アメリカには「ファシズムの10の兆候」がすべて見られると歴史家が主張

「ファシズム」という言葉は強い印象を与えるため、現代政治を語る場で使うと「大げさだ」「歴史的な悲劇を軽く扱っている」と受け取られることがあります。しかし、歴史家のルトガー・ブレグマン氏は自身のYouTubeチャンネルで公開した動画の中で、現在のアメリカにはファシズムの10の兆候がすべて見られると主張しています。
10 Signs of Fascism. America has all of them. - Rutger Bregman
https://rutgerbregman.substack.com/p/10-signs-of-fascism-america-has-all
You're Not Overreacting. This Is Actually Fascism. - YouTube

ブレグマン氏によると、ファシズムには完全に一致する単一の定義があるわけではありません。イタリアの「ファシズム」とドイツの「ナチズム」も同一ではありませんが、美化された過去や指導者崇拝、敵の非人間化、暴力などの特徴が重なり合うことで同じ系統の政治運動として認識できるとのことです。
ブレグマン氏は現在のアメリカに見られるファシズムの兆候として以下の10項目を挙げています。
◆1:美化された過去と国家再生
1つ目は「かつての国は偉大だったが、何者かに壊されたためもう一度取り戻さなければならない」という物語です。ファシズム運動では過去の国家が純粋で強かったものとして描かれ、その状態へ戻ることが目標になります。
ブレグマン氏はトランプ氏のスローガンである「Make America Great Again(アメリカを再び偉大にする)」がこの構造に当てはまると指摘。トランプ氏はアメリカが「内なる敵に裏切られた」と語っており、古い秩序を壊して国を再生させるという発想がファシズム的な国家再生の考え方に近いとブレグマン氏は述べています。

◆2:被害者意識と屈辱感
2つ目は「本来は力を持っているはずの集団を『攻撃され奪われている側』として描くこと」です。ファシズムでは「本物のドイツ人」や「本物のアメリカ人」がエリートやグローバリスト、移民などによって脅かされているという物語が作られ、この被害者意識はやがて復讐の感情につながります。ブレグマン氏は、ファシズムを動かすのは「自分たちは侮辱され本来の居場所を奪われた」という屈辱感だとしてトランプ氏の「I am your retribution(私はあなたたちに代わって報復する存在だ)」という発言を例に挙げています。

◆3:線引きと非人間化
3つ目は「人々を『私たち』と『彼ら』に分け、外側に置いた人々を劣った存在として扱うこと」です。ファシズムでは民族や宗教、国籍などをもとに仲間と敵の境界線が引かれます。移民は単に「不法移民」や「外国人」と呼ばれるだけでなく、害獣やゴキブリのように人間ではないものに例えられることがあります。トランプ氏は移民を「animals(獣)」と呼び、アメリカの血を汚していると表現しました。

ブレグマン氏は「人々を人間以下の存在として扱う言葉が広がると、実際にそのような扱いを正当化しやすくなる」と述べています。
◆4:弱さへの軽蔑
4つ目は「強さを絶対視し、思いやりや妥協を弱さとして扱うこと」です。ファシズムでは社会や政治が常に闘争として捉えられ、強い者が支配するべきだという考え方が前面に出ます。また、思いやりは甘さや退廃と見なされ、国が弱くなったのは柔らかくなりすぎたからだと語られます。ブレグマン氏は、トランプ政権で移民政策などに深く関わってきたスティーブン・ミラー氏がCNNのジェイク・タッパー氏に対し「現実の世界は強さや力、権力によって支配されており、こうしたものは世界が始まって以来の『鉄の法則』だ」と述べたことを例として挙げています。

