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「なぜLinkedInにはウンザリさせられるのか?」という分析


ユーザー登録数が7億人超という世界最大級のビジネス特化型SNSが「LinkedIn」です。そんなLinkedInを実際に使っているブロガーのTrung Phan氏が「LinkedInにウンザリさせられる理由」について解説しています。

Why is LinkedIn so cringe? - SatPost by Trung Phan
https://trungphan.substack.com/p/why-is-linkedin-so-cringe

Phan氏によると、LinkedInのウンザリさせられる点とは「ニュースフィード」です。同様の感想を抱いている人はPhan氏だけではなく、Twitterで「LinkedIn Cringe(LinkedIn ウンザリ)」と検索すると、同じような意見が多数集まります。


その代表例としてPhan氏が挙げているのが、Twitterで43万以上の「いいね!」を集めた「一回転している木」の写真。

This palm tree fell over, refused to die, and curved right back up. pic.twitter.com/wuiQ0U0EzM

— Bucky with the Good Arm (@benjancewicz)


人々が懸念していたとおり、この写真は「パクツイ」としてLinkedInに輸入され、さらに、元々のツイートについていたコメントまでそっくりそのままコピーされました。


Phan氏によると、LinkedInにウンザリさせられるという問題は3つの要因によって生み出されます。

◆1:パーソナリティー(LinkedInを使う際に求められる人物像)
Phan氏が指摘しているのは、LinkedInが「世界の人々をつなげることで個人と組織の生産性を高め、さらなる成功に結びつける」ということを社是としているが故の問題です。誰もが状況に応じて自分自身のペルソナを使い分けているわけですが、LinkedInは「ビジネス特化型」であるため、自分のプロフィールを履歴書のようにほんの少し誇張してしまいがちです。


この誇張によって、ユーザーの本音が覆い隠されてしまったり、「○○さんが△△社に勤めて1年経過しました!お祝いしましょう!」といった祝福を強要するようなアクティビティが発生しているとPhan氏は主張しています。

◆2:カスタマー(LinkedInに対してお金を払っている人)
LinkedInの年間売上高は100億ドル(約1兆1400億円)以上と発表されており、TwitterやSnapshotの2倍以上、Pinterestの3倍以上の規模です。Microsoftに買収される直前の2016年にLinkedInが発表した資料を参照すると、採用担当者や雇用主が採用や人材開発などのために支払う「タレントソリューション」が売上高の65%を、プライベートブラウジングやプロフィール閲覧などを可能にする「プレミアムプラン」が17%を、ニュースフィードに広告やスポンサー付きの投稿を表示させる「マーケティングソリューション」が18%をそれぞれ占めており、LinkedInは主に採用担当者や雇用主から収益を上げていることがわかります。

Phan氏は、LinkedInが採用担当者や雇用主をターゲットにしているという点から、以下の問題が発生すると主張しています。

・謙虚な自慢が奨励されてしまう
ユーザーは採用担当者や雇用主の目を引くために、どんな小さな成功でも喧伝するようになります。その際はうぬぼれていると思わないように、「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」と呼ばれる「最初はうまく行かなかったが、困難の果てに苦闘を乗り越えた」という形のストーリーを組み立てて投稿します。

・エセインフルエンサー
雇用主は労働者のモチベーションを向上させるため、業務とは一切関係ない耳障りだけが良い言葉を並べるようになります。

LinkedInでしか見られない投稿の代表例として、Phan氏は「『自分の大好きな色がロゴに使われている点に貴社とのつながりを感じました』としてインターンシップに応募する学生」を挙げています。


◆3:アルゴリズム(LinkedInのエンゲージメントを生み出している存在)
LinkedInのデータサイエンティストであるBonnie Barrilleaux氏が2018年のプレゼンテーションで語ったように、LinkedInは「ユーザーがニュースフィードから価値を得るのは、話を聞いてもらえたと感じ、会話をスタートしてアドバイスを交換できるとき」という理念の下でアルゴリズムを開発しているとされています。

このアルゴリズムを悪用した投稿スタイルが「Broetry」です。Broetryは「bro(兄弟)」と「poetry(詩)」を組み合わせた造語で、特にLinkedInで人気を博した「アルゴリズムに好まれる投稿」を指します。実例が以下で、「各行は一文だけで終わる。二文以上にはしない」「一行ごとに空行を挿入する」「できる限り同じ言い回しを繰り返す」というもの。


上記の例では1行目が「私は週に1冊の本を読みます」、4行目が「私は週に1冊の本に取り組みます」という単語を1つ代えただけの繰り返しになっており、人間にとっては単調すぎることから時には「小学3年生レベルの文章」と評されます。しかしこのBroetryは「続きを読む」のクリック率が高くなるらしく、「続きを読む」のクリック率を重視するLinkedInのアルゴリズムによって、修正が入るまでニュースフィード上を汚し続けたとのこと。

その後もLinkedInのアルゴリズムは「いいね!」やシェア、コメントなどの数、読了までに掛かった時間の長さなどをアルゴリズム的に重視しているため、中身がないくせに妙に長いウソ八百の感動物語や……


中身が皆無なクリックを稼ぐだけの質問などが氾濫しているとPhan氏は主張しています。


◆結論
Phan氏は「実際にはLinkedInの各要素はソーシャルダイナミクスの健全化に役立っています」と説明しています。

・パーソナリティー:LinkedInは基本的に本名で利用するものなので、ユーザーは礼儀正しく振る舞う。
・カスタマー:LinkedInは広告を主要な収益源としていないので、注目を集めてクリックを稼ぐコンテンツを表示する必要はない。
・アルゴリズム:Broetryが最終的には修正されたように、LinkedInはより健全なエンゲージメントを目指してバイラルコンテンツの対策を進めている。

一方、Phan氏は「Facebookは誤報、Twitterは荒らし、Instagramはフェイクなど、他のSNSもそれぞれ固有の問題を抱えており、それらに比べれば『ウンザリさせられる』というLinkedInの問題は最も差し迫った問題とはいえません」と述べつつも、「それでもLinkedInに時間を費やすつもりはありません」とコメントしています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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