サイエンス

鶏に新型コロナの抗体入り卵を産ませることに成功


カリフォルニア大学デービス校の研究者が、鶏に「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質に対する抗体」を含む卵を産ませることに成功しました。卵から抽出された抗体は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療、あるいは予防に使用される可能性があります。

Viruses | Free Full-Text | Hyperimmunized Chickens Produce Neutralizing Antibodies against SARS-CoV-2
https://www.mdpi.com/1999-4915/14/7/1510


Producing COVID-19 antibodies in hen eggs
https://phys.org/news/2022-07-covid-antibodies-hen-eggs.html

ヒトや哺乳類は免疫グロブリン(抗体)の一種として免疫グロブリンG(IgG)を持っていますが、鳥類もこれとよく似た抗体の免疫グロブリンY(IgY)を血清および卵黄の中に持っています。このIgYはヒトに注射してもアレルギーや免疫反応を引き起こさないという特性も持ち合わせています。鶏は1年間に約300個の卵を産むため、鶏を使うことでIgYを多く得ることができるというわけ。

鶏を使って新型コロナウイルスの抗体を産生する研究に携わったカリフォルニア大学デービス校の獣医学部で家禽医学の教授を務めるロドリゴ・ガヤルド氏は、「鶏に新型コロナウイルスの抗体入り卵を産ませることの優れている点は、鶏が多くの抗体を産生できるという点です。鶏で新型コロナウイルスの抗体を産生することで、抗体を生み出すためのコストを低く抑えることが可能となります。また、更新された抗原を利用して鶏を過剰免疫にすることで、新型コロナウイルスの変異株に対する保護がより迅速に可能となります」と語りました。


ガヤルド氏ら研究チームは新型コロナウイルスのスパイクタンパク質または受容体結合ドメイン(ウイルスと結合する部位)に基づく3種類のワクチンを、2回にわけて鶏に接種させました。ワクチン接種から3週間あるいは6週間が経過したのち、鶏の血液サンプルおよび卵黄の中に存在する抗体を測定。その後、ジョージ・メイソン大学の国立生物防御感染症センターで、鶏が作り出した抗体が、ヒトが新型コロナウイルスに感染することを防ぐのに役立つかどうかが検査されました。

ワクチンを接種して免疫を獲得した鶏の卵黄および血清から抽出できる抗体は、どちらもSARS-CoV-2を正しく認識するものであることが判明しています。調査によると、鶏の血清中にある抗体の方が新型コロナウイルスを中和する効果が高かったことも明らかになっており、その理由は「卵黄よりも血中の抗体量の方が多いためだろう」とガヤルド氏は記しました。

なお、研究チームは鶏が産生した抗体をスプレー式の予防治療に応用することで、新型コロナウイルスに感染するリスクの高い人々が使えるようにすることを検討しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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