乗り物

数時間の充電で180km走行可能な電動自転車バッテリーを自作した男性が登場


環境問題に対処するべくガソリン車から電気自動車への転換が進む中、モーターの力で走行可能な電動自転車はより環境に優しい乗り物として注目を集めています。しかし、電動自転車はバッテリーの問題から航続距離が制限されている上にこまめな充電が必要なため遠出には向いていません。エンジニアのJacques Mattheij氏は、そんな市販の電動自転車のバッテリーを自作のものに交換し、航続距離を大幅に伸ばした体験談を公開しています。

Long Range E-Bike · Jacques Mattheij
https://jacquesmattheij.com/long-range-ebike/

Mattheij氏が住むオランダは自転車大国であり、電気自動車よりも多くの電動自転車が販売されているそうです。実際にMattheij氏もいくつかの電動自転車を乗り継いでおり、自動車に乗る頻度は以前の半分以下に減少したとのこと。また、自動車事故で足にプレートとネジが入っているMattheij氏にとって、通常の自転車よりこぎ出しがスムーズな電動自転車はよい乗り物だと述べています。

しかし、電動自転車には自動車やロードバイクより最高速度が遅かったり、バッテリーの問題から航続距離が短かったりするという難点があります。実際にMattheij氏は、最初に買った電動自転車で片道55kmの距離を走ったところ、行きだけでバッテリーが切れてしまった経験があるとのこと。その後は替えのバッテリーを持ち運ぶようになったそうですが、乗り継いだ電動自転車でもやはりバッテリーに不満を感じ続けたMattheij氏は、自分で大容量バッテリーを作って航続距離を伸ばす計画をスタートしました。


Mattheij氏はまず、市販のボッシュ製電動自転車を分析して、バッテリーがどのように機能しているのか、バッテリーの動作を監視・制御するバッテリーマネジメントシステム(BMS)の仕組みはどうなっているのか、充電プロセスはどうなっているのかなどを調べたとのこと。

新たに作る大容量バッテリーにボッシュ製電動自転車のBMSを流用しようと考えたMattheij氏でしたが、ボッシュのBMSにはサードパーティーのバッテリーでの使用を妨げるシステムがあるほか、既存のバッテリーにセルを追加すると故障する危険性もあったとのこと。そこでMattheij氏は、Ali Expressで購入した外部のバッテリーバランサー(各セルの電圧を維持する装置)とボッシュ製BMSを組み合わせるシステムを考案。実際に10個のセルを使った小規模なバッテリーを組み上げて、バッテリーバランサーとBMSが同時に動作することを確認しました。

一般的な電動自転車のバッテリーは、18650リチウムイオン電池(直径18mm、長さ65mm)を40~50セル集めたものとなっていますが、Mattheij氏はセルの数を増やして大容量バッテリーを作るため、合計190個のSamsung製セルを約600ユーロ(約7万8000円)で購入しました。その後、セルを組み合わせたバッテリー製造、スポット溶接のテクニック、トラブルシューティング、自作バッテリーで起きうる問題に関する無数のYouTubeビデオを見たとのこと。


いくつかのビデオを見たMattheij氏は、数十~百を超えるバッテリーを直列および並列で接続するのは「生きた爆弾」で作業するようなものであり、自分が行っているのがかなり危険な作業であることに気付いたと述べています。しかし、Mattheij氏はこの気付きによって作業を中断することはなく、より慎重になって作業を進めることにしたそうです。

190個のセルで構成されるバッテリーはかなり大きくなるため、当初は自転車の背後にバッテリーを積む方式を考案していました。ところが、実際にバッテリーの代わりにレンガを積んで試乗したところ、重心が高く後ろに寄っているため、操縦が難しいという問題に行き当たったそうです。その結果、安全性を考えてバッテリーはフレームの真ん中に挟むことにして、使うセルも190個ではなく170個に減らすことにしたとのこと。以下の画像は、製作前にバッテリーを入れる箱をフレームにはめ込んだ時の様子です。


バッテリー用の箱を非導電性の樹脂板で作成したMattheij氏は、リチウムイオン電池のセルを結合する危険な作業に入りました。事前にYouTubeビデオなどで危険性を理解していたため、まずはBMSやバッテリーバランサーの配線・寸法・セルの数などを入念に検討したほか、10個のセルを1つのパックとして結合する前に、合計170個のセルの容量や内部抵抗などを2回ずつ調べて問題がないか確かめたと述べています。

そしてパックを溶接する際には、家の中で一番大きな電力を供給できるオーブンが接続されているソケットに溶接機をつなぎ、オーブンの上で作業したそうです。また、可能な限り電力供給に支障が出ないよう、近隣の家が消費する電気が小さい夜間に溶接を行ったとのこと。


実際に170個のセルを接続し、バランサーやBMSを配線したバッテリーがこれ。フレームに合わせた形状になっています。


樹脂製の箱に入れるとこんな感じ。試しに最初の充放電を行ってみたところ、容量は通常の電動自転車の4倍近い2150Whに達したそうです。


Mattheij氏はさっそく作ったバッテリーを電動自転車に搭載して、2021年11月に最初のテストを行いました。すると、満充電したバッテリーは自宅と65km先の都市を往復しても切れることはなかったとのこと。「つまり、合計130kmの距離をわずか数時間で走ることができたのであり、この自転車は自動車の代替品として実用可能です。(自動車と比べれば)少し遅くてそれほど多くの荷物を積むことはできませんが、はるかに安くて気候にも優しいです」と、Mattheij氏は述べています。

その後のテストでは、フル充電時の航続距離は180kmに達し、「エコ」モードでは500kmを超えたそうです。記事作成時点では依然として「実験中」であり、バッテリーのフタは不格好にテープで閉じられていますが、1か月が経過した時にバッテリーの状態をチェックして問題がなければ、全体を磨いて正式に取りつける予定だとのことです。

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in ハードウェア,   乗り物,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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