セキュリティ

Google検索で特定のキーワードを検索した人物を履歴から探す捜査手法に「憲法違反」との異議


2020年8月、アメリカのコロラド州デンバーでセネガルからの移民だった5人が家屋の放火により死亡する事件が発生し、17歳の少年2人と16歳の少年1人が放火殺人の罪で逮捕・起訴されました。この事件の捜査において、警察は放火された家の住所を検索した人物を「逆キーワード検索」という手法によって探り出して逮捕に至ったとのことですが、この捜査手法に対して「憲法違反ではないか」と異議が唱えられました。

Police sweep Google searches to find suspects. The tactic is facing its first legal challenge.
https://www.nbcnews.com/news/us-news/police-google-reverse-keyword-searches-rcna35749

2020年8月にデンバーで起きたセネガル移民の放火殺人事件は、「仲間の携帯電話を盗んだ相手への報復」として行われたものの、実際には人違いだったことに殺した後で気付いたと警察の捜査で判明しています。2021年1月に逮捕された犯人グループ3人のうち、逮捕時点で16歳だった2人は成人として裁判にかけられています。


事件の捜査では、家に火をつけた犯人グループの姿はセキュリティカメラに捉えられていたものの、マスクをしていたため容疑者の特定は難航したとのこと。そこで警察は、「逆キーワード検索」と呼ばれる手法を用いて、「燃やされた家の住所」をGoogle検索した人物を探し出すことにしました。

逆キーワード検索とは、検索エンジンで行われた膨大な検索履歴の中から「特定のキーワード」を検索した履歴を探すというものです。2020年11月に裁判所は逆キーワード検索の令状を発行し、警察はGoogleに対して「事件発生の15日前から当日にかけて、家の住所を検索した人物のデータ」を提出するように要求。Googleはこれに応じて、61のクエリに関する情報をIPアドレス付きで提出し、捜査員はこのクエリの一部に着目してさらなる情報提供をGoogleに求め、犯人グループのうちの1人にたどり着いたとのこと。そこからSnapchatやFacebook、InstagramといったSNSやメッセージアプリの活動を調べ、証拠を集めていったと報じられています。


成人として裁判にかけられた17歳の少年の弁護団は、警察の捜査は「殺人犯が検索バーに住所を入力したかもしれない」という曖昧な直感に基づいたものであり、何十億ものGoogle検索履歴をやみくもに調査していたと指摘。これは「不合理な捜索及び逮捕押収に対し、身体、住居、書類及び所有物の安全を保障される人民の権利は、これを侵害してはならない」とする憲法修正第4条に違反しており、すべての証拠は破棄されるべきだとして、少年の無罪を主張しています。

弁護団の1人であるマイケル・プライス氏は、「人々の関心はインターネット検索履歴に現れており、これはあなたの本当にプライベートな表現のアーカイブです」「Googleなどの検索エンジンは、インターネットにある膨大な情報への入り口であり、多くの人が自分の求めるものを見つける手段です。これらの検索エンジンにおけるクエリが、友人や家族、聖職者にも言えないようなその人の重要なプライバシーを明らかにしているのです」と述べました。

近年では、さまざまな事件で逆キーワード検索を行って犯人を絞り込む捜査が行われていますが、逆キーワード検索の令状は「捜査している警察も容疑者のことを知らない」という点がその他の令状を必要とする捜査と違うため、その正当性が問題視されています。なお、NBC Newsの問い合わせに対してGoogleは、過去に警察から逆キーワード検索への協力を要求された回数やその他の情報提供、コメントを拒否しました。

また、2022年6月にアメリカの最高裁判所が中絶の権利を保障した「ロー対ウェイド事件」の判決を覆し、州法で中絶を禁止することが可能となりました。これにより、テクノロジー企業からは「警察や検察が捜査の一環としてインターネットユーザーの検索履歴、位置情報、中絶計画を示すその他の情報を取得する可能性がある」と懸念の声が上がっています。逆キーワード検索は中絶を試みる人を探り出す絶好の手段となり得るため、中絶禁止が制定された州では広く逆キーワード検索が試みられる可能性があるとのこと。

中絶を罰する法律により「ユーザーの追跡データを警察が取得できるかもしれない」とテクノロジー企業が不安視 - GIGAZINE


逆キーワード検索を違憲とする弁護団の主張を支持する電子フロンティア財団のジェニファー・リンチ氏は、「警察は法律に違反していると思われる人たちを捜査します。犯罪者を見つける1つの方法は、特定の地域でプランド・ペアレントフッド(中絶手術などのサービスを提供する団体)を検索した人全員の情報を渡すよう、Googleに依頼することです」「コロラド州のケースでGoogleによる情報の引き渡しが認められる、あるいは要求されるのであれば、中絶を違法としている州の裁判所は、法執行機関がその種のキーワード検索に関する情報の引き渡しをGoogleに求めるのを阻止できません」と述べています。

弁護団は警察による逆キーワード検索を、17歳の少年だけでなく該当する15日間にGoogle検索を行ったすべての人々に対するプライバシー侵害だと訴えています。プライス氏は「『デンバーの精神科医』『付近の中絶クリニック』『神は存在するのか』など、人々は毎日のようにこれらの情報を求めてGoogleに質問を投げかけています」と述べ、政府機関がGoogleの膨大な検索の山をふるいにかけることは、ユーザーの思考・懸念・疑問・恐怖にアクセスするのと同じだと主張しました。

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1h_ik

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