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サハラ砂漠全体をソーラーパネルで覆い尽くすと何が起こるのか?


二酸化炭素排出量を削減して気候変動を抑えるために、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに対する注目が高まっています。そんな中、科学系YouTubeチャンネルのRealLifeLoreが「サハラ砂漠全体にソーラーパネルを敷き詰めたら一体どうなるのか?」という思考実験について、解説を行っています。

What If We Covered the Sahara With Solar Panels? - YouTube


サハラ砂漠は中国と同じくらいの面積を誇る世界最大の砂漠で、高い気温と長い日照時間が特徴です。


以下は、地球全体の日照時間の分布図です。北アメリカや南アメリカ、アフリカ南部にも日照時間の長いエリアがありますが、サハラ砂漠周辺は広範囲にわたって日照時間が長いことが分かります。


サハラ砂漠で最も日照時間が長いエリアは、年間4000時間以上日光に照らされています。


また、サハラ砂漠にはほとんど雨が降らず、雲ひとつない快晴の日が続きます。


これらの理由から、サハラ砂漠はソーラーパネルを敷き詰めた太陽光発電所を建設する場所として適切だと言えます。


大規模な太陽光発電所の例としては、モロッコのワルザザートに位置する太陽光発電所が挙げられます。


この太陽光発電所は集光型太陽熱発電所に分類される発電所で、太陽の熱を利用することで日中だけでなく夜間にも発電することが可能。建設中の施設も含む全ての施設が稼働すると、100万世帯に電力を供給できるとされています。


サハラ砂漠に太陽光発電所を建設する場合、ほんのわずかな範囲にソーラーパネルを敷き詰めるだけでドイツ全土に電力を供給できるほどの発電が可能です。


ソーラーパネルを敷き詰める範囲を広げればヨーロッパ全体に電力を供給可能で……


以下の図の左端の赤枠ほどの面積にソーラーパネルを敷き詰めれば、世界中に電力を供給可能です。


世界中に電力を供給するために必要な面積は、ニューメキシコ州と同じくらいです。


RealLifeLoreによると、サハラ砂漠には2500万人の人々が暮らしていますが、人口密度が低いため、太陽光発電所の建設の際に大きな問題にはならないとのこと。


実際にサハラ砂漠に大規模な発電所を建設する「デザーテック」構想がヨーロッパの企業によって打ち立てられたこともあります。しかし、記事作成時点ではサハラ砂漠への太陽光発電所の建設は実現していません。


サハラ砂漠への太陽光発電所の建設が困難な理由として、RealLifeLoreは「輸送の困難さ」を挙げています。以下の図はサハラ砂漠の主要な道路を示していますが、広大なサハラ砂漠の一部にしか道路が通っていないことが分かります。


太陽光発電所を建設する際には、大量のソーラーパネルに加えて数多くの関連資材を建設予定地へ運び込む必要がありますが、道路が整備されていないサハラ砂漠では物資の輸送が困難です。


また、世界中に電力を供給するには514億枚のソーラーパネルが必要で、そのコストは51兆ドル(約5600兆円)に及びます。


仮に輸送面やコスト面の問題が解決できて、さらにサハラ砂漠全体にソーラーパネルを敷き詰めることに成功した場合、年間130万テラワットの電力を供給可能です。


2019年に人類が消費したエネルギーの合計は17万3000テラワットであることから、サハラ砂漠全体にソーラーパネルを敷き詰めると人類が消費する全エネルギーの7倍のエネルギーを産出可能な計算になります。


しかし、それほど大規模な太陽光発電所を建設すると、地表と空気中の寒暖差が激しくなり上昇気流が発生すると考えられます。


発生した上昇気流は雲を発達させ、サハラ砂漠に雨をもたらします。


すると、サハラ砂漠全体が緑化する可能性があるとRealLifeLoreは指摘しています。


「緑化」と聞くと良い影響に思えますが、実際にはそうではありません。サハラ砂漠から舞い上がった砂はヨーロッパや南アメリカなど、世界中に到達して生態系に影響を与えていますが……


サハラ砂漠が緑化すると舞い上がる砂の量が減少し、世界中の生態系が変化してしまうおそれが出てきます。


しかし、サハラ砂漠の緑化はサハラ砂漠全体にソーラーパネルを敷き詰めた場合に考えられることで、ニューメキシコ州と同等の面積にソーラーパネルを敷き詰めることは十分現実的だとRealLifeLoreは語っています。

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in 動画, Posted by log1o_hf

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