サイエンス

人間の汗から発電可能なバイオ燃料電池が開発される、寝ている時でもウェアラブル端末を充電できる可能性


カリフォルニア大学サンディエゴ校のエンジニアグループが、指先に装着して人の汗から少量の電力を生成することができる薄くて柔軟なバイオ燃料電池を開発しました。このバイオ燃料電池は着用者が運動して大量に汗をかいている時だけでなく、眠っている時や座っている時でも電力を生成することができるため、ウェアラブル端末にとって貴重な電力源となる可能性があります。

A passive perspiration biofuel cell: High energy return on investment: Joule
https://www.cell.com/joule/fulltext/S2542-4351(21)00292-0

Calling all couch potatoes: This finger wrap can let you power electronics while you sleep
https://techxplore.com/news/2021-07-couch-potatoes-finger-power-electronics.html

今回発表されたバイオ燃料電池は、指先に巻き付けることができる非常に薄くて柔軟なフィルム状のもの。カーボン製の電極で汗を吸収することで、電気エネルギーに変換することが可能です。電極部分には「汗に含まれる乳酸と酸素分子」の化学反応を引き起こすための酵素が備わっており、電極の下には圧電材料で作られたチップが搭載されています。これにより、フィルムを巻いた指でものを押すことで、追加の電気エネルギーを生成することが可能です。


人の汗から電力を生成できるバイオ燃料電池を開発したカリフォルニア大学サンディエゴ校のエンジニアグループに所属するLu Yin氏は、開発したバイオ燃料電池について、「他の汗から電力を生成する装置とは異なり、『運動などの大量に汗をかくシチュエーション』や『物理的な入力』を必要としないため、非常に実用的です。このフィルムを使えばウェアラブル端末をより実用的かつ便利で人々の日常生活に溶け込んだものにすることができます」と語りました。

このフィルムを指先に巻き付けることで、ウェアラブル端末の電源として使用することが可能。カリフォルニア大学サンディエゴ校のナノエンジニアリング学科のジョセフ・ワン教授は、「このフィルムの目標は、ウェアラブル端末を自然に動作させることができるようにすることで、バッテリーについて考える必要をなくすことです」と語りました。


バイオ燃料電池は指先から出る汗から電力を生成します。指先は体の中で最も多く汗をかく部位のひとつで、指先には1000以上の汗腺が存在しているため、体の他の部位よりも100~1000倍近く多い汗を出すことが可能です。

Yin氏は「指先よりも他の部位の方が多く汗をかくと感じる理由は、それらの部位が十分に換気されていないためです。対照的に、指先は常に空気にさらされているので、汗は瞬時に蒸発します。そこで、汗を蒸発させるのではなくデバイスの発電用に使用することで、効率よく電力を生成することが可能です」と、指先にバイオ燃料電池を取り付ける理由を説明しています。


フィルムは人の汗からだけでなく、軽く押すことでも電力を生成することが可能です。そのため、指にバイオ燃料電池を装着したままタイピングやマウスのクリック、ピアノの演奏、モールス信号の入力などを行うことで、発電が可能となります。


1本の指にフィルムを着けて10時間眠ったところ、バイオ燃料電池は約400ミリジュールのエネルギーを収集することに成功しています。これは電子時計に24時間分の電力を供給するのに十分なエネルギー量です。他にも、フィルムを指に巻いたまま1時間のタイピングやマウスクリック作業を行ったところ、バイオ燃料電池は約30ミリジュールのエネルギーを収集することに成功しています。なお、バイオ燃料電池フィルムを全ての指に巻きつけることで、10倍のエネルギーを生成することが可能となるそうです。


フィルムを着けた人が汗をかいたりフィルムを押し込んだりすると、電気エネルギーが発生するわけですが、この電気エネルギーは小さなコンデンサに蓄えられ、必要に応じてデバイスに給電されます。

Yin氏は「我々の目標はバイオ燃料電池を用いたデバイスを実用的なものにすることです。このバイオ燃料電池が、少量のエネルギーを生成できる単なるクールなものではないことを示したいと思います。実際に汗から生成したエネルギーを使用して、センサーやディスプレイなどの電子機器に電力を供給することも可能です」と語りました。

エンジニアグループはこのフィルムをさらに改良し、より効率的で耐久性のあるものにすることを目指しており、将来的には別の種類の発電装置と組み合わせることで、新世代のウェアラブルシステムを開発することを視野に入れているそうです。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii

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