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中国のソーシャルメディアでロシアのウクライナ侵攻関連の投稿が厳しく規制されている


ロシアによるウクライナ侵攻は日本やアメリカ、EUなど世界各国から強い批判を受けています。一方で中国は、ウクライナ侵攻を明確に支持していないものの、国連安全保障理事会や国連総会の緊急特別会合でロシアに対する非難決議が行われた際には、いずれも投票を棄権しています。そんな中国のソーシャルメディアで厳しい検閲が行われ、ウクライナ侵攻関連に関して強い意見を述べる投稿が次々と削除されていると報じられています。

The war in Ukraine is keeping Chinese social media censors busy | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2022/03/the-war-in-ukraine-is-keeping-chinese-social-media-censors-busy/

中国のネット検閲を追跡調査するFreeWeiboによれれば、あるユーザーが中国のソーシャルメディアである新浪微博(Weibo)で「炎が空を照らし、私の心を打ちます。ウクライナにいる私の同胞とその家族の安全を願います」と書き込んだところ、すぐに削除され、ブロックされてしまったとのこと。


Weiboにはまた、「私は戦争を支持する!アメリカと台湾はやりすぎだ!」というロシア寄りの書き込みも投稿されたそうです。しかし、この書き込みもまたすぐに削除されてしまったそうです。


世界情勢における中国の立場は毎日微妙に変化しており、ソーシャルメディアの書き込みも中国の公式見解に沿ったものでなくてはいけません。そのため、ロシア側あるいはウクライナ側のどちらかに肩入れした投稿内容はすぐに検閲の対象になってしまうというわけです。ウェストミンスター大学でメディアコミュニケーションについて研究するYuqi Na氏は「一般的に中国のオンラインプラットフォームでは、政府からどのようなコンテンツを削除すべきかについて毎日指導が行われます」と述べています。

ロシアがウクライナに侵攻する前の2月22日、中国メディアのHorizon Newsが、「ウクライナ危機をどう切り抜けるかについての内部指示書」をうっかりWeiboに投稿してしまいました。その中には「ロシアに都合の悪いことや親欧米的な内容は投稿しない」とあったほか、Weiboについたコメントを常に監視し、中国の国営メディアである新華社・CCTV・人民日報が指定したハッシュタグだけを使うように指定されていました。


ロシアがウクライナに侵攻する前、中国の国営メディアや当局者のTwitterアカウントはウクライナ侵攻の可能性を一蹴していました。しかし、いざ侵攻が始まると、中国は不干渉と国家主権の尊重という長年の政策で、ロシアとの関係を調和させなければならないという厄介な立場に立たされてしまいました。さらにウクライナ侵攻の数週間前には、プーチン大統領は北京冬季オリンピックのVIPゲストに招かれたばかりで、ロシアと中国はその関係を再確認したばかりでした。

プーチン大統領がウクライナへの侵攻を宣言した直後、中国の国営メディアは慎重な姿勢で報道に臨みました。ウクライナ侵攻に関する報道は比較的まばらで、紛争を「特殊な軍事作戦」と呼びアメリカとNATOに責任があるというような、ロシアの報道とほぼ同じ内容でした。Na氏は「多くのインターネットユーザーは、情報源が限られてしまっている場合、国営メディアの報道内容を信じるのです」と述べています。


そのため、中国のインターネットでは親ロシアの言説が盛んになりました。ソーシャルメディア企業も、戦争支持の投稿やウクライナ人に対する差別的な投稿を放置しました。WeiboやソーシャルニュースアプリのWeixinでは、ウクライナに同情する声も上がっていたそうですが、しばらくすると投稿されなくなったそうです。

ハーバード大学アッシュセンターのディレクターであるアンソニー・サイヒ氏は「中国のソーシャルメディアには公式見解に沿った記事や投稿がある中で、多くの反論も出回っています。これは、中国人の中でも今回のウクライナ侵攻について意見が割れていることを示しています。長期的な影響に不安を覚える人もいます」と述べています。

2022年2月26日に中国の大学教授5人が戦争を非難する声明を発表しました。この声明文はすぐに削除されてしまったそうですが、消される前にネットで広く拡散されました。教授たちは声明の中で「どんな言い訳があろうとも。ロシアによる主権国家を侵略するための武力行使は、国連憲章に基づく国際関係の規範を踏みにじるものである」と、中国の公式見解を完全に無視して直接的にロシアを批判しました。この声明が拡散されてから、ロシアに対して否定的な見解も中国の各ソーシャルメディアでみられるようになりました。

サイヒ氏は、ソーシャルメディア企業は「親ロシア的な内容」「ロシアに対して批判的な内容」の両方で極端な内容のものは削除し、中国の公式見解と同じく「どっちつかずな一線」をキープしようとしていると指摘しました。Weiboはすでに1万件のアカウントを一時停止あるいは削除し、「ユーザーは客観的かつ合理的であるべきです」という声明を述べています。

by Jon Russell

Na氏は「中国当局は戦争に対して肯定的な感情をトーンダウンさせようとしていますが、ロシアを非難することは難しいでしょう。その姿勢の根底には『アメリカの覇権主義や支配を非難せよ、特に人権問題について非難せよ』というメッセージが一貫してあるからです」と述べています。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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