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アメリカの政府機関がコロナ詐欺対策の顔認証システムを廃止、プライバシーや人種差別の懸念から


アメリカでは他人になりすまして新型コロナウイルスに関連する支援金を申請する詐欺が横行しており、この対策としてアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)は顔認証を導入して個人を識別しています。しかし、この顔認証システムに対して否定的な意見が多く寄せられたことから、顔認証システムを廃止することが発表されました。

GSA says no to facial recognition despite IRS ID plan - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2022/02/07/irs-gsa-id-facial-recogntion/?wpisrc=nl_technology202

IRS To Ditch Biometric Requirement for Online Access – Krebs on Security
https://krebsonsecurity.com/2022/02/irs-to-ditch-biometric-requirement-for-online-access/

IRSは「ID.me」が展開する顔認証システムを用いた証明サービスを採用しています。ワシントンポストによると、ID.meはIRSと2年間8600万ドル(約100億円)で契約しているとのこと。IRSはサインインページに「2022年夏までに既存のIRSアカウントではサインインできなくなります」と記しており、アカウントの保持者や新規作成者に対してID.meのアカウント作成を求めています。


しかし、セキュリティ専門家のブライアン・クレブス氏によると、ID.meのアカウント作成プロセスは非常に複雑で、テクノロジーに詳しくない人はアカウント作成に失敗する可能性が高いとのこと。また、IRSのような政府のサービスを利用する際に一企業へ個人情報を開示する必要があるという点にも批判が集まっています。

加えて、顔認証システムに対しては以前から「有色人種の誤検知率が高い」という問題も指摘されており、アメリカでは多くの都市において顔認証システムが相次いで廃止されています。これらの問題点からIRSにID.meの採用を取り止めるように求める意見が多く寄せられました。

アメリカの大都市が相次いで顔認証システムを禁止に - GIGAZINE

by Mike MacKenzie

この状況の中、IRSコミッショナーのチャック・レッチグ氏は2022年2月7日に「IRSは提起された疑念を理解しており、納税者のプライバシーとセキュリティについて真剣に考えています。私たちは顔認証を伴わない認証プロセスを迅速に開発しています」と述べ、ID.meに依存しない認証プロセスの開発に取り組んでいることを明らかにしました。

なお、記事作成時点ではIRSが今後利用するサービスの詳細は不明ですが、ロン・ワイデン財政委員長はアメリカ政府が2015年に採用した認証システム「Login.gov」を使用するように促しています。


ワイデン氏によると、Login.govはすでに28の連邦政府機関が運営する200のウェブサイトで採用されており、4000万人以上のアメリカ人がアカウントを所持しているとのこと。一方で、ワイデン氏は「残念なことに、Login.govはまだ十分に利用されていません。その理由は、多くの政府機関が『Login.govを利用せよ』という議会の命令を無視してきたことと、歴代政権がデジタルアイデンティティを優先してこなかったことにあります。何十億ドルもの被害を出している申請詐欺は政府の怠慢の代償であり、その結果、ID.meのような企業が政府の中核サービスを商業化することを可能にしてしまいました」と述べ、Login.govが十分に活用されていない現状を悲観しています。

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in メモ, Posted by log1o_hf

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