サイエンス

新型コロナウイルス感染症は脳にどのような影響を及ぼすのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は発熱・喉の痛み・せきなどの症状を引き起こすものであり、心肺や脳にまで影響を与えるという可能性も一部で報告されています。そんなCOVID-19が脳にどのように影響を与えるのかについて、フローリー神経科学精神衛生研究所の神経学者、トレバー・キルパトリック氏とスティーブン・ペトロウ氏が解説しています。

How does COVID affect the brain? Two neuroscientists explain
https://theconversation.com/how-does-covid-affect-the-brain-two-neuroscientists-explain-164857

◆新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどのように脳に到達するのか?
キルパトリック氏らによると、2002年頃に確認されたSARSや2012年頃に確認されたMERSに感染し回復した人々のうち、約15~20%がうつ病や記憶障害、倦怠(けんたい)感を経験したとのこと。COVID-19に関してはこれらの感染症とは違い、血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する血液脳関門を新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が通過できるという決定的な証拠はないとのことですが、一部の研究では、SARS-CoV-2が鼻の粘膜から中枢神経系に侵入し、脳脊髄液まで到達する可能性も示唆されています。


◆COVID-19はどのように脳にダメージを与えるのか?
2021年6月に査読前論文として発表された研究では、SARS-CoV-2への感染前後の脳画像を比較し、大脳辺縁系の一部が感染後に縮小していることが示されました。キルパトリック氏らはこの研究を「COVID-19が脳疾患を発症する危険性を高めたことを示している可能性がある」と評しています。

New evidence suggests that the coronavirus’s assault on the brain could be multipronged. https://t.co/pQwyadbftY

— nature (@Nature)


COVID-19は血栓を発生させて動脈の閉塞を引き起こし、脳への栄養素の供給を妨害するなど、間接的にも脳に影響を与える可能性があります。また、腸内細菌叢(そう)に影響を与えたり、下垂体に影響を与え、長期的な倦怠感の一因となるコルチゾールの産生量を減少させたりといった可能性もあるとのこと。

COVID-19の症状が長期的に続く「Long COVID」と呼ばれる現象も多数報告されていることから、キルパトリック氏らは「長期的なCOVID-19の影響は計り知れず、症状の原因を理解することが重要。引き続き感染拡大を防ぐ努力が必要だ」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

新型コロナウイルスが脳に侵入している可能性が高いという研究結果 - GIGAZINE

新型コロナから回復した人の一部が経験する「認知症のような症状」の実態とは? - GIGAZINE

新型コロナウイルス感染症は軽症でも脳に深刻な障害をもたらすという研究結果 - GIGAZINE

新型コロナウイルスが脳にまで影響を与えるという可能性 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.