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Appleの末端従業員が直面している悲惨な労働環境とは?


ビッグ・テックの一角として数えられるAppleは2021年第4四半期にはApple史上最高益となる833億6000万ドル(約9兆4600億円)という巨額の売上を記録しましたが、Appleに属している全ての人がその恩恵を受けられるわけではありません。AppleのカスタマーサービスやAppleストアで働く従業員の悲惨な現状について、IT系ニュースメディアのThe Vergeが報じています。

Apple’s hourly workforce is struggling
https://www.theverge.com/c/22807871/apple-frontline-employees-retail-customer-service-pandemic

The Vergeが記事の冒頭で記しているのが、ノースカロライナ州ダーラムのサウスポイントにあるAppleストアに勤務していたというマーク・カリバス氏の事例です。カリバス氏は2013年に入社した時点ではマラソンと糖質制限ダイエットをたしなむという健康的な人物でしたが、ある日店舗側に配属となった新しいマネージャーに目を付けられたことが転機となりました。このマネージャーは目をかけている部下には昇進や都合のいい勤務を割り当てる一方、そうでない部下については上にバレない形で嫌がらせを行うという人物で、このマネージャーに数年間にわたってひどい仕打ちを受けたというカリバス氏はうつ病で休職。そして2021年9月7日に自殺しました。

The Vergeが報じているのは、Appleの末端で働くカスタマーサービス従業員やAppleストア従業員の悲惨な労働環境に関する問題です。カリバス氏の同僚複数人が問題のマネージャーについてAppleに複数回苦情を提出しましたが、Appleは何の手も打たず、結局マネージャーに関する環境は何一つ変わることはなかったとのこと。マネージャーにまつわる問題は全体のごく一部でしかなく、給料の未払いや処理できないほどの大量の仕事などにみまわれた際にも、従業員が問題を報告できるまともな窓口がAppleには存在しないとThe Vergeは指摘します。


この種の問題の中で最たるものが、労働条件と賃金の問題です。The VergeはAppleの小売チーム・サポートチーム・セールスチームに所属する現役従業員16人に対してインタビューを行いましたが、この従業員のほとんどが「労働条件と賃金に関する苦情はほぼ無視される」と回答し、中には「Appleは小売とカスタマーサービスの職員を下に見ている」と語る人もいたとのこと。

このような問題を生み出している原因の1つが、「査定はアルゴリズムによって決まる」という点です。Appleは「ネットプロモータースコア」という顧客から集計した「あなたは同僚や友人に対して当店のサービスをどの程度薦めたいと思いましたか?」といったアンケート結果によって各Appleストアのパフォーマンスを判断しています。このスコアは顧客満足度に直結しているように思えますが、The Vergeによると実際には「在庫がない」「待ち時間が長い」などの従業員の努力とは無関係な要因によってスコアが左右される場合がほとんどで、従業員のやる気を削ぐ一因になっているとのこと。

Appleはカスタマーサービスにおいても同種のスコアを導入していますが、「査定が給与に結びつかない」という問題も存在します。あるカスタマーサービス職員によると、1日8時間も顧客からのクレーム対応に終始し、最終的には「スコアが良かった」という理由で下位レベルのサービス担当者が質問に答えられなかった場合に代わりに対応する役職に昇進しましたが、結局昇給はなかったとのこと。なお、Appleは在宅勤務者の業務負担が増えているという理由で「シャツを贈る」という企画を実施しましたが、実際に送付されたシャツも新型コロナウイルスで開催中止になったWWDC 2020(Appleの開発者向けイベント)のTシャツだったそうで、このカスタマーサービス職員は「昇給の代わりにこれか」という気分になったとのこと。

by Julie Pimentel

The Vergeによると、このようなカスタマーサービス職員を管理するために、Appleは膨大な数のプログラムと指標を用いて労働者の一挙手一投足を監視しているとのこと。例えば、労働者がトイレに行くなどしてコンピューターから5分以上離れていると、マネージャーから「なぜ働いていないのか」と尋ねる通知が届くことがあるそう。顧客満足度スコアも実質的な満足度から算出されるわけではなく、カスタマーサービスにかかった時間を指す「平均処理時間」という数字に左右されているとのこと。「良い時間」とされる数字は電話なら15分、チャットなら2分とされていますが、特にチャットの場合は繁忙期にはカスタマーサービスを3人分同時に行わなければならない場合もあり、「Apple IDの問題からiCouldの問題を同時並行で3人捌きつつ1人2分で終わらせる」という実現不可能なタスクを要求されるそうです。

さらに管理職の昇進した際の給与もかつてほど良くなく、「Appleで努力して出世しようという気が失せた」という語る従業員もいるほか、ティム・クックCEOの「8億ドル(約955億円)を寄付する」という発言から「社内格差がある」と改めて気づかされた従業員もいるとのこと。

記事冒頭で言及されていたカリバス氏は、親友であるジミー・ベイリー氏が遺体の第一発見者となりました。ベイリー氏はカリバス氏が袋をかぶったまま窒素を吸引して死んでいる様子が発見から1カ月たってもなお夢に出てくると述べ、Appleのティム・クックCEOに対する呼びかけとして「ティム、私はサウスポイントのAppleストアで起こっていた出来事についてあなた宛のメールを送信しました。人事関係の担当者とも話し、私の懸念を伝えました。そちらの手元にある記録を調べるだけで、あんなことは防げたかもしれないと。私はマークの夢をまだ見ます。いつも見るんです」と語りました。

カリバス氏の一件に対し、Appleの広報担当者は「我々の同僚の死に深く悲しんでおり、彼が愛した人々にお悔やみを申し上げます」というメールでコメントしたとのことです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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