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チェス世界王者マグヌス・カールセンが2手目に投了、対戦相手ハンス・ニーマンの不正疑惑へ抗議か


歴代最高レーティング・2882を2度記録したチェスの世界王者マグヌス・カールセン氏が、2022年9月19日(月)に行われたハンス・ニーマン氏との対戦において、ニーマン氏の2手目のあとに投了しました。カールセン氏は2022年9月に行われた大会でもニーマン氏と対戦して敗北、大会を棄権しています。この棄権時のメッセージから、カールセン氏はニーマン氏に対して何らかの不正(チート)行為の疑いを抱いていると考えられており、今回の投了も同じく抗議ではないかと受け取られています。

World Champion Resigns After 1 Move Vs. Niemann, Erigaisi Leads - Chess.com
https://www.chess.com/news/view/2022-julius-baer-generation-cup-day-2

Magnus Carlsen resigns from rematch with Hans Niemann after opening move | Magnus Carlsen | The Guardian
https://www.theguardian.com/sport/2022/sep/19/chess-magnus-carlsen-resigns-from-online-match-hans-niemann

2022年9月18日(日)から始まった「Julius Baer Generation Cup」の2日目、マグヌス・カールセン氏とハンス・ニーマン氏との対戦カードは、白(先手)がニーマン氏、黒(後手)がカールセン氏で行われました。対戦の様子はchess24.comが中継していて、初手から投了後の混乱までをまとめた映像が公開されています。

Another shocker as @MagnusCarlsen simply resigns on move 2 vs. @HansMokeNiemann! https://t.co/2fpx8lplTI#ChessChamps #JuliusBaerGenerationCup pic.twitter.com/5PO7kdZFOZ

— chess24.com (@chess24com)


白の初手はd4(キングの前のポーンを2つ前へ進める)


黒の初手はNf6(左のナイトを右前方へ移動)で、インディアンシステムのオープニングへ。


白2手目はc4(左のビショップの前のポーンを2つ前へ進める)。カールセン氏側の時間が減り始めて、手番がカールセン氏に渡ったことがわかった1秒後……


カールセン氏の名前の横に「Lost」、ニーマン氏の名前の横に「Won」の表示。カールセン氏が投了したということです。指し手を読み上げていたMCの男性は「そして……何!?……いや……」と表情が消えます。


「どうしました?」と戸惑う、解説役のグランドマスター、タニア・サチデヴ氏。言葉を失ったあと、「マグヌス・カールセンは投了しました。(対戦用のTeamsから)帰っていきました。カメラも切りました。それがわかるすべてです」とコメント。


やがて、ニーマン氏も離脱してしまいました。


この「Julius Baer Generation Cup」の予選は16人の総当たりで、ROUND1から16までの16試合を4日間かけて消化し、上位8名が準々決勝に進出する仕組みになっています。2日目はROUND5から8の4試合が行われ、カールセン氏はROUND5でデビッド・ナバラ氏と引き分けたあと、ROUND6でニーマン氏との試合に臨み、投了(敗北)。ROUND7はレヴォン・アロニアン氏に勝利。ROUND8はラメーシバブ・プラグナマンダ氏と引き分けました。ここまでのカールセン氏の戦績は8戦4勝1敗3分けです。

ニーマン氏との試合後、別の対戦は普通に行っていることから、カールセン氏の突然の投了は体調不良などではなく、2022年9月2日から12日に行われたシンクフィールド・カップ2022での因縁によるものであるとみられています。

シンクフィールド・カップ2022のROUND3でカールセン氏はニーマン氏と対戦し、チェスでは有利な先手番ながら敗北。ROUND4以降を棄権し大会を去りました。

その際、「私はトーナメントを棄権しました。セントルイスチェスクラブでのプレイはいつも楽しんできましたし、また将来、戻ってきたいと思います」というコメントとともに、2014年3月当時チェルシーの監督を務めていたジョゼ・モウリーニョ監督が試合敗北後に審判のジャッジに不満を募らせながら記者会見で語った「話したくありません。もし話したら大変なことになります」という動画を引用しました。モウリーニョ監督は舌禍の多い人物として有名ですが、このときは記者からの厳しい質問に対して「話すと大変なことになる」と具体的な話をしませんでした。このことが、カールセン氏はニーマン氏の不正を疑っていることを匂わせるものだとして話題になりました。

I've withdrawn from the tournament. I've always enjoyed playing in the @STLChessClub, and hope to be back in the future https://t.co/YFSpl8er3u

— Magnus Carlsen (@MagnusCarlsen)


ニーマン氏自身は対戦後に行われたインタビューで、カールセン氏に勝てたことについて、直近でカールセン氏が「カタラン・オープニング」に持ち込むことが多かったことから研究をしていたと語っています。また、12歳のころや16歳のころに不正をした経験があると告白した上で、以後は対面でもオンラインでも不正はしていないと弁明しています。

Niemann: I Have NEVER Cheated Over The Board | Round 5 - YouTube


また、大会側からも、不正行為はなかったとの公式声明が発表されています。

Official statement from Chief Arbiter of the 2022 #SinquefieldCup, @ChrisBirdIA: pic.twitter.com/QQrEDamLbH

— Grand Chess Tour (@GrandChessTour)


以下は「Julius Baer Generation Cup」予選2日目のまとめ映像。1時間18分すぎからROUND6のカールセン氏vsニーマン氏戦の特集が始まり、1時間28分ぐらいから対戦が始まります。特集の中で複数のグランドマスターのコメントが紹介されています。

Champions Chess Tour: Julius Baer Generation Cup | Day 2 | Commentary: David, Jovanka, Kaja & Simon - YouTube


グランドマスターであるヒカル・ナカムラ氏は、カールセン氏はニーマン氏の不正行為を疑っているとコメント。加えて、ニーマン氏が人気チェスサイト「chess.com」で出入り禁止措置を受けたとも指摘しています。

一方、レヴォン・アロニアン氏は「若い人がとてもうまく指したときにボロクソに言われるのはよくあることだと思います。私の同僚たちは、みんな被害妄想気味なのです」とコメント。


同じくグランドマスターのファビアーノ・カルアナ氏は「私はハンス・ニーマンがこのトーナメントで不正をしたとは思いません。彼はやっていないと強く思います」とコメント。


解説者でグランドマスターのアレハンドロ・ラミレス氏も、ニーマン氏が不正をした可能性については否定的でした。


元世界王者でIBM製チェス専用コンピューター「ディープ・ブルー」との対戦でも知られるガルリ・カスパロフ氏は、カールセン氏の棄権を「大会に打撃を与えるもの」であり、公式な声明の発表が必要であると述べています。

Carlsen's withdrawal was a blow to chess fans, his colleagues at the tournament, the organizers, and, as the rumors and negative publicity swirl in a vacuum, to the game. The world title has its responsibilities, and a public statement is the least of them here.

— Garry Kasparov (@Kasparov63)


なお、カールセン氏とニーマン氏は2022年8月のFTXクリプトカップでも対戦があり、ニーマン氏が勝利していました。

・つづき
チェス世界王者マグヌス・カールセンが対戦相手の不正疑惑について「もっと多く不正している」と声明を発表 - GIGAZINE

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in 動画,   ゲーム, Posted by logc_nt

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