サイエンス

10人に1人は全身麻酔を受けても意識を保っていることが判明


現代では手術の際に部分麻酔や全身麻酔を施されるため、手術中に大きな痛みを感じることはありません。しかし、シドニー大学の研究チームが実施した調査によって、10人に1人は全身麻酔中でも意識を保っていることが判明しました。また、意識を保っていた人の半数は痛みを感じており、麻酔がとけた後は痛みを忘れてしまうことも明らかになっています。

Connected consciousness after tracheal intubation in young adults: an international multicentre cohort study - British Journal of Anaesthesia
https://doi.org/10.1016/j.bja.2022.04.010

During general anaesthesia 1 in 10 people may be conscious following intubation - The University of Sydney
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2022/05/24/during-general-anaesthesia-1-in-10-people-may-be-conscious-follo.html

全身麻酔は手術中の痛みを取り除く効果や患者の動きを抑える効果があることから広く用いられています。しかし、全身麻酔のメカニズムは現代でも解明されておらず、全身麻酔中の意識の有無についても詳しいことは分かっていません。

全身麻酔を受けた患者の中には「意識が回復して痛みも感じるものの体を動かすことができない」という恐ろしい経験を報告する人もいます。また、ウィスコンシン大学で実施された実験では全身麻酔中を施された患者の4.6%が麻酔中の指示に応答したことも示されています。

20人に1人は手術中に目覚めている可能性アリ、忘れているだけで耐えがたい痛みを感じるケースも - GIGAZINE


今回全身麻酔中の意識について報告したシドニー大学の研究チームは、18~40歳の338人におよぶ患者を対象に「全身麻酔中に指示を理解できれば1回、痛みがあれば2回手を握るように求める」という実験を行いました。実験の結果、患者の11%が指示に応答して手を握ったとのこと。また、11%の患者の半数は複数回手を握り、痛みを感じていることを報告しました。

手を握った患者のほとんどは麻酔から回復した際に研究チームからの指示および自らが返答したことを忘れていましたが、1人の患者は手術中の体験を鮮明に覚えていると報告したとのこと。また、女性の患者は男性よりも指示に応答する可能性が3倍高いことも示されました。


研究チームの一員であるロバート・サンダース教授は「この研究結果は人々が麻酔に対してどのように反応するかを知ることの重要性を強調しています。麻酔への感受性に影響を与える生物学的差異、特に性差に関する研究を早急に行う必要があります」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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