メモ

電力不足に直面したコソボが仮想通貨マイニングを禁止へ、「法的根拠がなく方法も不明」との指摘も


コンピューターを使って仮想通貨を採掘するマイニングは専門の業者が登場するほどのビジネスとなっている一方で、大量の電気を使うことが問題視されており、一部の国ではマイニングによる電力不足も発生しています。バルカン半島中部に位置するコソボは電力不足を解消するため、「仮想通貨のマイニングを禁止する」と発表しました。

Kosovo bans cryptocurrency mining to save electricity | Reuters
https://www.reuters.com/markets/commodities/kosovo-bans-cryptocurrency-mining-save-electricity-2022-01-04/

Kosovo Experts Question Legality of Cryptocurrency Mining Ban | Balkan Insight
https://balkaninsight.com/2022/01/05/kosovo-experts-question-legality-of-cryptocurrency-mining-ban/

仮想通貨を効率的にマイニングするには大量のコンピューターと膨大な電力が必要であり、仮想通貨は環境に悪いとの指摘も上がっています。2021年2月にケンブリッジ大学が公開した「ビットコイン電力消費指数(CBECI)」によると、ビットコインのマイニングによる消費電力は全世界の総消費電力の0.57%を占めており、オランダやアラブ首長国連邦の年間総消費電力を上回っているとのこと。

こうした事情を背景に、マイニング業者はより電力価格の安い国や地域に拠点を構えたり、環境問題への批判をかわすためにクリーンな電力を求めて原子力発電企業と提携したりしています。ところが、マイニングがあまりにも大量の電力を消費してしまうことにより、発電設備が十分に整備されていない地域で電力不足が発生するケースも指摘されています。

たとえば、2021年に大規模な停電や劣悪な発電設備による大気汚染が深刻化したイランでは、停電を防ぐために仮想通貨のマイニングを一定期間禁止することが発表されました。また、仮想通貨取引が違法化された中国からの脱出先として人気を集めたカザフスタンでも電力不足が深刻化しており、2022年1月にはインターネットが遮断されたことで仮想通貨のハッシュレートに影響が出たと報じられました

「次期マイニング大国」で電力不足が深刻化、事業継続不可能というマイニング業者も - GIGAZINE


バルカン半島中部のコソボも電気料金が安いことから、多くの若者が仮想通貨のマイニングを行っているとのこと。匿名を条件にロイター通信のインタビューを受けたあるマイナーは、月額約170ユーロ(約2万2000円)の電気料金を支払って40個のGPUを使ってマイニングしており、月間の収益は約2400ユーロ(約31万4000円)に上ると語っています。

ところが、2021年からロシアの天然ガス供給が減少してヨーロッパにおける天然ガス価格が急騰しているほか、コソボ国内の石炭火力発電所が故障した影響で、コソボは過去10年で最悪のエネルギー危機に直面しています。2021年12月には、コソボ政府が60日間の非常事態を宣言して政府資金を優先的にエネルギーの輸入に割り当てるほか、2時間ごとの計画停電といった措置も導入されました。

そして2022年1月4日、コソボのArtane Rizvanolli経済・エネルギー大臣が、コソボ全土での仮想通貨マイニングを禁止すると発表しました。「全ての法執行機関は、仮想通貨マイニングを行う場所を特定する他の関連機関と協力し、マイニングを停止させます」とRizvanolli氏は述べています。


コソボ政府のマイニング禁止令に対しては、コソボ国内の専門家から「法的な根拠がない」と非難する声も上がっています。コソボに拠点を置く法律専門家のArber Jashari氏は、東南ヨーロッパのニュースを報じるメディア・Balkan Insightを運営するバルカン調査報告ネットワーク(BIRN)に対し、「仮想通貨マイニングを規制する特別な法律がないことを考えると、マイニングの禁止に関する法的根拠は不十分です」と述べています。

政治学者のKreshnik Gashi氏は政府のマイニング禁止令について、「これは合法ではありません!政府は法律で適切に定義または規制されていない活動を禁止することはできません。法律が必要です」とコメント。マイニングの禁止は実装することが不可能であり、国際的なメディアの注目を集めるものの実際の効果はないPRに過ぎないと強く非難しました。

コソボ政府は2021年10月の時点で、「仮想通貨に関する法律」を2021年末までに採択する予定だとしていましたが、記事作成時点では法律は施行されていません。BIRNは、コソボ経済省に連絡してマイニング禁止令を実装する方法や法的根拠について尋ねたものの、回答は得られなかったとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「次期マイニング大国」で電力不足が深刻化、事業継続不可能というマイニング業者も - GIGAZINE

イランで仮想通貨のマイニングが禁止へ、停電防止のため - GIGAZINE

「電力不足はビットコインのせい」とイラン政府が発表 - GIGAZINE

ビットコイン用に買収された発電所からの排熱で湖が温水に変わってしまう事態が発生 - GIGAZINE

膨大な電力を消費する仮想通貨のマイニング業者は炭素排出量の削減に苦心している - GIGAZINE

ビットコインなど仮想通貨の電力消費量や二酸化炭素排出量を一目でわかるようにした「Coin Carbon Cap」 - GIGAZINE

ビットコインの採掘企業が「原子力発電」と手を組む動きが進んでいる、環境に優しい電力源として - GIGAZINE

国家レベルの電力を消費するビットコインマイニングの消費電力量をケンブリッジ大学が分かりやすく解説 - GIGAZINE

中国が「仮想通貨のマイニングに関わる国営企業の電力価格を上げる」と発表 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.