サイエンス

氷の台座に石が鎮座する日本庭園っぽい自然現象「バイカル禅」の原理が解明へ


ロシア南東部のバイカル湖で冬に発生する「氷の台座の上に石が乗っているかのような現象」は、日本の庭園にちなんで「Zen stone(バイカル禅)」と呼ばれます。バイカル禅がなぜ発生するのかは科学的に不明であったところ、研究者がラボの中でバイカル禅を再現することに成功し、その原理を公開しました。

Zen stones naturally placed atop pedestals of ice: a phenomenon finally understood | CNRS
http://www.cnrs.fr/en/zen-stones-naturally-placed-atop-pedestals-ice-phenomenon-finally-understood

Physicists may have cracked the case of “Zen” stones balanced on ice pedestals | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/09/physicists-may-have-cracked-the-case-of-zen-stones-balanced-on-ice-pedestals/

バイカル禅は以下のようなもの。これまでバイカル禅は「石が太陽光で熱され、石の下にある氷を溶かすことでこのような形になるのではないか」と考えられてきました。

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フランス国立科学研究センター(CNRS)の物理学者であるNicolas Taberlet氏とNicolas Plihon氏は新たな論文で、バイカル禅の発生は熱伝導によるものではなく昇華が関係していることを明らかにしました。昇華は物体が液体を経ずに固体から気体に変化する現象をいいます。

研究者によると、石は下にある氷に「影」を提供することで、日光が氷を直接昇華させることを妨ぐとのこと。一方で、石から離れた場所は昇華率が高くなるので、石の周囲から昇華が起こり、最終的に台座が形成されるそうです。以下が実験室で再現されたバイカル禅発生の様子。画像をクリックするとムービーが再生されます。


バイカル禅の発生原理を突き止めるために、研究者は熱伝導仮説の検証からスタートしました。しかし、熱伝導率の異なる銅とアルミニウムのディスクを使って実験したところ、同様にバイカル禅が生まれることが示されました。ここから研究者は「石の熱伝導は重要な要素ではない」と結論付け、昇華仮説を立ててシミュレーションを実施したところ、現象が確認されたとのこと。台座を囲むようにくぼみができるのは遠赤外線の影響で石の周囲の昇華率が高まるためだと結論付けられました。

世界にはさまざまな奇岩が存在し、その発生原理は異なります。バイカル禅と似たような現象に「Glacier tables(氷河テーブル)」というものもありますが、氷河テーブルは昇華ではなく、氷が溶けることで発生するとのこと。

バイカル禅の発生原理はペニテンテと呼ばれる自然現象と同様と考えられていますが、ペニテンテは冥王星でも発生しており、また昇華の影響は火星・冥王星・セレスなどさまざまな星で確認されていることから、今回の研究は宇宙への理解を深めるものになると考えられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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