サイエンス

悪口は顔を殴られた時のような激しい脳活動を引き起こすと研究者


ひどい悪口を言われて、頭をガツンと殴られたような感覚に陥ったことがある人は多いはず。被験者に自分や他の人に対する侮辱の言葉を浴びせて脳の活動を記録する研究により、暴言を受けた人の脳は肯定的な言葉に接した時より激しい反応を見せることが分かりました。

Frontiers | Do People Get Used to Insulting Language?
https://doi.org/10.3389/fcomm.2022.910023

Spoken Insults Stir Up More Brain Activity Than Compliments And Linger For Longer, Too : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/spoken-insults-stir-up-more-brain-activity-than-compliments-and-linger-for-longer-too

オランダのユトレヒト大学とライデン大学の研究チームは、社会生活を送る中で日常的に見聞きしてしまう攻撃的な言葉が人にどのような影響を与えるのかを調べるべく、否定的な言葉や肯定的な言葉を示しつつ被験者の脳波を測定する実験を行いました。

実験には18~30歳、平均年齢20.9歳のオランダ人女性79人が参加し、各参加者には架空の男性3人の言葉だという想定で3種類のフレーズが提示されました。1つ目は「リンダは最悪」「ポーラは嘘つき」といった侮辱で、2つ目は「リンダは素晴らしい」「ポーラは天使」などの賛辞です。そして、3つ目は「リンダはオランダ人」「ポーラは学生」といった中立的な文言でした。


研究チームは、侮辱的な言葉に繰り返し接してしまう状況を再現するため、参加者の名前を使った侮辱と他人の名前を使った侮辱をそれぞれ90回繰り返してその際の脳波を測定し、同様に繰り返した賛辞や中立的な言葉に対する反応と比較しました。なお、参加者らはインフォームドコンセントとして事前に実験の内容を知らされていたほか、いつでもギブアップできるようになっていたとのこと。

この実験の結果、自分に向けられたものか他人に向けられたものかにかかわらず、侮辱の言葉は褒め言葉などより迅速かつ大きな反応を引き起こし、その影響は時間がたっても弱まることなく実験の間ずっと継続したことが確かめられました。

この結果について研究チームは、「侮辱は『言葉のミニ平手打ち』であり、強固かつ繰り返しの影響を受けない形で注意を引きつけ続けることが示されました」と述べています。


今回の研究は、侮辱や賛辞を集中的に聞かされるというシチュエーションが実生活とは大きく異なるほか、参加者が女性だけである点や「ビッチ」など性別によって受け取り方が異なる侮辱語があった点などにも注意が必要と研究チームは指摘しています。

その上で、研究チームは論文の中で「侮辱は、人を傷つけてはいけないという普遍的な道徳の要請に反するものです」「社会の一員にとって、顔を平手打ちされたり、誰かがそのような目に遭ったりするのを見ることは非常に特異的な出来事であり、言葉による侮辱もまた同様です」と述べて、侮辱の悪影響がはっきりと科学的に示されたことを強調しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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