サイエンス

有効性約92%以上、キューバ産の新型コロナワクチン「Abdala」が登場


社会主義国家であるキューバで、新型コロナウイルスワクチン「Abdala(アブダラ)」が開発されました。国営のバイオテクノロジー企業であるBioCubaFarmaは、Abdalaの有効性は約92.28%と、ファイザーやモデルナのワクチンに匹敵する有効性を示していると発表しています。

Candidato vacunal "Abdala" con tres dosis, tiene una eficacia de 92,28 %  | Ministerio de Relaciones Exteriores de Cuba
http://www.minrex.gob.cu/es/candidato-vacunal-abdala-con-tres-dosis-tiene-una-eficacia-de-9228


Cuba′s COVID vaccine rivals BioNTech-Pfizer, Moderna | Americas| North and South American news impacting on Europe | DW | 27.06.2021
https://www.dw.com/en/cubas-covid-vaccine-rivals-biontech-pfizer-moderna/a-58052365


キューバでは新型コロナウイルスの感染者数が1日に2000件以上報告されており、記事作成時点ですでに1200人近くがCOVID-19で亡くなっているとのこと。そんなキューバに対して、ロシアや中国が新型コロナウイルスワクチンの提供を提案しましたが、キューバ政府はこれを拒否。さらにキューバは国連が支援するワクチン分配プロジェクト「COVAX」に参加していないので、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどのワクチンも入手できません。

そこで、キューバの首都・ハバナにあるBioCubaFarmaの遺伝子工学バイオ技術センターで開発されたのが、キューバ産の新型コロナウイルスワクチン「Abdala」です。なお、Abdalaという名前は、キューバ独立革命の英雄で詩人のホセ・マルティが発表した詩劇「アブダラ」の主人公にちなんでいます。


Abdalaは新型コロナウイルスがヒト体内の細胞に結合するための「スパイクタンパク質」を抗原としていますが、ファイザー製アストラゼネカ製のワクチンと異なり、酵母を使って製造されたスパイクタンパク質の一部を投与する組換えタンパクワクチンです。BioCubaFarmaが行った後期臨床試験の結果によれば、Abdalaの有効性は約92.28%で、約95%の有効性を示しているファイザーの新型コロナウイルスワクチンに匹敵するとのこと。

Abdalaは3回の接種で投与され、各ワクチン接種の間隔は2週間になります。キューバの人口はおよそ1100万人で、政府は2021年8月までに人口の70%に接種を行う計画を立てています。政府は接種計画をかなり急いでいるようで、ワクチンの第III相臨床試験が完了していないにもかかわらず、Abdalaと、同じくキューバ産の新型コロナウイルスワクチンである「Soberana 2」とのワクチン接種プログラムを2021年5月中旬に展開しました。

Abdalaの開発チームの1人で、BioCubaFarmaの遺伝子工学バイオ技術センター生物医学研究部主任を務めるGerardo Enrique Guillen Nieto氏によれば、記事作成時点で220万人のキューバ人がすでに1回目の接種を受けており、170万人が2回目の接種を、90万人が3回目の接種を終わらせているそうです。


さらに、キューバ政府は、Abdalaの国際的な使用の承認を世界保健機関(WHO)に申請済み。すでにボリビア・ジャマイカ・アルゼンチン・メキシコが関心を見せており、ベネズエラが1200万回分のAbdalaの供給を受けたとキューバ政府は発表しています。

Guillen Nieto氏は、キューバがアメリカの禁輸措置によって政治的に孤立していたことを示唆し、「私たちは、最終的に自分たちの力や能力に頼らなければならないとわかっていました。その結果、コストがかからないだけではなく中央管理され、臨床試験や接種キャンペーン、ワクチンの製造など、災害時に迅速に対応できる医療システムが完成したのです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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