サイエンス

貧血でもないのに疲労感を覚えてしまうのはなぜなのか?


血中ヘモグロビン濃度が低下して貧血になると、めまいや息切れを感じるようになってしまいます。しかし、人によっては貧血でもないのにヘモグロビンとは無関係の疲労を感じてしまうことも。この原因は鉄分の不足にあるとして、ハーバード大学の医学助教を務めるアンソニー・ブロイ氏が理由を解説しています。

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????Why does iron-deficiency-cause-fatigue, even in the absence of anemia?

I have often equated iron with hemoglobin and oxygen-carrying capacity.

But there is so much more to it!

— Tony Breu (@tony_breu)


ヘモグロビンの値が正常でも、鉄分が不足すると疲労を感じることがあるということは、1800年代から観察されています。そしてこれらの症状は鉄分を投与することで緩和されます。


1960年に行われたランダム化比較試験では、ヘモグロビン値が1dLあたり12gを超える女性に鉄分または偽薬を与えたところ、鉄分を投与された人はより大きな症状の改善がみられることが判明し、鉄分投与が疲労感を軽減することが裏付けられました。さらに最近のデータでは、貧血でなくとも鉄が欠乏している人に鉄分を投与すると疲労が減少するという考え方が支持されています。

また、造血細胞の異常により赤血球や白血球などの増加が見られる真性多血症の研究からも、ヘモグロビン濃度が高いにもかかわらず疲労感をもたらすという現象が確認されているとのこと。

ブロイ氏は、これらの知見について「要するに、鉄は酸素を運ぶだけでなく、もっとたくさんの働きをしているのです」と指摘。これは、鉄が多くの重要なヒトの酵素、特にミトコンドリア機能に必要な酵素において重要な役割を担っていることに起因していると説明しました。


1976年に行われた正常なラットと鉄欠乏ラットの運動能力に関する研究では、鉄欠乏ラットは対照動物に比べて走力が劣っていたことが分かりましたが、これは鉄剤の投与によって改善されました。この時、ミトコンドリアに存在する鉄を含む酵素であるα-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼのレベルも変化を見せていました。

これらの知見で、鉄が心不全の治療に有効であることを説明できるとのこと。ブロイ氏は「ある研究では人間の全酵素の6.5%が鉄依存性であると推定されています。鉄の補給は心不全の改善を促します」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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