M1搭載MacでWindowsを動作させるプロジェクト「M1 Windows」がスタート

Appleが独自開発したSoCシリーズ「Apple Silicon」の第1弾として発表された「M1」は、PC向けプロセッサとしては初めて5nmプロセスを採用したチップで、各メディアや専門家から「コンピューティング革命」「少なくとも過去10年でMacのハードウェアにおける最大の飛躍」とまで評されました。そんなM1は当然ながらmacOSの動作が最適化されていますが、このM1でWindowsを動かすことを目指すプロジェクト「M1 Windows」がスタートしました。

Welcome to the M1 Windows project | m1windowsproject
https://amarioguy.github.io/m1windowsproject/

GitHub-amarioguy / m1windowsproject
https://github.com/amarioguy/m1windowsproject

M1を初めとするAppleのチップはArmアーキテクチャをベースに設計されているものの、QualcommやMediaTekなどの企業のチップとはアーキテクチャが大きく異なるため、M1搭載MacでmacOS以外のOSを動作させるのは難しいものがあります。しかし、すでにM1搭載MacでLinuxを動かすことを目指した「Asahi Linux」の開発プロジェクトが進められており、2022年3月にはパブリックアルファ版がリリースされています。

M1チップ搭載Macで動作するLinux「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が登場 - GIGAZINE

また、M1に内蔵されているGPUをリバースエンジニアリングしてドライバーをオープンソースで開発する試みも進められています。

AppleのMac向け独自開発チップ「M1」のGPUをリバースエンジニアリングするプロジェクトが進行中 - GIGAZINE

M1についての解析が進むにつれて、WindowsをM1搭載Macで動作できる可能性は高まっていると、M1 Windowsの主催者であるマット・グラハム氏は語っています。

グラハム氏によれば、M1環境下でWindowsの動作を難しくしているのは「割り込みコントローラー」と「IOMMUのページサイズ」の2つだとのこと。特に割り込みコントローラーの問題については、マルチタスクOSであるWindowsを十分に動作させるためにはどうしても解決する必要があります。

M1にはApple Interrupt Controller(AIC)という独自の割り込みコントローラーが実装されており、Arm64版のWindowsカーネルはこのAICのサポートを実装していません。割り込み自体はマルチタスクOSの基本となるため、AICのサポートがなければM1搭載MacでWindowsを満足に動作させることは不可能だとのこと。

グラハム氏によれば、M1チップにはArmプロセッサ向け汎用割り込みコントローラーのバージョン3(GICv3)の一部をOSに仮想化し、より高速な割り込み処理を可能にするという機能があるため、例外レベル(EL)2では軽量なハイパーバイザーを使って物理割り込みを処理し、EL1で動作しているWindowsにルーティングするという方法が考えられるとのこと。そこで、Asahi Linuxプロジェクトで開発された、macOSのOSカーネルであるXNUとLinuxブートエコシステムの橋渡しを担うブートローダー「m1n1」をハイパーバイザーとすることで、EL1のUEFIファームウェアを起動し、Windowsも起動できるようにしたいとグラハム氏は述べています。

ただし、m1n1を使って仮想GICv3を実装しようとしても完全には問題が解決できず、どうしてもエラーが発生してしまうとのこと。グラハム氏は、ハイパーバイザーに使うm1n1の開発を進めれば、エラーを解消できるかもしれないと考えています。

記事作成時点でグラハム氏は、m1n1のフォークを進めると同時に、UEFIコアのオープンソース版であるProject MuをM1環境用にコンパイルする作業も行っているそうです。