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食料品店の棚が空っぽになって食料不足に陥る危機がアメリカで相次いでいる理由とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが起きた2020年前半には、各国で買い占めが発生して食料品トイレットペーパーなど、さまざまなものが不足しました。2022年1月には、再びアメリカの食料品店で棚が空っぽになる事態が相次いでいると報じられています。

Empty grocery shelves return as sick employees, supply chain delays collide
https://www.cnbc.com/2022/01/11/empty-grocery-shelves-return-as-sick-employees-supply-chain-delays-collide.html

Grocery store shortages are back. Here are some of the reasons why : NPR
https://www.npr.org/2022/01/12/1072462477/grocery-shortage-shelves-reasons

ソーシャルメディア上では食料品店の棚が空っぽになった様子を撮影した画像が多数投稿されているほか、ディスカウントストアのAldiは不足している商品のリストをウェブサイトで公開しています。なお、保守派の人々は食料品不足の原因がジョー・バイデン政権にあるとして「#BareShelvesBiden(棚が空っぽだぞバイデン)」というハッシュタグを使っていますが、ニュースメディアのNPRはトランプ政権下でも食料品の供給不足が発生していたことを指摘しています。

COVID, bad weather, supply chain issues equals empty grocery shelves. pic.twitter.com/hMdNHuSWEI

— Edmund Moy (@EdmundCMoy)

Empty grocery store shelves seen around Baltimorehttps://t.co/cTY3yvc0Jv pic.twitter.com/wrgqksEPI3

— FOX Baltimore (@FOXBaltimore)


食品業界のアナリストによると、アメリカの食料品店で商品の払底が起きている背景には複合的な要因があるとのこと。

◆オミクロン株の流行
アメリカでは新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るっており、1月10日にはCOVID-19の新規感染者数が過去最高の140万人に達しています。オミクロン株の流行は食品業界における最大のストレッサーになっているとNPRは指摘。

多数の人々と接触する食料品店の労働者はウイルスに感染する可能性が高いため、従業員の多くがCOVID-19の影響で仕事を休んでいるとのこと。また、食品の生産者・加工業者・出荷業者・配送業者といったサプライチェーンでもCOVID-19の影響は深刻です。世界最大規模の総合食品・農産物製品グループであるコーンアグラ・ブランズのショーン・コノリーCEOは、オミクロン株による欠勤の増加を確認しているとして、「オミクロン株が流行する中で、2月かそれ以降もサプライチェーン内で緊張が続く可能性があるとの予測は、私たち全員にとって完全に合理的です」述べています。

サンフランシスコの食料品店に勤めるサマンサ・ウェブスター氏はニュースメディアのCNBCに対し、約60人いる従業員のうち15人がCOVID-19の影響で休んでおり、倉庫から到着するパレットの数も、荷下ろしを手伝う従業員も足りていないと証言しています。「棚はますます空っぽになっています。1人だけでは部門全体を維持することはできません」とウェブスター氏は話しました。


◆人手不足
COVID-19の影響は自分自身や家族が感染した労働者の欠勤にとどまらず、「食品業界から別の業界への転職」も加速させています。スーパーマーケット関連のウェブサイト・SupermarketGuru.comの編集者であるフィル・ランパート氏は、パンデミックが食料品店を「戦場」に変えたと指摘。従業員はパンデミックの最中も感染の不安におびえながら対面の現場で働く必要がある上に、商品の供給不足や新しい公衆衛生対策について不満を持つ顧客に説明することを余儀なくされました。その結果、多くの人々がスーパーマーケットの仕事を離れ、別の仕事を探すようになったとのこと。

全米食料品店協会が行った調査によると、加盟店や卸売食料品店の多くは「通常時の50%の労働力で店舗を運営している」と回答しており、現場は深刻な人手不足に悩んでいるようです。スーパーマーケットは求職者を引きつけるため、より高い賃金、さまざまなメリット、厳しいセキュリティなどを導入するようになっているとランパート氏は述べていますが、小売業という利益率の低いビジネスで賃金を上げるのは難しい場合もあります。


◆出荷や輸送の問題
アメリカではトラックドライバーの不足が問題となっており、アメリカトラック協会が2021年10月に公開した報告書によると、ドライバー不足は推計8万人と記録的な水準となっています。業界は賃金水準の上昇などで労働者を集めようとしていますが、それでもドライバー不足は解消されていません

商品の出荷や輸送にはトラックが必要不可欠なため、ドライバー不足も食料品店への供給不足の一因となっているとのこと。事態を重く見たアメリカ政府は2021年12月、商用運転免許の取得要件を緩和したり、退役軍人を対象にした採用活動を強化したりする対策を発表しました。


◆気候変動と悪天候
気候変動は以前から食品業界を悩ませ続けている問題であり、地球温暖化の進行や異常気象の増加は世界各地の食料生産を脅かしています。ランパート氏によると、肉・卵・乳製品の生産者はトウモロコシや大豆などの飼料が手に入れにくくなっているほか、ブラジルでは大雨によりコーヒーの収穫量が減少しています。また、悪天候に見舞われたワシントン州では主要道がダメージを受け、アラスカ州への食品輸送が滞るといった影響が出ているそうです。


なお、カリフォルニア食料品店協会のコミュニケーションディレクターを務めるネイト・ローズ氏は、「火曜日の夜には何かが在庫切れになっていても、水曜日には店に商品が補充されている場合も多いですね」と述べ、発生している問題は主に供給遅延であり、完全な供給停止ではないと指摘。「誰もがジャストインタイムのサプライチェーンにすっかり依存するようになりました。私たちが直面しているのは、多少の遅延だけだと思います」とローズ氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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