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「なぜ半導体が不足するのか?」など半導体を取り巻く問題がよく分かる5つの図

by Marco Verch Professional Photographer

長引く半導体不足に対し、半導体企業は工場の新設や人材育成などで対応していますが、半導体不足の解消は早くても2022年後半になると予想されています。半導体に関する問題の根深さについて、アメリカ電気電子学会(IEEE)が刊行する雑誌のIEEE Spectrumが5つの分かりやすい図にまとめました。

These 5 Charts Help Demystify the Global Chip Shortage - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/global-chip-shortage-charts

半導体企業で組織されたGlobal Semiconductor Allianceの報告によると、半導体の部品が生産されてから顧客の元に届くまでには、最長で5万kmもの距離と70もの国境を越える輸送が行われる可能性があるとのこと。以下は、そのことを示す図です。まず、アメリカで生産されたシリコン原料や薬品は1万2000km移動して台湾に持ち込まれて加工され、その後もマレーシア(3200km)、ドイツ(9700km)、中国(7700km)といった国々で各工程が行われ、完成した半導体としてアメリカに納入されるまでに合計5万5400kmの距離を移動します。


ニューヨークにあるスティーブンス工科大学ハンロン金融システムセンター所長のジョージ・カルフーン氏はこれについて、「サプライチェーンという比喩的な言葉は、半導体には当てはまりません」とコメントしました。しかし、アメリカだけで半導体を製造しようとすると10年の歳月と1兆ドル(約115兆円)のコストがかかり、半導体価格は最大65%高騰するとの試算もあるため、グローバル化は避けられないとのことです。

以下は、四半期ごとの半導体製造設備の使用率のグラフです。IEEEのラッセル・ハリソン氏によると、半導体工場は一般的に80%の稼働率を維持しつつメンテナンスや機器の更新、スタッフの異動に対応しているとのこと。しかし、IoT機器や自動運転車の普及などによる半導体需要増加を受けて供給不足と供給過剰のサイクルが破綻した結果、2020年半ばから世界の半導体工場の稼働率が90%を上回ることが常態化してしまいました。


以下は、半導体の在庫が何日分残っているかを表したグラフで、半導体製品の在庫の中央値が2019年の40日分から2021年には5日分を下回るほど減少していることが示されています。


以下は、半導体の分野ごとのシェア率をアメリカ(黄色の棒グラフ)と中国(茶色の棒グラフ)で比較した図です。中国の半導体産業にお株を奪われたと言われることが多いアメリカですが、新しい半導体の設計や開発などのバリュー・チェーンの分野(左から3番目)では優位を保っており、特に研究開発費(同4番目)では390億ドル(約4兆5000億円)を投資して中国を圧倒しました。


以下は、いずれも大手半導体企業であるIntel、Texas Instruments、Samsung、TSMCがアメリカでの生産体制拡充に投資している額(左)と、America COMPETES Act(アメリカ競争法)に基づくアメリカ政府から半導体産業への支援金(右)を比較した図です。アメリカ政府は、2009年のGM破綻の際に政府が融資した額を上回る520億ドル(約6兆円)を半導体産業につぎ込んでいますが、前述の4社はその倍近い合計990億ドル(約11兆4000億円)をテキサス州・オハイオ州・アリゾナ州での工場新設プロジェクトに投入することを計画しています。しかも、カルフーン氏の見積もりによると、半導体不足に対する民間投資は今後8500億ドル(約100兆円)を超えると予想されるとのこと。


半導体分野に対するアメリカ政府の優遇措置について、カルフーン氏は「政府の画一的なやり方が効果的な投資につながるとは思えませんが、仮にそれが完璧に実行されたとしても、政府の支援金は民間企業の投資額に比べればはした金でしょう」とコメントしました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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