◆5:議論より行動を重んじる姿勢
5つ目は「議論や熟慮よりもすぐに実行することを重んじる姿勢」です。ファシズムでは考えることや話し合うことが弱さと見なされ、時間をかけた検討は停滞として扱われます。委員会や手続き、妥協といった民主主義の仕組みは遅く退屈なものとして攻撃され、その代わりに「とにかく実行する」「官僚的な手続きを突破する」という態度が称賛されます。ブレグマン氏は、ファシズムでは話し合いよりも強い意志で押し切ることが求められると述べています。

◆6:救世主としての指導者
6つ目は「指導者を『国民の意志を1人で体現する存在』として扱うこと」です。民主主義において指導者は法律や制度によって制約され、有権者に責任を負います。しかしファシズムにおいて指導者は単なる公職者ではなく、国家の意志を体現する存在として扱われます。
ブレグマン氏はその例としてトランプ氏の「I alone can fix it(私だけが解決できる)」という発言を挙げ、「指導者個人の不満は国家の不満と重なり、指導者の敵は国家の敵になる」と述べています。そのため、指導者に反対することが国民そのものに反対することのように扱われます。

◆7:制度の浄化
7つ目は「専門性や独立性よりも指導者への忠誠を優先すること」です。ファシズム体制では能力や経験よりも、その人物が運動や指導者に忠実かどうかが重視されます。その結果、公務員制度や軍、大学などは、十分に忠実ではない人々を取り除く対象になります。ブレグマン氏は大量解雇や忠誠テスト、権力を監視する機関の解体は、ファシズム研究者にとって予想外の動きではないと述べています。

◆8:プロパガンダと真実への攻撃
8つ目は「大量のうそや攻撃的な宣伝によって、何が事実なのかを分かりにくくすること」です。ファシズムではジャーナリストが「人民の敵」とされ、大学への資金が削られ、科学者は沈黙させられます。また、虚偽を検証できる人々は信用を傷つけられるか、排除されるとのこと。ブレグマン氏は、その目的は特定のうそを信じ込ませることだけではなく、大量の情報やうそで人々を疲れさせ、本当のことなど分からないと思わせることだと述べています。

◆9:国家権力と大企業の結びつき
9つ目は「国家権力と大企業が近づき、結びつくこと」です。ファシズムは権力を得る過程で大資本と手を組むことがあります。ムッソリーニの台頭は産業界に支えられ、ポルシェやフォルクスワーゲン、BMWの背後にいたドイツの財閥もナチス体制と深く結びついていました。
その上でブレグマン氏は、マーク・ザッカーバーグ氏やイーロン・マスク氏のようなテクノロジー業界の大物がトランプ氏の就任式の前列にいたことについて、通常のロビー活動や汚職ではなく国家権力と資本の構造的な結びつきだと主張しています。

◆10:暴力と恐怖
10項目の最後に挙げられているのが「暴力と恐怖」です。歴史上のファシズムは思想や演説だけではなく、街頭での暴力とも結びついていました。ムッソリーニには黒シャツ隊があり、ヒトラーには褐色シャツ隊(突撃隊)がありました。ブレグマン氏はこうした準軍事組織は運動を守るだけではなく、それ自体が運動の一部だったと述べています。
現在のアメリカの例としては、アメリカ移民・関税執行局(ICE)が挙げられています。戦術装備を身に着けた連邦職員が夜明けに人々を家から連れ出したり、覆面の男たちが学生を路上で拘束したり、乳児が乗った車のそばで催涙ガスが使われたりすることなどから、ブレグマン氏は「市民か非市民かを問わず、人々が占領地の敵のように扱われている」と指摘しています。
さらにICEの予算は世界の多くの国の軍事予算を上回っており、新たな収容施設の開設や職員の募集も進んでいます。ブレグマン氏は、公然と行われる暴力には「次はあなたかもしれない」というメッセージがあると述べています。

ブレグマン氏は「ファシズム」という言葉を政治的なスローガンとして使うべきだと主張しているわけではありません。重要なのは言葉そのものではなく、美化された過去や非人間化、プロパガンダ、暴力などが重なっていく行動のパターンを見極めることだと語っています。
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