Twitterがイーロン・マスクを提訴、買収する約束を果たせと迫る

Twitterが2022年7月12日に、イーロン・マスク氏が440億ドル(5兆6000億円)で同社を買収する合意を果たさなかったのは契約違反であるとして、マスク氏を起訴しました。Twitterは当初の買収契約の履行を要求しており、専門家はマスク氏が劣勢であると指摘しています。

Twitter (TWTR) Sues to Force Elon Musk to Consummate $44 Billion Buyout - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-07-12/twitter-sues-to-force-musk-to-consummate-44-billion-buyout

Twitterは2022年4月25日に、総額440億ドルで同社を買収するとのマスク氏の提案に合意しました。しかし、マスク氏はその後「Twitterで活動するボットが公式発表より多い」として買収の中止を発表。Twitterはマスク氏に、リアルタイムの全ツイートデータである「firehose」を提供して買収取引を進めるよう求めましたが、マスク氏は7月8日になって買収の取りやめを発表しました。

イーロン・マスクが「Twitterの買収を取りやめる」と発表 - GIGAZINE

マスク氏が買収中止を発表した際、Twitterのブレット・テイラー会長は法的措置を講じる予定だと述べていました。そして、Twitterは7月12日に正式にマスク氏を起訴しました。

デラウェア州衡平法裁判所に提出した訴状の中でTwitterは、「Twitterを買収するために公衆の面前で大立ち回りを演じ、売り手に有利な合併契約を提案してそれに署名したマスク氏は、他の人とは違って自分は気が向いたら好きなように会社をこき下ろし、経営を混乱させ、株主価値を損ない、そして立ち去ることができると思っているようです」と非難。その上で、「当社はマスク氏のさらなる違反行為の差し止め、同氏の法的義務の履行、およびいくつかの未解決の条件を満たした上での買収完了を強制するためにこの訴訟を起こすものです」と述べています。

Twitterが主張しているマスク氏の契約違反は以下の通り。
・買収を完了するために合理的かつ最善の努力を払うという義務に重大な違反があった。
・資金調達を完了させるために必要なことは全て行うという「地獄でも洪水でも協定(hell-or-high-water covenant)」に重大な違反があった。
・債務ファイナンスの状況に関する情報をTwitterに提供するという義務に重大な違反があった。
・運営上の決定に対して不当に同意を留保することを控えるという義務に重大な違反があった。
・買収に関するパブリックコメントについてTwitterに同意を求め、それに関するツイートで会社やその代表者を誹謗(ひぼう)中傷しない義務に重大な違反があった。
・機密情報を悪用しない義務に重大な違反があった。

by Wired Photostream

Bloombergによると、マスク氏とTwitterの買収契約には「もし交渉が決裂した場合、一定の条件のもとで、契約を破棄した側が10億ドル(約1370億円)の契約解除料を支払う」という条項が含まれているとのこと。裁判では、マスク氏がTwitter買収中止の原因としているスパムボットの問題が、契約破棄の合理的な理由として認められるかが焦点になるとみられています。

Bloombergの訴訟アナリストであるMatthew Schettenhelm氏は、「マスク氏は法廷では劣勢です。マスク氏は同氏が求めたすべてのデータを得たわけではありませんが、買収契約の破棄に相当するような重大な違反があったと証明するのには苦労することでしょう」とコメントしました。

Twitterによる訴訟が報じられた後、マスク氏は「皮肉な話(笑)」とツイートしました。なお、Twitterは以前、マスク氏による買収を防ぐために対抗策まで講じていました。