の研究チームが開発する、光の反射率98.1%という「世界一白い塗料」を、反射率はほぼ同じでありながら、従来の半分以上の薄さで塗ることができる新塗料を開発したと発表しました。

Thin layer lightweight and ultrawhite hexagonal boron nitride nanoporous paints for daytime radiative cooling - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2022.101058

World’s whitest paint now thinner than ever, ideal for vehicles - Purdue University News
https://www.purdue.edu/newsroom/releases/2022/Q4/worlds-whitest-paint-now-thinner-than-ever,-ideal-for-vehicles.html

ルァン教授の研究チームが開発した世界一白い塗料がどういうものなのかについては、以下の記事を読むとよくわかります。

光の98%以上を反射する「最も白い塗料」が開発される、白すぎて塗った物体が冷える - GIGAZINE


「白い」ということは「当たった可視光線の波長をほとんど反射している」ことを意味します。つまり、光の反射率が高ければ高いほど、その物質は白いということになります。そして、光の反射率が高ければ、光の吸収率が低くなるので、光によって温まりにくくなります。例えば、ビルの屋上を白く塗る方が、黒く塗るよりも光の吸収率がはるかに低いので、ビル内部も温められにくくなり、冷房などの節約につながることが期待できます。

ルァン教授の研究チームが開発した塗料は硫酸バリウムのナノ粒子が用いられており、太陽光を98.1%反射するとのこと。しかし、この塗料を屋上に塗り、周辺温度よりも4.5℃以上低い温度を保つには、少なくとも塗料を屋上全体に400μm(2万5000分の1m)の厚さで塗る必要があるとのこと。ビルのように動かない物体に塗る場合は問題ありませんが、宇宙船や飛行機、自動車などに塗る場合はもっと薄く軽くする必要があるそうです。


ルァン教授は「私は宇宙船の製造企業から建築家、被服メーカーまで、ありとあらゆる人から連絡を受けました。みんなが、『どこで買えるのか?』『もっと薄く塗ることはできないのか?』という2つの質問をぶつけてくるんです」と述べています。

そこで、ルァン教授の研究チームは塗料の改良を重ね、六方晶窒化ホウ素を顔料に用いた新しい塗料を開発したとのこと。この新しい塗料はわずか150μmの塗膜で、太陽光反射率97.9%を記録しました。


さらに、この新塗料は空気による隙間がうまれ、ナノスケールで見ると多孔質になっているのが大きな特徴。そのため、硫酸バリウムを使った塗料とほぼ同等の反射率を実現しているにもかかわらず、同じ体積当たりの重量は80%も軽いそうです。


パデュー大学機械工学部のジョージ・チュウ教授は「新しい塗料の軽さは、あらゆる種類での使用を可能にします。この塗料は飛行機や自動車、列車の外装を冷却する可能性を秘めています。例えば夏の暑い日に滑走路を走る飛行機は、内部を冷やすために冷房を強力にさせる必要があります。しかし、この塗料を使うと冷房で消費するエネルギーを大きく節約できるのです。また、可能な限りの軽量を求められる宇宙船にも応用可能です」と述べています。

なお、ルァン教授によれば、この新開発された塗料の商品化について、記事作成時点ですでに話し合いが進められているとのことです。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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