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権力を握った人が「愚かな決断」をしてしまうのは一体なぜかを専門家が解説


企業の経営者から一国の元首まで、社会的な地位が高い人は多くの決断を行いますが、時には近視眼的な選択をしてしまうこともあります。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学などでリスクカルチャーを教えた経歴のある非常勤講師で、組織心理学の研究者でもあるダニエル・デ・ジルバ氏が、「権力の座に登り詰めた人が判断を誤ってしまうのは一体なぜなのか」を解説しました。

3 reasons people with power are more likely to make bad decisions
https://theconversation.com/3-reasons-people-with-power-are-more-likely-to-make-bad-decisions-169017

デ・ジルバ氏は、これまで行われてきた研究や実験の結果から、権力者が陥りがちな問題を以下の3つに分類しました。

◆1:他者の視点に立てなくなる
組織を率いる立場の人にとって、他者の視点に立つことは重要な意味を持ちます。しかし、「自分は力を持っている」と感じている人は、自分の見解を過大評価するあまり他の人の視点を軽視してしまう傾向があることが、2006年の研究で分かっています。

社会心理学者のアダム・ガリンスキー氏らはこの研究の中で、まず参加者の一部に「自分が誰かに関する権力を握った時」か「誰かが自分に対する権力を持った時」を連想するよう指示して、「自分は強いと思っているグループ」「自分は弱いと思っているグループ」「指示を受けていない対照群」を作りました。

次に、各グループの参加者に他の人の目線で考える能力を測定する3種類のテストを受けてもらったところ、「自分は強い」と思っているグループは、対照群に比べて他の人の感情をくみ取るテストの成績が6%低下したとのこと。また、「自分は強い」と思っているグループは、「自分は弱い」と感じているグループに比べて、メールの文章から不快感を見抜く能力が低くなったことも分かりました。


◆2:専門家のアドバイスを否定する
「自分に力があると感じている人は専門家のアドバイスが耳に入らなくなってしまう」という傾向は、組織行動学を研究している社会学者のレイ・トスト氏らが2012年に発表した研究から判明しました。

この研究ではまず、ガリンスキー氏らが行った前述の実験と同じ方法で、参加者を「自分は強いと思っているグループ」「自分は弱いと思っているグループ」に分けました。そして、各参加者をいくつかのグループに分けてから、人の体重を言い当てるといった予想テストを実施しました。


最初のグループの参加者の予想テストが終わった後、次のグループの参加者は最初のグループの参加者からアドバイスや意見をもらいました。そして、助言者がいい回答をした「専門家」なのか、平凡な答えをした「初心者」なのかを実験担当者から教えられてから、同じ予想テストを受けました。

この実験の結果、自分は弱いと思っている人は「専門家」のアドバイスに耳を傾ける傾向があった一方で、自分は強いと思っている人は「専門家」の意見にも「初心者」の意見にも耳を貸さないことが分かりました。この結果について、研究チームは「専門家からのアドバイスを却下してしまうのは、自分の社会的優位性を保ちたいという欲求があるから」と結論づけています。


◆3:制限を無視する
デ・ジルバ氏によると、権力を持っている人はそうでない人に比べて自由に振る舞えるため、目標を追うあまり制約を認識できなくなる可能性が高いとのこと。これは、テキサス大学オースティン校で経営・組織学を研究しているジェニファー・ウィットソン准教授らの研究チームが2013年に発表した研究で裏付けられています。

この研究の中でウィットソン准教授らは、ガリンスキー氏らと同じ手法で参加者をグループ分けした後で、参加者に「資金が少ない」などビジネスの妨げになる制約条件を9つと、「需要が高い」などビジネスの追い風になる条件を9つ伝えました。すると、自分は強いと思っているグループは弱いと思っているグループに比べて、後で制約条件を思い出す精度が低いことが分かりました。

この実験結果についてデ・ジルバ氏は「制約を無視するのも時に有効です。例えば、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズには、iPodを開発する際に『そんなものはとても作れない』と言うエンジニアの話を却下したとの逸話があります。しかし、ジョブズを意識していつも黒のセーターを着ているという医療ベンチャー・Theranosの創業者のエリザベス・ホームズ氏が、『開発中の小型の医療用装置が実現不可能だ』という事実を無視した結果、同氏は詐欺罪で訴えられてしまいました」と述べました。

by Kazuhiro Shiozawa

また、デ・ジルバ氏は権力者が陥りがちな3つ問題をまとめて、「異なる意見を尊重し、専門家のアドバイスに耳を傾けることがかつてないほど重要になっている現代では、権力が持つこれらの問題を忘れてはなりません。今回の新型コロナウイルスのパンデミックの経験から、権力は分散させるほうがいいことが分かりました。つまり、私たちが必要としているリーダー像とは、権力は腐敗するものだということを理解し、謙虚に耳を傾ける人なのです」と結論しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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