生き物

アジアゾウが死んだ子どもを数日~数週間運び続ける行動がYouTube動画の分析で確認される


インドや東南アジアに生息するアジアゾウが、「死んだ子どもを数日~数週間も運び続ける」というまるで死を悲しむかのような行動を示すことが、YouTubeに投稿された多数の動画を分析した研究で判明しました。仲間や子どもの死に対するアジアゾウの反応を知ることは、ゾウの保護に大きな影響を与える可能性があるとのことです。

Viewing the rare through public lenses: insights into dead calf carrying and other thanatological responses in Asian elephants using YouTube videos | Royal Society Open Science
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsos.211740

Asian elephant mom carries dead calf for weeks, new eye-opening videos reveal | Live Science
https://www.livescience.com/asian-elephants-mourn-dead

アフリカのサバンナなどに生息するアフリカゾウは、以前から群れのメンバーが死んだ時に感情的な反応を見せることが知られていました。アフリカゾウは仲間の死体に近づいて口元に自分の鼻を寄せたり、足で押したり、周囲を警戒するかのようにそばに立ったりするとのこと。一方でアジアゾウは主に森林地帯に生息しているため、開けた場所に生息するアフリカゾウよりも生態の観察が難しいことから、仲間の死に対して感情的な行動を取るかどうかははっきりしていませんでした。

そこで、研究当時はインド理科大学院に所属していたSanjeeta Sharma Pokharel氏(現在はスミソニアン国立動物園の保全生物学研究所)とNachiketha Sharma氏(現在は京都大学高等研究院)、Raman Sukumar氏(記事作成時点もインド理科大学院)のチームは、動物に関するさまざまな動画が投稿されているYouTubeに着目。プラットフォーム上で「death of elephants(ゾウの死)」「elephant reactions to death(死に対するゾウの反応)」「calf elephant death(子ゾウの死)」といったキーワードを多言語で検索し、2010年~2021年に投稿されたアジアゾウが仲間の死に反応している39件の動画を抽出しました。動画のうち80%が野生のゾウを撮影したもので、16%が動物園などで飼育されているゾウ、4%が林業または観光業で働くゾウについての動画だったとのこと。

分析された動画の中でも特に印象的な動画のいくつかは、死んだ子ゾウとそれに反応する群れの仲間が撮影されたものだったそうです。研究チームによると、死んだ子ゾウを撮影した12本の動画のうち5本では、おそらく母親とみられる成体のメスが子ゾウを運んでいることが確認されました。運ばれている死体の状態から、研究チームは死んだ子ゾウを運ぶ行動は数日~数週間続いたと推測されています。


以下の動画は、実際にインド森林局に勤めるParveen Kaswan氏が「死んだ子ゾウを親らしきゾウが運ぶ様子」を撮影したもの。動画中には子ゾウの死体が写っているため、苦手な方は注意してください。

Elephants Perform Funeral Rites For Their Dead Calf | Weeping Elephants Carry Dead Body To Perform - YouTube


その他の動画でも、ゾウが死体のそばにいる時に落ち着きをなくしたり興奮したり、死体に近づいたり、触ったり、臭いを嗅いだりする行動が確認されました。また、10件の動画では死んだ仲間を生き返らせようとするかのように持ち上げたり、そっと動かしたり、揺さぶったりしていたとのこと。

今回の研究には関与していないデンバー動物園のBrian Aucone氏は、「ゾウたちは私たちと同じように、死体にしがみついて出来事を把握しようとしており、子どもたちとの交流の中で何かが起きているのだと思います」「私たちは以前にもこのような行動を何回か見てきました」とコメント。動物園では病気や衰弱によりゾウを安楽死させる場合、スタッフは仲間たちが死んだゾウと別れを告げる機会を与えるそうで、残されたゾウたちは死体の臭いを嗅いだり胴体に寄り添ったりすると述べています。

ゾウは仲間や子どもの死に反応する唯一の動物というわけではなく、過去にはシャチの母親が死んだ赤ちゃんを17日間も運び続けた事例が確認されているほか、サルの母親が子どもの死体を数週間~数カ月運び続けることもあります。研究チームはゾウと霊長類はいずれも「子どもが成長するまで育てる」という共通点があり、これが反応のない死体に反応する動機の可能性があると指摘。残された個体が死んだ個体に反応する理由や因果関係を正確に知ることは難しいものの、YouTubeにアップロードされたいくつかの動画は、複数の動物種が仲間の死を意識している可能性を示していると述べました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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