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なぜ地熱発電の普及は遅々として進まないのか?


地球温暖化や環境汚染を防ぐ上では、再生可能エネルギーを活用して温室効果ガスなどの排出を抑えることが重要になることから、太陽光発電や風力発電が盛んになっています。一方地熱発電については、世界有数の火山大国である日本でさえ、(PDFファイル)地熱発電が全体に占める割合が2018年時点で0.2%と、他の再生可能エネルギーほど利用が進んでいないのが現状です。「燃料不要で半永久的に利用できる再生可能エネルギーの地熱発電が一体なぜ普及しないのか?」という疑問について、ブロガーのオースティン・バーノン氏が考察しました。

Is Geothermal Really Going to be a Thing? - Austin Vernon's Blog
https://austinvernon.eth.link/blog/geothermal.html

バーノン氏によると、地熱発電を難しくしている要因としては以下の3点が挙げられるとのこと。

◆1:岩の熱伝導の遅さ
地熱発電をする場合、冷たい液体などを地下の高温の岩石に送り込んで熱を取り出し、冷えた岩石が周囲から再び熱を供給されるというサイクルを繰り返すのが一般的です。しかし、岩石の熱伝導率は銅の100分の1程度と、非常に遅いとのこと。そのため、発電をするのに十分な熱を得るためには大量の熱い岩石が必要になってしまいます。


◆2:効率の低さ
平均的な地熱発電所は、熱エネルギーの12%を電気に変換しており、この変換効率が20%を超えるものはほとんどありません。一方、最新の天然ガスコンバインドサイクル発電所の熱効率は65%に達するとのこと。

熱機関の効率は、熱源の温度と外部の温度の差によって決まります。そのため、地熱から発生させた数百度程度の熱水より、数千度に達する天然ガスの火力のほうがはるかに高い効率でエネルギーを取り出すことが可能です。熱の変換効率が低い発電所では、同じ電力を得るにも大きな設備が必要なため、建造にかかる費用やランニングコストがかさむことになり、これが地熱発電の足を引っ張っていると、バーノン氏は指摘しました。

◆3:掘削コスト
基本的に、地下深くまで掘削すればするほど高温の岩石があるため、深い位置の岩石を利用する地熱発電ほど効率が良くなります。しかし、地下深くまで掘削を行う際に問題となる掘削コストは、深さに比例して増加するのではなく、深く掘るに従って指数関数的に増大していきます。

例えば、一般的な掘削技術では坑井を安定させ、周囲の岩盤から坑井内に水などが入らないように、高い圧力を持った掘削液を注入しながら掘る方法が取られます。ドリルが地下深くに到達するに従って、掘削液の圧力も高くする必要がありますが、あまり圧力を高くしすぎると、今度は浅い部分の岩盤が破壊され坑井が崩壊するといった問題が生じます。これを防ぐため、深くまで掘削する場合はケージングと呼ばれる鉄パイプで坑井を保護することになりますが、ケージングを多用すると坑井が巨大化してコストも増大します。こうした技術的な問題が、地熱発電を始めるのに必要な掘削コストを増加させているとのことです。


記事作成時点で実用化されている地熱発電技術には、地熱貯留層の熱水を使う従来方式や、注入した水から熱を得る高温岩体地熱発電といった「オープンループシステム」や、地下に密閉した配管を埋設して冷媒を循環させる「クローズドループシステム」といったものがありますが、いずれも地震発生のリスクや効率、コストといった課題を抱えています。掘削についても同様にコストの観点から、プラズマやレーザーなどを用いる複雑な技術より、空気や水などを用いる比較的シンプルで長く使われている技術を用いる方が、実用的な場合が多いそうです。

こうした点からバーノン氏は、「地熱発電がニッチな価値以上のものを生み出すためには、非常に安価に発電できるようになる必要があります。そのためには地熱井は深く掘らなければならず、また掘削も低コストでなければなりません。一方、太陽光発電や風力発電、それらのエネルギーを蓄えるバッテリーがどんどん安価になっているため、地熱発電が政府などの援助なしでスケールアップする余地はほとんどないのが実情です」と結論づけました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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