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仮想通貨マイニング事業の新規参入・拡張を実質的に一時禁止する法案がニューヨーク州下院で可決


ニューヨーク州の下院議会で、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」認証方式でブロックチェーン取引の検証を行っている仮想通貨のマイニングを2年間制限する法案が可決されました。法案は実質的にビットコインのマイニング事業の新規参入および拡張を規制する内容となっています。

NY State Assembly Bill A7389C
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/A7389

New York bitcoin mining moratorium proceeding through state house
https://www.cnbc.com/2022/05/05/new-york-bitcoin-mining-moratorium-proceeding-through-state-house.html


法案の内容は、化石燃料を使う発電所で生み出された電力の使用量が多いマイニングを取り締まることで、州の二酸化炭素排出量の抑制につなげるというもの。制限期間は2年間で、再生可能エネルギーを100%使用しない限り、マイニング事業の新規参入や拡張は許可されません。

対象となるのは、マイニングのアルゴリズムに「PoW」を用いている仮想通貨です。「PoW」はその仕組み上、膨大な演算が必要で、マイニングにあたっての消費電力量が大きくなります。比較的新しい仮想通貨だと、PoW比で消費電力量が99%少ない「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」が採用されており、イーサリアムも2022年後半にPoWからPoSへの移行が決まっているため、実質的にビットコインのマイニングを規制する内容といえます。

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法案は下院議会を通過し、上院議会で審議中。上院でも可決されれば、キャシー・ホークル知事に法案署名か拒否権発動かの選択が委ねられます。

ニューヨーク州内では2018年、北部の都市プラッツバーグがマイニング事業を禁止する条例を一時的に制定。2021年にこれを州全土に拡大しようとする動きがありましたが、電気労働者らの組合がマイニング産業を擁護したため、失敗に終わったという流れがあるとのこと。


ニューヨーク州は電気代が安く、気候も寒冷であることからマイニングに適した土地といえます。マイニング企業のCoinmintは、世界的アルミニウムメーカー・アルコアの元アルミニウム精錬所だった施設を、豊富な風力な発電とセントローレンス川を利用した水力発電で得られる安価な電気を用いたマイニング工場にしています。この施設は変圧器の容量が435MWで、アメリカ最大級のものだそうです。

規制の動きに対して、マイニング産業からは反対意見が上がっています。資産運用会社・Galaxy Digitalのアマンダ・ファビアーノ氏は「マイニングの仕事が他州に奪われ、ニューヨーク州の経済が弱体化することになる」とコメント。デジタル通貨投資企業Foundryのケビン・チャン氏は「Foundryはマイニング機材に5億ドル(約650億円)以上を投資してきましたが、情勢が不利なので、ニューヨーク州に設置した機材は5%以下です」と述べています。実際、すでにマイニングネットワークにおけるニューヨーク州のシェアは、ここ数カ月で20%から10%へ落ち込んでいるとのこと。

仮想通貨等の推進団体であるChamber of Digital Commerce創業者のペリアン・ボーリング氏は、世界のマイニング産業の60%弱は持続可能エネルギーを使用しており、ニューヨーク州に限ればこの数字は80%に近いと指摘し、マイニング産業こそ、持続可能エネルギーへの移行をリードする可能性がある存在だと主張。マイニング企業GEM Miningのジョン・ウォーレンCEOは「州による規制は、今後強化される可能性を考慮して、再生可能エネルギーベースのマイニング業者のビジネスの抑制につながる恐れがあります」と警鐘を鳴らしています。

またボーリング氏は、ニューヨーク州が民主党支持層の多い「青い州」のモデル的存在になっていることから、ニューヨーク州で法案が成立した場合、他の「青い州」も動きに追随する可能性があると述べています。

一方、法案が成立するかどうか以前に、そもそもニューヨーク州はマイニング産業に敵対的な姿勢であることははっきりしていたと語ったのは、ブロックチェーン関連ベンチャーCore Scientificの共同創業者であるダリン・ファインスタイン氏。ファインスタイン氏は、マイニングとは実質的にデータセンター事業であり、データセンターは設置を求めているところに展開すべきであろうという持論を述べ、マイニングに友好的な州としてジョージア、ノースカロライナ、ノースダコタ、テキサス、ワイオミングの名前を挙げています。その上で、友好的ではない州で事業を行うのであれば、それ相応の対応が必要になってくると述べました。

ファインスタイン氏が名前を挙げたテキサス州は、マイニング推進派の議員がいることで有名だとのことで、マイニング産業に余剰再生可能エネルギーや天然ガスが提供されています。仮想通貨プールLuxor Minigのアレックス・ブラマー氏は、「テキサス州は規制が緩く、業界の予測が立てやすい」とコメントしています。

テキサス・ブロックチェーン協議会のリー・ブラッチャー会長は、ニューヨーク州で規制が行われた場合、ビットコイン産業はそのインセンティブを理解している州に移転するだけだという見解を示しました。

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in メモ, Posted by logc_nt

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