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スマホ監視ソフト「Pegasus」が20カ国で180人以上のジャーナリスト監視に用いられていた可能性


スマートフォン監視用ソフトウェアとしてイスラエルのセキュリティ企業NSO Groupが開発した「Pegasus(ペガサス)」が、少なくとも180人以上のジャーナリストの監視に用いられていたことがわかりました。監視対象として挙げられた電話番号の数は5万件に上るとのことですが、NSO Gruopは「そのレポートには確かな裏付けがない」として、内容を否定しています。

Pegasus: The new global weapon for silencing journalists • Forbidden Stories
https://forbiddenstories.org/pegasus-the-new-global-weapon-for-silencing-journalists/


Forensic Methodology Report: How to catch NSO Group’s Pegasus | Amnesty International
https://www.amnesty.org/en/latest/research/2021/07/forensic-methodology-report-how-to-catch-nso-groups-pegasus/

Private spy software sold by NSO Group found on cellphones worldwide - Washington Post
https://www.washingtonpost.com/investigations/interactive/2021/nso-spyware-pegasus-cellphones/

Revealed: leak uncovers global abuse of cyber-surveillance weapon | Surveillance | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/jul/18/revealed-leak-uncovers-global-abuse-of-cyber-surveillance-weapon-nso-group-pegasus

この「Pegasus」に関するレポートは、10カ国・17社の報道機関から80人以上のジャーナリストが参加している世界的共同事業体「Pegasus Project」が発表したものです。プロジェクトは、国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルのセキュリティ研究所の技術支援を受け、ジャーナリストの活動を助けるNPO・Forbidden Storiesが取りまとめています。


レポートによれば、調査チームはNSO Groupの顧客が監視のために挙げた5万件以上の電話番号リストを分析。その結果、少なくとも10件の顧客により、20カ国・180人以上のジャーナリストの電話番号が監視されていたことが明らかになっています。

Forbidden Storiesによると、該当する国はメキシコ、イギリス、フランス、スペイン、ハンガリー、トルコ、レバノン、エジプト、モロッコ、アルジェリア、トーゴ、ウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国、カザフスタン、アゼルバイジャン、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦、インド。監視対象は、以前から指摘されていたジャーナリストや人権擁護活動家だけではなく政敵、実業家、果ては国家元首すらも含まれていたとのことです。


監視対象となっているジャーナリストは、すでに脅迫を受けたり、あるいは逮捕されたりしている事例があるとのこと。また、こうした迫害から逃れるために国外へ脱出したものの、なおも監視が続いていたという事例も報告されています。2018年10月に在トルコ・サウジアラビア総領事館を訪問したあと行方不明となり、領事館内で殺害されたとみられているジャーナリストのジャマル・カショギ氏のように、命を脅かされることもあるとForbidden Storiesは指摘。

ジャーナリスト保護委員会のプログラムディレクターであるカルロス・マルティネス・デ・ラ・セルナ氏はForbidden Storiesに対し、「ジャーナリストに対する監視は、非常に強い萎縮効果をもたらします。これは、ジャーナリストが使命のために敵対的環境で働いている状況に限らず、アメリカや西欧諸国その他でも、誰もが真剣に受け止めなければならない、非常に重要な問題です」と語ったとのこと。

なお、「Pegasus」の開発元であるNSO Groupは、Forbidden Storiesとそのメディアパートナーに対して、「契約上および国家安全保障上の理由から、我々の政府顧客の身元を確認したり否定したりすることはできない」と回答。その上で、Pegasus Projectによるレポートは「誤った仮定」と「確証のない理論」に基づいたものであり、調査グループが分析した5万件の電話番号データについて「Pegasusを使用している政府が標的にした電話番号リストであるはずがない」と否定。Pegasusの用途について「お客様の具体的な諜報活動は把握していませんが、情報に関して初歩的・常識的な理解として、この種のシステムは主に監視以外の目的で使用されているという明確な結論に至ります」と回答したとのことです。

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in ソフトウェア, Posted by logc_nt

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