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IBMとSamsungが「バッテリーが1週間持つスマホ」の実現につながる新型半導体設計を発表、「トランジスタを縦向きに重ねる」という新発想


現地時間2021年12月14日、IBMがSamsungと共同開発した「トランジスタを縦向きに重ねる」という発想の新型半導体設計「Vertical Transport Field Effect Transistors(VTFET)」を発表しました。VTFETは従来型の設計と比べて消費電力あたりの性能を2倍&エネルギー消費量を85%削減できる可能性があり、「充電せずともバッテリーが1週間持つスマートフォン」の実現につながるとされています。

IBM and Samsung Unveil Semiconductor Breakthrough That Defies Conventional Design
https://newsroom.ibm.com/2021-12-14-IBM-and-Samsung-Unveil-Semiconductor-Breakthrough-That-Defies-Conventional-Design

IBM and Samsung say their new chip design could lead to week-long battery life on phones - The Verge
https://www.theverge.com/2021/12/14/22834895/ibm-samsung-vtfet-transistor-technology-advancement-battery-life-smartphone-semiconductor

IBM and Samsung detail ‘breakthrough’ vertical transistor architecture - SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2021/12/15/ibm-samsung-detail-breakthrough-vertical-transistor-architecture/

IBM and Samsung Unveil Vertical Transistor Architecture
https://www.hpcwire.com/off-the-wire/ibm-and-samsung-unveil-semiconductor-breakthrough/

新たにIBMとSamsungが共同開発したのは、既存の「トランジスタを平面上に並べる」という方式とは根本的に異なる「トランジスタを垂直方向に重ねる」というスタイルの半導体設計です。どのような設計なのかを解説する公式ムービーが以下。

IBM and Samsung Unveil Semiconductor Breakthrough That Defies Conventional Design - YouTube


トランジスタとは半導体素子の一種であり、端的に言えばウェハー上に存在するトランジスタの個数が多ければ多いほどそのチップの性能は高くなります。


新たに開発されたVTFETは、トランジスタをウェハーの上に層状に重ねることによって、電流をウェハーに対して垂直側に流すという設計。発表によると、この設計によってトランジスタのゲート長やスペーサーの厚さ、接点サイズなどの物理的制約を緩和できるとのこと。「縦に重ねる」という設計思想の半導体設計は新しいものではありませんが、これまではトランジスタではなくチップコンポーネントを縦に重ねるという方式が主流でした。


この物理的制約の緩和によって、既存のFinFET設計に比べて消費電力あたりの性能が2倍、エネルギー消費量が85%削減される可能性があるそうです。


VTFETによって、充電せずとも1週間バッテリーが持つスマートフォンやエネルギー集約型プロセスによる二酸化炭素排出量の削減が実現可能となるほか、消費エネルギーを削減することによって、海洋ブイ・自動運転車・スペースシャトルなどの多様なデバイスに対してIoTエッジデバイスを搭載できるようになるとIBMは主張しています。


IBMは2021年5月に世界初となる2nmプロセスチップの製造に成功しており、今回のVTFETとあわせて「ムーアの法則を今後も継続できるようにする新たな道を開いた」とコメントしています。

IBMが世界初となる「2nmプロセスチップ」を製造、7nmと比較して45%の性能向上&電力消費は75%減 - GIGAZINE

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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