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干ばつで水位が下がった川底から現れ飢餓を警告する「ハンガーストーン」とは?


昔の人々が災害や疫病などに見舞われた時、後世の人々に向けた警告を碑文などに残すことがあり、日本でも津波を警告する碑文などが東北地方の沿岸部などに残されています。2022年の記録的な猛暑で水不足が深刻化しているヨーロッパでは、昔の人々が川底に残した飢餓を警告する碑文「ハンガーストーン」が話題となっています。

Hunger stone - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Hunger_stone

ハンガーストーンとは中世ヨーロッパで一般的だった水文学的遺物で、干ばつが起きた際に警告文を刻んだ石を川底へ埋め込み、将来の干ばつでこの石が見えた時に警告を発するというもの。主にドイツやその他ヨーロッパ諸国のドイツ人入植者によって作られており、中には20世紀以降に作られたものも存在しています。

実際のハンガーストーンがどのようなものかは、以下の埋め込みツイートの写真を見るとわかります。

Huiveringwekkend. Door de droogte in Europese rivieren komen er Hungersteine bovendrijven. Macabere waarschuwingen van onze 15e eeuwse voorouders over hongersnood.

'Wenn du mich siehst, dann weine'https://t.co/kbo03caaZX pic.twitter.com/CMTcMvfQQp

— Olaf Koens (@obk)


中でもチェコ北部を流れるエルベ川に埋められた1616年のハンガーストーンには、「Wenn du mich siehst, dann weine(私を見たら、泣いてください)」と刻まれているとのこと。

The recent droughts in Europe once again made visible the "Hunger Stones" in some Czech and German rivers. These stones were used to mark desperately low river levels that would forecast famines.

This one, in the Elbe river, is from 1616 and says: "If you see me, cry" pic.twitter.com/uJTapWXN5y

— Shoko Asahara Appreciation Consortium ???????? (@Citizen09372364)


2022年にヨーロッパを記録的な熱波が襲うと、インターネット上を「飢餓を警告するハンガーストーンが干上がった川底から現れた」というニュースが飛び交いました。経済メディアのBusiness Insiderやアメリカの日刊紙であるマイアミ・ヘラルド、イギリス紙のデイリー・テレグラフ、オンライン新聞The Independentなど、さまざまなメディアもこの一件を報じています。

ところが、インターネット上のツイートやニュースは、ほとんどが2018年の干ばつハンガーストーンが現れた際のニュースを焼き増ししたものとのことで、実際に2022年の干ばつでハンガーストーンが現れたかどうかは曖昧だと指摘されています。

'If You See Me, Cry': Hunger Stones in Some Czech And German Rivers - Truth or Fiction?
https://www.truthorfiction.com/if-you-see-me-cry-hunger-stones-in-some-czech-and-german-rivers/

Are 'Hunger Stones' Emerging Along Europe's Rivers Due to 2022 Drought? | Snopes.com
https://www.snopes.com/news/2022/08/18/hunger-stones-drought/

When context is key: “Hunger stones” go viral, but news first broke in 2018 | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/08/viral-hunger-stones-tweet-left-out-context-original-story-was-from-2018/

ファクトチェックサイトのTruth or Fictionは、ニュースの発端となったツイートの添付画像は2019年の時点で公開済みであり、2022年に新しく公開されたものではなかったと指摘。一方、2022年6月以降に「新たにハンガーストーンが発見された」ことを示すニュースやコンテンツは見つからなかったと主張しています。なお、20世紀前半にエルベ川の支流でダムが建設されたことにより、あるハンガーストーンは1年の3分の1ほどの期間見ることができるそうです。

Truth or Fictionの寄稿者であるKim LaCapria氏は、発端となったツイートは2022年8月10日に海外掲示板のRedditに投稿された「今日、中央ヨーロッパにはハンガーストーンというものがあるのを知りました。川底にある石に刻まれた文字は流量が少ない時にだけ見えて、飢餓の原因となる干ばつを警告するものだそうです」というコメントにインスピレーションを受けたのではないかと述べています。


インターネット上でハンガーストーンの話題が広まった背景には、アメリカ・ネバダ州ミード湖の川底に沈められた遺体が干ばつによって相次いで発見されたニュースや、川底に沈んでいた第二次世界大戦時の不発弾が干ばつで見つかったニュースなどの影響があるとみられています。

2022年にハンガーストーンが発見されたというニュースの真偽は不確かですが、ヨーロッパがハンガーストーンが露出してもおかしくないほどの干ばつに見舞われているのは事実です。欧州委員会共同研究センターは8月6日の記者会見で、今回の干ばつが過去500年で最悪のものになる可能性があると主張。上級研究員のAndrea Toreti氏は、「私の経験に基づけば、今回の干ばつは2018年よりさらに深刻だと思います」と述べました。


なお、ロイター通信は2022年8月17日、ドイツのライン川で撮影されたハンガーストーンの映像を公開しました。しかし、少なくとも映像に映っているハンガーストーンに刻まれた年代は古くても1947年で、ほとんどが21世紀に入ってからのものとなっており、中には2018年の干ばつ時に作られたものもあります。

Germany's drought uncovers ominous 'hunger stones' | Reuters Video
https://www.reuters.com/video/watch/germanys-drought-uncovers-ominous-hunger-id750726709

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in メモ, Posted by log1h_ik

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