サイエンス

人間の平均寿命が延びているのは「長生きできる年齢の限界が上がったから」ではないという研究結果


人類の平均寿命は延伸の一途をたどっており、紙面には毎年のように「平均寿命過去最高を記録」という文字が躍っています。こうした報道からは「人類の寿命は延び続けている」という印象を受けますが、計14カ国の科学者からなる合同研究チームが新たに「平均寿命の延伸は早死にする人が減ったことが原因」という研究結果を発表。統計における「数字のマジック」の問題を明らかにしています。

The long lives of primates and the ‘invariant rate of ageing’ hypothesis | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-021-23894-3

We cannot cheat ageing and death
https://www.sdu.dk/en/nyheder/forskningsnyheder/du-kan-ikke-snyde-doeden

Sweeping Analysis Concludes There’s No Cheating Old Age | Duke Today
https://today.duke.edu/2021/06/sweeping-analysis-concludes-there%E2%80%99s-no-cheating-old-age

We Can't Escape Aging Even With Greater Life Expectancy, Scientists Warn
https://www.sciencealert.com/greater-life-expectancy-doesn-t-change-our-biological-destiny-scientists-say

一説によると1850年代から現代にかけて人類の平均寿命は40歳から70歳に延びたといわれています。実際に、日本の厚生労働省の公式発表では、平均寿命は昭和22年(1947年)から令和元年にかけて50歳から80歳へ大幅に伸びたことが記録されています。

1 主な年齢の平均余命
(PDFファイル)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/dl/life19-02.pdf


南デンマーク大学のフェルナンド・コルチェロ氏とデューク大学のスーザン・アルバート氏ら14カ国39名の研究者が発表したのは、霊長類において種内の老化速度は変わらないという「老化速度不変則」という仮説です。研究チームは「スウェーデンにおける1751~1759年の生命表」「トリニダード・トバゴ共和国における1813~1815年の生命表」「ハヅァ族における1985~2000年の生命表」など、17~20世紀に記録された人類の生命表に加え、サル・ヒツジ・ゴリラなど霊長類30種の生命表から、平均寿命と寿命の平等度(lifespan equality、寿命がどれだけ分散しているかの指標)を割り出すという調査を行いました。寿命の平等度は死亡時年齢のばらつきが小さければ高くなり、死亡時年齢のばらつきが大きければ低くなるという指標です。

この調査の結果、平均寿命が短い生命表では寿命の平等度が低く、平均寿命が長い生命表では寿命の平等度が高いという傾向が判明。これは言い換えると、早死にが多い社会では死亡時年齢にばらつきが大きく、ゆえに平均寿命が短かくなり、反対に早死にが少ない社会では死亡時年齢にばらつきが小さく、平均寿命が長くなることを意味します。さらにこの傾向が、人類以外の霊長類でもかなりの再現性を有すると確認されました。


以上の傾向から、「霊長類における平均寿命の変動は主に乳児・子ども・若年成人の死亡が原因である。つまり言い換えれば、平均寿命は老化速度ではなく、早死にする個体の割合によって決定される」と結論が得られるとのこと。また、調査対象とした生命表から作成された数理モデルにおいて、老化速度を変更した場合に平均寿命と寿命の平等度の関係性に説明が付かない一方、早期死亡率を変更した場合には平均寿命と寿命の平等度の関係性が非常にうまく説明されることから、「種によって老化速度は変わらない」という結論が導き出されたと研究チームは語っています。

アルバート氏は「我々は老化する速度を遅くすることはできません。我々にできることは、赤ちゃんが死ぬのを防ぐことです」とコメント。一方、コルチェロ氏は「医学は前例のないペースで進歩しており、生物の進化において達成されることはなかった『老化の鈍化』に成功するかもしれません」と述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1k_iy

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